第弐章
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ヴァルカンの一撃がDr.ジョヴァンニの腹部に直撃し、その勢いのまま彼は地面にぶつかった。ヴァルカンは顔を上げると、素早くペンギンヘルメットを解除し、その強い瞳で周囲の状況を把握する。
「やわいメカ造ってんな‼︎」
「流石だよ!ヴァルカン」
私は奪い返した槍伸縮型を握り直し、瞬時に体を低く構えた。
「クックックッ」
Dr.ジョヴァンニは苦痛な音色を見せず、余裕にそうに笑いながら、破壊された機械の部品をいくつか回収しつつ後方へと下がった。その動作は余裕を持ち、計画的だった。
「いいぞ。良くやった」
桜備大隊長がの声が地下の空間に響く。桜備大隊長は線路の一部分を強引に引き抜き、それを即席の武器として構え、Dr.ジョヴァンニに向かって駆け出す。
私はその姿勢を見て、一瞬のためらいもなく駆け出した。Dr.ジョヴァンニは防火服を広げ、その服の中から無数の機械を次々と出現させる。その機械はDr.ジョヴァンニの周囲を防御する壁のように立ちはだかる。
「無能力者なりに上手くやったではないか」
「無能力者をバカにするな!ヴァルカンはテメェと違って凄いんだよ!」
Dr.ジョヴァンニ言葉に冷笑と侮辱が含まれていた。私はその言葉に苛立ちを覚えつつも、桜備大隊長よりも速く前に出た。Dr.ジョヴァンニの体が再び揺れ動くその瞬間、彼の機械が一斉に動き出した。しかし、私は槍伸縮型を巧みに操り、次々と迫る機械を弾き返していく。
Dr.ジョヴァンニの一つ一つの動きを見逃さず、反撃の一撃を見据える。その瞬間、私の瞳がDr.ジョヴァンニの胸元に集中する。
「そこだ!!」
私の心の中で声が響き、狙いを定めた槍伸縮型が一気にDr.ジョヴァンニの胸元へと突き刺さる。
「甘いな」
しかし、Dr.ジョヴァンニの声が冷たく響き渡り、精密に胸元に突き刺した槍伸縮型をDr.ジョヴァンニは無数の機械が槍伸縮型を絡み捕らえていく。
「絵馬!しゃがめ!」
「承知!」
桜備大隊長の声が背後から緊迫感とともに響く。私はその声に即座に反応し、その場に瞬時にしゃがみ込んだ。
その一瞬、桜備大隊長の即席の武器が上空から迫り、Dr.ジョヴァンニに向かって振り落とした。
ガン。頑丈な線路を受け止めたDr.ジョヴァンニ。その隙を狙い、私は足で槍柄を蹴り上げる。無数の機械に絡まった槍伸縮型を弾き出させ、再び戦闘の態勢を整えた。
「あなたも元消防官だろ!!炎から国民を守る存在が、なぜ”人工焔ビト”を生んでいるんです……。あんたら言う伝導者とは何が狙いでそんなことを!」
桜備大隊長の声が冷たい地下の空間に反響し、彼の問いかけが鋭く響いた。その声は絶望と怒り、そして答えを求める切実な思いが込められていた。Dr.ジョヴァンニは苦笑すると、その答えに対する言葉を吐き出した。
「貴様ら消防官のモットーは”国民の人命と財産を守ること”だと言っていたな。それがどれだけちっぽけなモノかわからんのか?」
「ちっぽけなんかじゃないッ!」
私の声が響き渡り、槍伸縮型でDr.ジョヴァンニの足元を狙った。しかし、Dr.ジョヴァンニは軽やかに真上に飛び、攻撃を難なくかわす。
「こういう風に、人は感情なんてものがあるからややこしくなる。世の中を大きく見てみろ。人間だってこの世界の一部でしかない。矮小たる存在ならば燃えて、この星の一部となれ」
その冷酷な言葉は、何の感情も感じさせず、ただ無機質な響きを持って地下の空間に冷たく拡がった。桜備大隊長の声色には怒りが含まれ、彼の声が再び響き渡る。
「カルトの欺瞞など!!」
私は線路を受け止める機械を狙い、槍伸縮型で真下から右斜めに薙ぎ払った。その隙に、桜備大隊長はグンと一気に力を込めて線路を機械から弾き返した。
ガシャン。その音は地下の空間に重く響き渡り、線路を受け止めていた機械を槍伸縮型で破壊した。Dr.ジョヴァンニは数歩後方へと下がり、冷静に私を見据えた。
「まだ分からぬのか?絵馬 十二。そいつ等についたとして、何の利益がある?」
「あぁ。分からないね……。だけど、利益なんて考えずに、私の行末は私自身で決める」
私の胸には動揺が一瞬走るが、すぐに決意の瞳が冷たく燃え上がる。Dr.ジョヴァンニは一瞬の沈黙の後、冷たく苦笑した。
「愚かな……。いずれ時が来れば分かるだろう。一つ、貴様らたちに教えてやる」
そう言って、Dr.ジョヴァンニは確信めいた言葉を吐き出した。
「役仁佰伍拾年前、この星で”あの大災害”が起きた。その原因は大量に放出された”アドラバースト”によるものだ。そして、”アドラバースト”の源は、貴様たちももうすでに信じている場所だ」
「私たちが信じている場所……」
その言葉に、私は一瞬手を止め、次の一手の動きが完全に封じられた。Dr.ジョヴァンニの言葉はあまりにも衝撃的で、その意味を理解するのに時間がかかった。桜備大隊長の声が冷静に響き渡る。
「何が原因だろうと人体発火を止めるのが、俺たちの仕事だ!!」
桜備大隊長が線路を真上に持ち上げているのが視界に入り、瞬時にDr.ジョヴァンニから距離を取った。
ガン。Dr.ジョヴァンニの目の前に即席の防御として線路が垂直に突き刺さり、遮る壁を形成した。そしてその線路を駆け上る桜備大隊長。
「レールはハシゴ車じゃないぞ……」
Dr.ジョヴァンニは冷酷に、駆け上る桜備大隊長を見据えた。
「”人体発火現象”は自然の摂理だ。理に逆らうつもりか」
「お前らの”蟲”は人為的だろ!!」
桜備大隊長は線路の天辺まで駆け上り、そのままDr.ジョヴァンニの顔面に向かって真下に肘打ちを放ち、一緒に地面に倒れ込んだ。しかし、Dr.ジョヴァンニはその攻撃ものともせず、防火服に隠された機械を操作し、桜備大隊長を真横に投げ飛ばした。
その瞬間、隙を見逃さなかった私は即座に駆け出し、槍伸縮型を地面に仰向けで倒れているDr.ジョヴァンニに向けて縦に振り下ろす。しかし、Dr.ジョヴァンニは機械の力を使って驚くべき速度で地面を滑るように動き、攻撃を巧みに避けた。
「無駄なことを……」
Dr.ジョヴァンニは機械を操作し、ゆっくりと立ち上がる。私は、桜備大隊長に側に移動しながら戦闘を整える。Dr.ジョヴァンニの低い声が冷たく響いた。
「伝導者が貴様ら同じただの人だとでも思っているのか?」
「人じゃないだと!?だとしたら、神か何かだとでも言うのか!?伝導者が何者だろうと、どうせ外道共が心酔し祀り上げた偶像だろうが!」
桜備大隊長の言葉には激しい苛立ちが込められていた。その声色には、自らの信念の対する確固たる思いが垣間見える。
「全く……くだらん思考だ。心酔した偶像だと?絵馬 十二、貴様もそう思わないか?」
「……」
Dr.ジョヴァンニの問いかけに答えることができなかった。ハウメアの企みにより、ありもしない記憶が頭を支配していたからだ。その虚構の記憶が断続的にゆっくりと浮かび上がっては消えていった。Dr.ジョヴァンニは言葉を続ける。
「ならば聖陽教の太陽神はどうなる?いるかわからん神に叶うかわからん祈りを捧げ、なんの意味がある?皇王 ラフルス三世を神の生まれ変わりとでも思っているのではないか?」
その挑発的な言葉に対し、桜備大隊長は力強く反論した。
「何を言おうが聖陽教は、人を焼くことはしない!!」
「伝導者は偶像などではないぞ」
「ご丁寧に伝導者の秘密を教えてくれてありがとう」
「お前のような無能力者には伝導者の存在は理解できん。絵馬 十二は後に気づくとして、森羅 日下部なら、薄々感じているかもしれないがな」
Dr.ジョヴァンニは確信に満ちた声色で言った。その言葉の重さは、私の中で眠る不安を静かに目覚めさせた。