第弐章
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私たちは彼女を先頭にして歩き始めた。棟内の廊下を進むと、窓から差し込むような穏やかな陽射しが、緊張感を少し和らげているように私たちを包み込んでいた。中庭に出ると、風が心地よく頬を撫で、花壇の花々が優しく揺れているのが目に映った。
「ここなら、少し落ち着いて話せますよね」とアーグ中隊長が微笑みながら言った。その笑顔には、彼女の人柄の良さが滲み出ているようだった。
「そうですね、ここなら、ゆっくりと話ができそうです」と私は応じた。オニャンゴ神父も満足そうに頷いている。
私はオニャンゴ神父の隣に移動し、隣に並び、横一列で歩いた。アーグ中隊長が、目を輝かせて口を開く。
「では、早速ー。十二小隊長!第二世代の能力で、筋肉の緊張をどうやって緩めるんですかーー?」
「そうですね……火傷しない低体温の炎で身体の一部に能力を使用し、筋肉の緊張緩和させています。簡単に言いますと……身体の一部が暖かい毛布に包まれている感覚です」
アーグ中隊長が首を傾げる。「なるほどー。でもそれですと、その温度で”焔ビト”を鎮魂するのは難しいですよね?」
私が答える前に、オニャンゴ中隊長が割って入った。
「十二は、炎の制御能力が他の者と比べずば抜けておる。それにより、炎の強弱を器用に操りながら”焔ビト”鎮魂するそうじゃ。そう、バーンズから聞いたが……あっておるか?」
「はい、合ってますよ。正確には武器を使いながら、ですね」私は短く答えた。
「武器ですか!その武器はどんな武器なんですか〜〜?」
アーグ中隊長は興味深々に私に尋ねる。しかし、私の武器、槍伸縮型はこの場にはなく、リヒトのところにある。ふと、カリムの言葉が頭をよぎる。
”消防隊の中には、まだ敵が潜んでいるかもしれない。”
同じ消防隊でも伝導者の仲間がまだ潜んでいるかもしれない。烈火中隊長、Dr.ジョヴァンニがその例だ。
私は慎重に言葉を選んだ。「…………えーっと、隊員に武器を整備してもらっているので、ここにはないです」
「そうだったのですか〜。それは残念です〜」とアーグ中隊長は少し残念そうに言った。
「なんじゃ十二。いつも腰に刺していたのに、肝心の時にはないのか」とオニャンゴ神父も少し不満そうに呟きながらアーグ中隊長に視線を変える。
「まぁ、無いものをこれ以上言っても仕方ない。話を変えよう、アーグ中隊長、近頃どうだね?第6は」と彼は話題を切り替えた。
「順調ですよ〜〜。黄大隊長がいますから!今も平和に……」
彼女の声が、突然止まった。視線が前方に固定される。その様子に、私とオニャンゴ神父も視線を前に向けた。
視線の先には、目を覚ましたシンラと彼の見舞いをしていたはずのバーンズ大隊長が組手を行なっていたのだった。
陽光が彼らを照らし、影が地面に繊細な模様を描いていた。その光景は、まるで時が止まったかのように私たちを引き込み、バーンズ大隊長との組手は、シンラの回復を示す力強い証だった。
「シンラが目を覚ました」と私は思わず声を漏らした。それと同時に、自分自身の声に驚きと感嘆が混じるのを感じた。
オニャンゴ神父は静かにその光景を見守りながら、「これが若さと言うものかのう」と感慨深げに呟いた。
「なんと〜〜〜〜⁉︎日下部さんあなたは絶対安静ですよ⁉︎ベットに戻ってください‼︎」
とアーグ中隊長は驚きながらも冷静にシンラに注意する。彼女の言葉に私はハッとした。
そうだった。シンラは3日間も昏睡状態だったから、アーグ中隊長の言う通りに安静にしないといけない。つい、目を覚ましたことに嬉しく思ってしまって肝心なところを忘れていた。しかし、この組手には何か理由があるハズだ。ヒートアップしていく二人の組手。この組手を止める?それとも見守った方が良いのか?
そう考えていたら、アーグ中隊長が二人を止めようと横切ったのを視界の端に捉えた。それと同時に、彼女の肩に手を置き阻止するオニャンゴ神父の姿も見えた。
「オニャンゴ中隊長……」と驚くアーグ中隊長。
「やらせておきなさい……ありゃ、止まりはしないよ。バーンズの奴も昔気質の頑固な男だ……不器用な対話しかできんのだよ。少年の成長に触発されて、中身はグツグツたぎっている」とオニャンゴ中隊長はアーグ中隊長に静かに言った。その言葉には、経験に裏打ちされた確信があった。
彼の言葉に納得したのか、彼女の動きは止まり、その場に立ち尽くした。彼女の表情には、心配と理解が交錯していた。
私たちはそのまま、シンラとバーンズ大隊長の組手を見守り続けた。彼らの動きは、まるで互いの心を確かめ合うかのように、真剣でありながら会話しているようだった。
シンラがクルッとバーンズ大隊長の目の前で右手を地面に置き、軸にして回転しながら右足を横に振り上げ、叫んだ。
「なんで黙ってた!どんな理由だろうと許さねェ!」
「消防官には大志がある。個人の感情で動いてはいられない」とバーンズ大隊長は静かに応じた。
シンラの攻撃を右腕で最も簡単に受け止めるバーンズ大隊長。その動作には、彼の経験と冷静さが表れていた。
その会話から、すぐに伝導者にいるシンラの弟、ショウの話であることに気付いた。バーンズ大隊長の右眼の眼帯から炎が溢れ出し始める。その瞬間、私は本能的に一歩後方に下がった。
「十二、賢明な判断だ。……アーグ中隊長、退がっていなさい。温まってきたようだ……」
とオニャンゴ中隊長が私の行動に頷きながら代わりに一歩前に出て、アーグ中隊長の前に腕を出して彼女にも後退するように指示を出した。アーグ中隊長も彼の指示に従い、後退した。
オニャンゴ中隊長の言葉の通り、グッとバーンズ大隊長の右手がスローモーションのようにシンラを狙い、右足を地面に踏み込んだ。その時、まるで大爆発が発生したかのように爆音と暴風が響き渡った。
その勢いにシンラは飲まれ、後方に吹っ飛ばされた。