｢失礼します…｣

｢あ、えっと…滝瀬さんやったっけ｣

｢はい…忍足くんだよね。一氏くんいますか？｣


頼みがあるから来い、テニスコートに入ってくればいいと言われたから来てみたけど


…いないじゃないか


｢ユウジなら奥のコートや。呼んでくる｣

｢すいません、あ、ありがとうございます！｣

忍足くんが凄いスピードで走っていく。

足速いなー羨ましい

テニスコートを眺めていると、白石くんと目が合った


｢滝瀬さん。どうしたんや？｣

｢一氏くんに呼ばれたんだ｣

｢部活中に…ほんますまんのいつも…テニス部が｣

白石くんが項垂れる。

きっとこの前の、恋人のふりをしたことを思い出しているんだと思う。
私にとってもいい思い出じゃないし


テニス部にとって、私は疫病神なんだと思う


｢おー来よったか｣

｢ユウジ！滝瀬さんやって部活中なんやからもっと時間考えて…｣

｢今の時間が1番ええんやって白石！…よっと｣

｢うぇ！？ちょちょ…なんで脱ぐの！？｣

急に上を脱ぎ始めた一氏くん

お父さんのですら見たことがないのに！



｢これ破れたんや、縫っとくれ｣

｢…え、あ、うん｣

一氏くんがいつも通りなものだから、あんな過剰に反応したのが恥ずかしくなった

ユニフォームを受け取り見てみると、確かに横の部分が破れてる


そういえば前に直して欲しいって言ってたっけ



このユニフォーム…縫うのはいいけど、汗臭い


｢こいつらも破れてんのいっぱいあるんや。それも頼んでええか｣

｢あ、うん。時間はかかっちゃうけど、それでもいいなら｣

ほらみてみと一氏くんは白石くんと忍足くんに言う

白石くんは申し訳なさそうに私に聞いてきた