第壱章
夢小説名前設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「GAHAAAA」
鬼の”焔ビト”が吠え、両腕を天に突き上げる。その瞬間、周囲の炎が一斉に吸い込まれ、まるで生き物のように膨れ上がっていく。やがて、巨大な火の玉が形成され始めた。
「まずいッ‼︎踊れ!火猿‼︎」
直感的に地面に手を触れ、素早く絵を描いた。火猿が呼び出され、炎の尾で槍を掴み、私を一気に鬼の”焔ビト”から引き離す。その一瞬で、周囲の景色がぼやけ、何かが爆発するような音が耳をつんざいた。私はシンラとアーサーに声を上げた。
「シンラ‼︎アーサー‼︎」
「うぉッ‼︎」
反応が遅れたシンラとアーサーは、避けきれずに火の玉に呑み込まれてしまった。二人の姿は一瞬で煙に包まれ、次の瞬間には後方へと力強く吹き飛ばされる。その周りには、激しい火炎と黒煙が乱れ舞う。
間髪入れず、鬼の”焔ビト”がシンラに向かって突進する。シンラは必死に肘を立てて攻撃を防ぐが、その威力に完全に押しつぶされ、まるで風に吹かれる葉のように、遠くへと弾き飛ばされていった。
「画家‼︎手伝ってくれ‼︎」
アーサーの叫びが、私の耳に届く。振り返る間もなく、彼はエクスカリバーを握りしめ、鬼の”焔ビト”に向かって駆け出す。視線を合わせたその瞬間、彼の狙いが頭部であることは明白だった。
アーサーは、何の躊躇もなく剣を振りかぶり、鬼の”焔ビト”の頭を狙って一閃を放つ。その刃が空気を切り裂く音が耳に届くが、次の瞬間、耳障りな音が響き渡った。ガリガリ、ガリガリと。まるで硬い岩を削るような、鈍い音が立ち込めるだけで、エクスカリバーが鬼の皮膚に通らない。
「硬ェ……‼︎」とアーサーが呟く。
鬼の”焰ビト”が、エクスカリバーを弾き返すかのように右腕を振り払う。その動きはまさに猛獣の一撃で、アーサーの反応をわずかに遅らせ、鋭く尖った爪が彼の腹部を掠めた。服ごと切り裂かれ、鮮血が飛び散る。アーサーは一瞬、息を呑み、痛みに歪んだ顔を見せた。私は火猿の名を呼ぶ。
「火猿‼︎」
目の前の鬼の”焰ビト”に向けて、火猿がすぐに動き出す。アーサーの真下を巧みに掻い潜り、瞬時に下から上へと大きく振りかぶった拳を、鬼の”焰ビト”へと繰り出す。その拳には、炎と熱風が凝縮され、爆発的な威力を増していった。
しかし、鬼の”焰ビト”は、その攻撃を驚くほど簡単に受け止める。まるで力を込めた拳が、ただの風のように消え去ったかのようだ。さらに、鬼の”焰ビト”は火猿の拳を掴み、そのまま力任せに地面へと叩きつけた。衝撃が走り、火猿はその瞬間に消滅してしまう。私は槍伸縮型をしっかりと握りしめ、鬼の”焰ビト”の横腹を狙って大きく振りかぶった。
ガチン、と硬い音が響く。槍が鬼の”焰ビト”の腹部に当たった瞬間、思わず力を込めた手に伝わる反発に、私は息を呑んだ。だが、それは予想していた以上の強さで、皮膚の硬質化によって槍は弾かれてしまう。
「くっ……!これならッ‼︎」
私は槍を握りしめたまま、全力で真上に飛び上がる。そして、右足を勢いよく振り上げ、鬼の”焰ビト”の横っ面に向かって蹴り込む。
「かっ……たぁーー‼︎」
電流が激しく走ったような痺れが、右足を襲う。足を掴まれそうになるが、私はそれを予感していたかのように素早く反応し、くるりとバク転を決める。空中でひとひねりして、地面にしっかりと着地した。
「画家ッ‼︎」
アーサーが私の名を呼ぶ。その声が耳に届いた瞬間、私は反射的にバッと顔を上げた。鬼の”焰ビト”の手が、まさに私に迫っているのが見えた。避けられない。この瞬間、全身に冷や汗が走った。だが、何かが違う。突然、鬼の”焰ビト”がその手を引き、地面に視線を落とす。そして、二、三歩後ろへと下がり始めた。
その時、ドドと大きな音が響き、先程鬼の”焰ビト”が立っていた場所に、何かが突き刺さる。視線を向けると、そこには二本の纏が地面に突き刺さっていた。私の目の前に降り立ったのは、同じ法被を纏った紅丸だった。
「助かった、紅丸」
「絵馬、油断してんじゃねェ……お前の相手は俺だ」
紅丸がちらりと私を一瞥し、すぐに再び鬼の”焰ビト”に視線を戻した。背後からシンラの声が、少し驚きと困惑を隠しきれずに漏れた。
「絵馬さんの火猿やアーサーの剣でも傷が付かないなんて、どうなってんだ……」
アーサーはその言葉に反応し、紅丸を見据えながら口を開く。
「オイ、第7の大隊長!こいつは、普通の”焔ビト”じゃない……」
紅丸は私たちを横目で見ながら、その視線に冷徹さを含ませたまま答えた。
「二年前、浅草に現れた角付きの”焔ビト”。こいつが、切っ掛けで紺炉は灰病になったんだ。手を出すな。この喧嘩、俺がやらせてもらう」
「このケジメは私と紅丸がつけるから、二人は少し離れていて」
法被を片肌脱ぎ、槍伸縮型をしっかりと握り直す。くるりと回して、両手でその柄をしっかりと掴む。私は、二人を見据えた。その視線に、シンラとアーサーは戸惑いながらも、顔を見合わせた。
「騎士道精神に則り、一対一を見守るぞ」
シンラは眉を吊り上げ、疑念の混じった声で言った。
「お前、俺にあの鬼倒すの手伝えって言ってたよな。それに、絵馬さんがいるから二対一だろ」
その問いかけに、アーサーは無言で答えず、ただ遠くを見つめるだけだった。
ぱちぱちと音を立てながら飛来する鬼の”焔ビト”に、私は槍伸縮型を突き刺す。だが、すぐにその硬質な手が槍先を掴み取る。
ガチリと金属音が響き、鬼の”焔ビト”の力強い握力が槍を完全に握り締める。紅丸は一瞬のうちに地面を蹴り、鋭い反応で真上へと跳躍する。彼の足が槍伸縮型の上を駆け抜け、鬼の”焔ビト”の横っ面を狙う。
しかし、鬼の”焔ビト”は素早く槍先から手を放し、瞬時にしゃがみ込んで紅丸の攻撃を回避した。それを見逃さず、私は槍先を地面に突き刺し、遠心力を利用して勢いよく両足で鬼の”焔ビト”に攻撃を繰り出すが、それも後方に下がられてかわされる。
紅丸は地面に突き刺さった槍伸縮型を壁のように使い、空気を切り裂くように一回転してから、鋭く踵を振り落とす。鬼の”焰ビト”は、反応するかのように両腕を交差させ、その体勢で紅丸の攻撃を受け止める。
「チッ!」
その舌打ちが耳に響く。紅丸は、私の横に音もなく降り立った。
「絵馬、残りの炎もあと1つ……みてェだな」
「それがなくなっても、私は戦えるよ、紅丸」
私は目を逸らすことなく、冷徹に鬼の”焰ビト”の動きを見定める。紅丸は数歩前に出る。
「俺と角付き”焰ビト”の炎を少しずつ吸収しながら、槍に炎を蓄えてろ」
「それまで、持ち堪えてよね」
紅丸は一瞬だけこちらを振り返り、何も言わずにニヤリと笑った。
「誰に言ッてやがる」
ガガガガ、と、激しい衝撃音が響き渡る。紅丸と鬼の”焰ビト”の攻防は容赦なく続く。鬼の”焰ビト”が鋭い眼差しで紅丸に向かって素早く接近するが、その瞬間、紅丸は冷静に彼の腕を掴み取ると、一気にその力を込めて地面に叩きつけた。鬼の”焰ビト”はすぐに跳ね起き、驚異的な速さで後退した。その動きに一切の余裕を見せることなく、右手を前に突き出す。次の瞬間、鬼の”焰ビト”の掌から一直線に炎の渦が放たれ、紅丸を狙って猛然と迫ってきた。
だが、紅丸は一切の躊躇なく、それを払い除ける。私は紅丸の後方に立ち、槍伸縮型を軽やかに回し続ける。手のひらで槍を巧みに操り、まばらに広がった炎が、次々と槍伸縮型に吸い込まれていく。
周囲の炎を吸収し、槍伸縮型にその力を補充する技術。これは、第三世代の能力を直接借りることなく、私が独自に編み出した方法だ。
紅丸は、溢れる炎をそのまま鬼の”焰ビト”に弾き返していく。その動きは無駄がなく、まるで戦場を支配するかのように、炎を操っている。
紅丸は右手を上げ、「これで」と、無駄のない動きで手刀を鬼の”焰ビト”の胸のコアに向かって振り下ろした。
「いって……さすがに硬ェな」
「俺のエクスカリバーでも切れないんだぞ!そんなチョップで倒せるか、バカ‼︎」
紅丸の呟きに、声を荒げ、手に持つエクスカリバーを指差すアーサー。
「それ……アーサーが言っちゃうの?」
思わず、私は心の中でツッコミを入れた。だが、口に出すことなく、槍伸縮型をそっと回しながら、周囲の炎を吸収していく。紅丸がそのすぐ前で冷徹に鬼の”焰ビト”を睨みつけ、言葉を続ける。
「二年前、紺炉は地面に巨大な穴を開けていた。同じくらいの火力が必要ってことか……紺炉の仇討ちだ……。なら、同じ方法でカタつけてやる。絵馬!」
「合点!承知‼︎」
紅丸の決意に私は全てを預け、槍伸縮型の回転を止めて、近くにあった纏を引き抜く。指先で纏を投げると、紅丸は軽々とそれを掴み、素早く纏に足をかけた。
「ここで町ごと吹き飛ばずわけにはいかねェ」
紅丸が冷静に言い放つと、ばれんに能力を使って纏を発火させた。炎が纏を包み込むと、その炎の強さがまるで紅丸の決意そのものを象徴するかのように勢いを増していく。
「PIGYYYY」
鬼の”焰ビト”がその咆哮を上げ、周囲の空気が震えるが、その音はあっという間に掻き消された。纏は、まるで暴風のように一気に紅丸の力に乗って勢いを増す。紅丸は、躊躇なくその勢いを利用して鬼の”焰ビト”を纏の先端にぶつけ、その勢いを殺すことなく、夜空へと向かって駆け上がった。