｢なんやユウくん、そない服の匂い嗅いで｣


部活の着替え中


小春は隣で着替えるユウジに尋ねた



｢…てか、今日のユウジめっちゃええ匂いやん｣

ユウジに謙也が近づいて匂いを嗅ぐ

それを聞いてみんながよって嗅いでくる


普通の人が見れば地獄絵図


嗅がれる側のユウジも嫌がる


｢やめいや、気色悪い｣


と言いつつみんなから離れる


白石がここであることに気づく


｢お前その匂い…滝瀬さんの…｣

｢お前なんであいつの匂い知ってんねん！｣


白石の言葉を聞いて、ユウジが掴みかかる

｢付き合うてるふりした時に香ってきただけや…そない怒らんでもええやろ｣

｢変態か｣


白石と滝瀬は恋人のふりをした時があった

白石はその時に滝瀬を抱きしめていたのをユウジは思い出した

思わずその言葉が出てしまったが、周りからすればユウジも同じである


｢いや、ユウジもなかなか変態やで｣

｢謙也の言う通り、真琴の匂い嗅いでるんはユウジも同じばい。うらめしか｣

｢うらめし？｣

｢気持ち悪いって意味ばい｣

謙也と千歳にまでそんなことを言われる


そして財前と銀も


｢先輩…付き合あうてすらないのに、気持ち悪いっすわ｣

｢なんやと！？｣

｢せやなあ…少なくとも、友達がすることではあらへんな｣

｢銀まで…！｣


助けを求めようと小春を見るが、どうやら助けてはくれないらしい

味方が誰もいないこの状況

大人しくテニスコートに向かうが、数十分もすると機嫌は治っていた




"ユウジは滝瀬真琴の匂いが好き"




テニス部一同、特に小春は、はそう解釈した


滝瀬のことが好きという結論になるのは、もう少し先のことであった