第弐章
夢小説名前設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
タマキの能力が発動し、槍伸縮型に炎を補充される情景が広がる。仲間の協力によって、私の武器もまた息を吹き返す。その瞬間、心の奥底で期待と緊張が交錯し、戦う準備が整っていくのを感じていた。
その時、桜備大隊長の声が静寂を切り裂いた。
「絵馬、話してくれないか?Dr.ジョヴァンニが言っていたことについて」
その声には、普段の穏やかさとは異なる重みが宿っていた。私は一瞬、彼の視線に射すくめられた。私が伝えるべき言葉が、彼にとってどれほどの意味を持つのか。
「まだ……記憶がすべて戻ったわけではありません。でも、思い出したことはすべて話します」
言葉を絞り出しながら、私は大隊長の目を見つめ返した。その瞬間、脳裏にハウメアとの対峙の場面が鮮やかに蘇った。彼女の口から漏れた言葉、冷ややかな笑み、そして心の奥底で響く不安の囁き。
「桜備大隊長たちと合流する前に、伝導者の一味……ハウメアという少女と遭遇しました。その時、彼女に何かされたんだと思います。突然、頭の中に断片的な映像がいくつもフラッシュバックしてきて……その中には、幼い頃の私とハウメアの姿がありました。それに……両親に手を引かれてどこかに逃げているとき、Dr.ジョヴァンニらしき男の姿を見たことも思い出しました」
大隊長の目が一瞬、大きく見開かれた。驚愕の色が彼の顔をよぎり、それは私が抱えていた秘密の重みを彼が理解した瞬間だった。
「ジョヴァンニが、絵馬をこちら側だと言っていた意味が、ようやく分かった」
「絵馬さんが伝導者側!?それは、どういう意味ですか、桜備大隊長!?」
茉希の声が驚きに震え、彼女は私と大隊長を交互に見つめた。タマキも驚愕し、槍を補充する手を止めて、桜備大隊長の言葉に耳を傾けたまま、混乱の表情を浮かべていた。
「Dr.ジョヴァンニが、私がまだ能力を活かしきれていないと言っていました。アイツは、私の何かを知っている。伝導者の計画と、私の過去には、何か深い繋がりがあるのだと思います」
右肩の古傷を防火服の上からそっとなぞり、私は言葉を続けたが、その声は自分自身への問いでもあった。過去から逃げようとしても、いつもその影が私を追いかけてくる気がした。
桜備大隊長は静かに私の目を見つめ、言葉を選ぶように口を開いた。
「そうか。絵馬、辛いはずなのに……話してくれてありがとう」
「いえ、辛いというより……どうしてこの記憶を今まで忘れさせられていたのか、その困惑と不安の方が強いです。この記憶が、シンラの”アドラーバースト”と”アドラリンク”に何か関係しているのではないかと……。ですが、今のところ右肩の古傷が少し痛むだけで……それ以外に特に変化はありません」
その言葉が、私の心のすべてを語るわけではなかった。その時、ふと右肩に誰かの手の感触が防火服の上から伝わってきた。驚いて横を振り向くと、アイリスがこちらを真剣な目で見つめていた。
「絵馬さん!」
「はい。シスターどうし……イテテテッ!?」
突如、アイリスはグッと右肩に添えた手に体重をかけ、しっかりと力を入れてきた。その瞬間、痛みが走り抜け、思わず体が反応した。
「絵馬さん、なんで私たちに申し訳ないなんて思ってるんですか……?」
「思って……イタッ!」
「思ってますッ!!絵馬さんが申し訳ないと思っている時は、私を『シスター』と呼びますから!」
アイリスの声には、強い意志が宿っていた。彼女は私の心の葛藤を見抜こうとしている。彼女の眼差しは揺るがない。
「絵馬さんが過去に伝導者側だったとしても、絵馬さんは絵馬さんなんです!第7と第8小隊小隊長で、私たちの仲間なんですから!」
その言葉は、私の心の奥にまっすぐ突き刺さった。
「……ありがとう、アイリス」
私は小さく微笑み、感謝を伝えた。アイリスはやや力を緩め、私の目をじっと見つめ返してきた。その視線には、静かな力強さがあった。
「シスターの言う通りだ、絵馬!オレたちは第8小隊で仲間なんだ!これからも頼りにしてるぞ」
桜備大隊長の声には、どこか温かな響きがあった。その言葉が、私の心のつかえをほんの少し解きほぐしてくれた。
「承知ッ!」
アイリスの笑顔を見ながら、タマキがふと呟いた。
「シスターって、なにげに力で解決しようとするところあるよな……」
その言葉に、場の空気がふっと和んだ。アイリスは少し頬を膨らませ、いたずらっぽく応じた。
「力だけじゃないですけど、時には必要ですから。タマキさん、終わりよければすべてよしですよ」
アイリスは肩をすくめ、冗談めいた口調で返す。彼女の声には、微妙なユーモアが混じり、その場を和らげる効果を生んでいた。
「確かに!流石、シスターです!」
茉希が笑いながら返すと、アイリスは「うふふ」と微笑んだ。彼女の笑顔は、その場にいる全員の心の重荷を少しだけ軽くしてくれた。
「よし、話はここまでにして、そろそろ他の隊員と合流するぞ!行くぞ、みんな!」
桜備大隊長の合図とともに、私たちは再び地下の奥へと突き進んだ。