ある日、ふと思った。


ドリンクを作り終わって、ベンチから蔵之介さんと謙也さんが楽しそうにラリーしているのを見る。



｢羨ましい｣


その一言を、隣で休んでいた千里さんが聞いていた。


｢どぎゃんしたと？｣

｢私も、テニスしたい。ラリーしたい。｣

｢やったら俺とラリーやろうや｣


ニコニコして千里さんは自分を指さす。
まじすか先輩。


｢やる！｣

｢よっしゃ、白石そこんコート貸してくれんー？真琴とラリーするけん！｣


自分のラケットと学校のラケットを持って私の手を引く。

千里さんの手は私の手をすっぽり覆っている。

手でっか。
いや、身長でかくて手だけ小さくても変だけど


謙也さんと蔵之介さんはラリーを中断してこっちを不思議そうにみていた。


｢千歳、なんや急に。｣

｢10分でいいけん。な、真琴？｣

｢はい、お願いします。｣

｢ちょうどええやろ白石。そろそろ休憩したい思てたわ。｣


謙也さんはそう言い汗を拭い、光の速さでベンチのドリンクを取りに行った。

しょうがないと言うように蔵之介さんは謙也さんを追いかけた。


｢じゃあ、私あっち行きますね！｣


ラリーできるのが嬉しくて走って遠い方のコートに向かったら途中で躓いた。

小さい声で心配する千里さんの声が聞こえた。