第弐章
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シンラの身体は空中で舞い上がったが、彼は巧みに姿勢を整え、両足を地面に叩きつけ、衝撃を吸収するその姿は、昏睡を抜けたばかりの少年とは思えぬ気迫に満ちていた。だが、バーンズ大隊長は一瞬の隙も許さない。右手を広げた瞬間、再び強烈な爆風がシンラに襲いかかった。
爆風に巻き込まれたシンラは、私たちの目の前に転がるように叩きつけられた。爆風が収まると、周囲には静寂が広がった。砂埃がゆっくりと落ち着く中、シンラはゆっくりと立ち上がり、汗を拭いながら呟いた。
「近づいただけで押しつぶされそうだ……」
その言葉を受けて、組手を見守っていたオニャンゴ中隊長が、シンラにバーンズ大隊長の能力について説明を始めた。
「体内で炎を燃やし生じた熱エネルギーを身体中に循環させる。蓄えられた膨大な熱エネルギーは、脅威的な身体能力を発揮する動力源となる。まさに”炎の化身”と呼ぶべきほどにバーンズの全身は熱エネルギーの塊なのだ」
彼の言葉は、重く、確信に満ちていた。私は、かつての組手を思い出す。あの時、バーンズ大隊長は能力を抑え、周囲にその力を誇示しなかった。だが今、シンラを相手に、何度も熱を解放している。
「この前とは違う……何度も能力を使ってる」
私の呟きに、オニャンゴ中隊長が眉を上げる。「ほう、十二。最近バーンズと組手でもしたか?」
私は首を振って、シンラを指差した。
「いえ、私ではなくてシンラ隊員が第一に研修生として行った時です。バーンズ大隊長と彼ともう一人で組手を……でも、あの時は能力を抑えてたんです」
「烈火の件と重なった時か?」
「そう、それです。研修期間中にです」
私は頷き、オニャンゴ中隊長からバーンズ大隊長へ視線を移した。彼の眼帯から、炎が滲む。陽光に揺らめくその光は、まるで彼の内に秘めた何か――秘密か、覚悟か――を映しているようだった。バーンズ大隊長が、シンラに向かって言葉を投げる。
「弱い者は命を落とす……ならば真実を語るわけにはいかない。知りたければ、それに足る力を見せて納得させてみたまえ」
その声には、厳しさと、しかしどこか試すような期待が宿っていた。シンラの瞳が、燃える。怒りが、抑えきれず溢れ出す。
「はぁ〜〜〜〜‼︎?」
そして、バーンズ大隊長に言葉を投げかけた。
「バーンズ大隊長は今日、十二年前のことを話にきたんだろ?ふざけんなよ‼︎」
その言葉に対して、バーンズ大隊長は冷静に返した。「なんだ……自信がないのか?」
「ちがう‼︎このクソ…………う……う……うそつき‼︎」
シンラの声が、中庭に響く。オニャンゴ中隊長が呟いた。
「今、クソって言ったな。上官に……」
「精一杯、遠慮しましたね」とアーグ中隊長も聞こえていたようで、頷いている。
オニャンゴ中隊長は横目で私を見た。
「十二よ、部下の前で失礼な言葉を使ってないだろうな?」
「さ、さぁ……どうでしたかね?アハハ……」
と私は苦笑しながら、目を逸らした。
「はい……わかりました」
シンラはそう言い、一度深く息を吸い込み、怒りを抑えようとしていた。そして、覚悟を決めたかのようにバーンズ大隊長を真っ直ぐに見つめ、力強く言葉を発した。
「見せてやりますよ。あなたが思うほど俺は、ひ弱じゃない!」
「シンラ……」
その言葉に、私は思わず手を強く握りしめた。シンラの声は、私の心に突き刺さる。彼の成長、決意。その全てが、胸の奥で熱くなる。
バーンズ大隊長もまた、シンラの覚悟に呼応するように、足元から熱エネルギーを増幅させた。まるで彼自身が炎の柱と化したかのようだ。陽光が、彼の眼帯を照らし、炎が揺らめく。右手を、静かに差し出す。
「かかってこい」
その一言には、試練を与える者としての厳しさが感じられた。私はその場で息を呑み、二人の対峙を見守った。
シンラは一瞬の躊躇もなく、前に進み出た。彼の目には、決して諦めない強い意志が宿っていた。その姿は、まるで過去の自分を超えようとする若者の象徴のようだった。
「何がなんでも教えてもらう‼︎」
シンラはバーンズ大隊長に向かって進んでいくが、バーンズ大隊長の熱エネルギーから発せられる熱波が彼の前を阻み、後ろへと押し戻されてしまう。
「うおぁ」
「お前の覚悟はそんなものか」
バーンズ大隊長は能力を発動したまま全身を熱エネルギーで覆い、シンラをじっと見つめた。その視線には、試練を与える者の厳しさが宿っていた。
「まるで、ロウソクの火だな……」
「なめんなよ……俺は、こんなものじゃねェ‼︎」
シンラはバーンズ大隊長の言葉に反発し、歯を食いしばり、立ち上がる。紅丸との修行を思い出したのか、シンラの両足に力が宿る。地面を蹴り、バーンズ大隊長に急接近する。
「うおぉぉおおおぉ‼︎!」
右足に能力を増幅させ、バーンズ大隊長に向かって攻撃を仕掛けるシンラ。その攻撃をバーンズ大隊長は右腕で受け止める。その瞬間、ドゥンという音と共に爆風が中庭全体を揺らした。
「くっ……」
私は思わず右腕で顔を覆い、目を細めて二人の様子を見守った。風が髪を揺らし、花壇の菊が散る。近くで観戦していたアーグ中隊長とオニャンゴ中隊長の動きも確認した。オニャンゴ中隊長が、アーグ中隊長を庇うように前に立つ。アーグ中隊長の目には、心配と驚きが混じっていた。
爆風が収まり、二人の姿が現れる。シンラの息は荒い。バーンズ大隊長は、静かに口を開いた。
「何を聞いても後悔しないか?」
「真実を知るため、炎を恨みながらも俺は消防官になったんだ‼︎」
シンラの思いを聞いたバーンズ大隊長は、静かに能力を解いた。その瞬間、場の空気が和らいだように感じた。
「あんなに小さかった炎がーー……ここまで大きくなるとはな……。久しぶりだ……受け止めた腕が、しびれている……強くなったな」
そう言いながら、バーンズ大隊長はシンラの攻撃を受け止めた右腕を見つめ、再びシンラに目を向けて言った。
「お前の覚悟は伝わった。よかろう、全てを話してやる」
その言葉を聞いた瞬間、私の心の中で何かが解き放たれるような感覚が広がった。シンラの決意と行動が、ついに真実への扉を開いたのだ。彼の成長を目の当たりにし、私は心の中で彼を称賛した。これから明かされる真実がどんなものであれ、シンラはそれを受け入れる力を持っていると信じて、私は彼の背中を見つめ続けた。