第弐章
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タマキの能力が発揮され、槍伸縮型に炎を補充される情景が広がる。仲間の協力によって再生するその瞬間、心の奥底で高まる期待感とともに、私は戦う準備が整いつつあった。
その時、不意に桜備大隊長の声が響いた。
「絵馬、話してくれないか?Dr.ジョヴァンニが言っていたことを」
その呼びかけに、私は一瞬、その視線の重さを感じた。大隊長の視線には、ただならぬ緊迫感が宿っている。私が伝えるべき言葉が、彼にとってどれほどの意味を持つのか。
「まだ全部記憶が戻った訳ではないですが……思い出したこと全て話します」
言葉を絞り出しながら、私は桜備大隊長の目を見つめた。その一瞬、私の脳裏に鮮明に浮かぶのは、ハウメアとの対峙の場面だった。彼女の口から漏れた言葉、冷ややかな笑み、そして心の奥底で響く不安の囁き。
その時、周囲の緊張感が走り抜け、私の声がさらに深く響く。
「桜備大隊長たちと合流する前に、ハウメアという少女……伝導者の一味と遭遇しました。その時に、私は彼女に何かされたのでしょう。突然、頭の中に断片的な映像がいくつかフラッシュバックしました。それらの記憶には、幼い頃の私と、幼いハウメアの姿が含まれていました。それと……両親に手を引かれ、どこかに逃げている時に、Dr.ジョヴァンニと思われる男の姿を見たことも思い出しました」
桜備大隊長の目が少し大きく開き、驚愕の表情が一瞬浮かぶ。それは、私が抱かえていた秘密の重みを彼が理解した瞬間だった。
「ジョヴァンニが、絵馬をこちら側だと言っていた意味がようやく分かった」
「絵馬さんが伝導者側!?それは、どういう意味ですか桜備大隊長!?」
茉希の声が驚きに満ち、彼女は桜備大隊長と私を交互に見つめながら戸惑っている。タマキも驚愕し、槍を補充する手を止めて、桜備大隊長の言葉に耳を傾けている。彼女の顔に浮かぶ混乱は、仲間の心の奥に隠された恐れを炙り出した。
「Dr.ジョヴァンニが、私はまだ能力を活かせていないと言っていた。アイツは、私の何かを知っている。伝導者の計画と、私の過去には何か深い繋がりがあるのだと思います」
右肩の古傷を防火服の上からそっとなぞり、私は言葉を続けたが、その声は自分自身への問いでもあった。過去から逃げようと思っても、そこに潜む影は、常に私を見つめているように感じた。
桜備大隊長は、目の前の事実に向き合おうとする私をじっと見つめ、言葉を選ぶように静かに言った。
「そうか。絵馬、辛いはずなのに……話してくれてありがとう」
「いえ……辛いと言うよりかは、どうして私はこの記憶をこの時まで忘れさせられていたんだろうという困惑と不安が強いです。この記憶が、シンラの”アドラーバースト”と”アドラリンク”に何かしら関係しているのではないかと考えたりします。ですが、今のところ右肩の古傷が少し痛むだけで……それ以外に特に変化はありません」
その言葉が全てを語る訳ではない。その時、ふと右肩に誰かの手の感触が防火服の上から伝わってきた。驚いて横を振り向くと、アイリスがこちらを真剣な目で見つめていた。
「絵馬さん!」
「はい。シスターどうし……イテテテッ!?」
突如、アイリスはグッと右肩に添えた手に体重をかけ、しっかりと力を入れてきた。その瞬間、痛みが走り抜け、思わず体が反応した。
「絵馬さん、何で私たちに申し訳ないと思っているのですか!?」
「思って……イタッ!」
「思ってますッ!!絵馬さん、申し訳ないと考えている時は、私を名前ではなくシスターと呼びますから!」
その言葉には、強い意志が感じられた。アイリスは、私が抱かえている内面的な葛藤を理解しようとしているようだ。彼女の眼差しは揺るがない。
「絵馬さんが過去に伝導者側であったとしても、絵馬さんは絵馬さんなんです!第7と第8小隊小隊長であり、私たちの仲間なんですから!」
その言葉は、私の心にダイレクトに響いた。
「ありがとう……アイリス」
微笑みを浮かべ、感謝の気持ちを伝えると、アイリスはやや力を緩め、私の目をじっと見つめ返してきた。その視線には、静かな力強さが宿っていた。
「シスターの言う通り、絵馬!オレたちは第8小隊で仲間なんだ!これからも頼りにしているぞ」
桜備大隊長の言葉が、私の心のつかえを少しだけ解消してくれた。彼の声には、自然と勇気が湧いていくるような響きがあった。
「承知ッ!」
その時、何気ない笑顔を見せるアイリスを見ながら、タマキがふと呟いた。
「シスターって、何気に力で解決しようとするところあるよな……」
タマキの言葉と共に、場の空気が和む。ニコニコ顔のアイリスが、少し頬を膨らませたように見えた。
「力が全てじゃないんですけど、時には必要ですからね。タマキさん、終わりよければすべてよしですよ」
アイリスは肩をすくめ、冗談めいた口調で返す。彼女の声には、微妙なユーモアが混じり、その場を和らげる効果を生んでいた。
「確かに!流石、シスターです!」
茉希が笑いながら返すと、アイリスはウフフと微笑んだ。彼女の笑顔は、その場にいる全員の心の重荷を少しだけ軽くしてくれた。
「話はここまでにして、そろそろ他の隊員と合流するぞ!皆、行くぞ!」
桜備大隊長が合図すると、私たちは再び地下の奥に向かって突き進んで行った。