｢渡邉先生から、全部聞きました｣


数十分前、私は進路相談室で先生と話していた


その先生は、突然私に手を伸ばしてきた



黙ってその動きを見ていると、私の頭に置かれた。
そして、そのまま撫でてくる



｢…先生？｣

｢…ごめんな。言いたいこと…あってな…｣


詰まる声が聞こえて見てみると、先生は泣いていた

思わずギョッとしてしまうが、先生はそのまま続けるので、私も何も言えなかった


｢滝瀬のお母さん…最期はどんなんやった？｣


まさかそんな質問がくるとは思わなかったので、私も言葉に詰まる


｢…お父さんと私の手、握って…ゆっくり目を閉じました｣




……そういえば、少し似ているかもしれない




｢俺な…お前のお母さんに、謝らなあかんことあんねん｣

｢…はい｣


何となくわかってきた。







｢病気なのわかってたのに、家族みんなで見捨ててしもうた…。弟として…なんもできひんかった！｣


そういえば、そんなことをお父さんに聞いた気がする



…私に言われても、どうしようもない




｢ほんますまんことした…｣


消え入るような声で言い続ける




そこに誰かが入ってくる。

｢…滝瀬、そういうことや｣


渡邉先生だった。まさかの人で驚いたけど、表情には出さなかった


そんな空気ではなかったし、渡邉先生は去年の私の担任だったから