第壱章
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太鼓の音と神輿を担ぐ若い衆の挙げる掛け声が響き渡り、火消しの男たちの発火能力によって空に打ち上げられる無数の花火。町全体が一体となって盛り上がっている。
「まるで、祭りだな」と、桜備大隊長が言った。
「原国式の告別式ともまた違ったここでの特別な弔い方でしょうか」と、火縄中隊長が続ける。
その言葉が背後から聞こえてきたが、私は静かに微笑みながら答える。「その考え方であってますよ、火縄中隊長」
二人は振り返り、興味深そうに私を見つめた。
「そうか。これが、第7の弔い方なんだな」
「第7の鎮魂は、他とは少し異なります。弔った仲間が、空で笑って、馬鹿騒ぎをしてほしいという意味も込めているんです」
桜備大隊長はその言葉を聞いて、しばらく黙って頷くと、微笑みを浮かべた。
「最初の絵馬の入隊日を、思い出すな」
「そうですね、桜備大隊長」と、火縄中隊長も言いながら、懐かしげに頷いた。
桜備大隊長は、昔のことを振り返り始めた。
「入隊初日に、”焔ビト”の鎮魂を行ったのを覚えているか?今とあまり変わらないが、あの時の絵馬は、ラートムを唱えずに炎の百合を作って、鎮魂を行っていたな」
私は彼らの顔を交互に見ながら、打ち上げられる花火に視線を移した。
「もちろん、覚えています。懐かしいですね」
あの日のことを、今でも鮮明に覚えている。第8に仮入隊した私にとって、最初の鎮魂の日は緊張と戸惑いが入り混じっていた。二人は私の入隊に対して、半ば疑問を抱いていたようだ。そして、お互いに自己紹介を交わしても、どこかしら壁があった。特に鎮魂の最中、二人がラートムを唱える中、私だけが何も言わなかったことに、火縄中隊長は激怒し、私の胸ぐらを掴んで言った。「それが、鎮魂の態度か?」
「第7は太陽神を信仰しない原国主義なので、ラートムなんて唱えません」と反論した私に、火縄中隊長は頬を一発殴った。
その後、桜備大隊長が間に入ってくれて、それ以上の事態にはならなかった。その日の帰り際、私はひそかに火鳥を使って花火を一発打ち上げた。それを見た桜備大隊長に見つかり、「あれは、皇国の鎮魂を侮辱する意図はありません。原国主義と皇国の考えを理解している私なりの鎮魂の方法なんです」と説明した。
桜備大隊長は少し呆然とした後、突然真剣に謝罪してきた。「少し待て!」と言って、第8教会に戻り、火縄中隊長を連れてきた。二人は深々と私に謝ってきた。その時、彼らがこんなに真剣に謝る姿があまりにも可笑しくて、私は思わず笑ってしまった。
「トビ共は修理しろ‼︎今の弔いで家が壊れちまった奴は、詰所に泊まってけ‼︎修復作業が終わるまで、俺たちが面倒を見てやる‼︎」
と、遠くから紅丸の声が聞こえてきた。私は花火から視線を外し、桜備大隊長と火縄中隊長に再び目を向けた。
「私も今から修復作業を手伝いますので、これで失礼します」と告げると、私はすぐに紅丸に向かって大声で叫んだ。「紅丸!私はあっちの火消したちと一緒に木材を運ぶ!」
「……任せた。」
と、遠くから紅丸の鋭い視線がこちらを向けるのを感じた。彼が少し気に食わなさそうだったが、許容範囲内の返事をもらえたことを確認した私は、二人に軽く会釈して、その場を離れた。
目の前に積まれた木材を運ぶため、私は手に持った槍伸縮型を使って地面に絵を描き始めた。
「踊れ!火牛‼︎2頭だ‼︎」
そう描いた瞬間、地面から炎に包まれた二頭の牛が現れた。
その時、一人の火消しが防火用のタオルを二枚、私に手渡してきた。「お嬢、これ使ってくだせェ」
「ありがとう」私は静かに言いながら、タオルを受け取る。
火牛の背にタオルを広げ、目の前にある細長い木材をひとつずつ丁寧に火牛の背に乗せていく。木材をある程度乗せたところで、防火紐でしっかりと結び、荷を固定する。
「これで、あっちにいる火消したちのところまで運んで」
私は火牛に指示を出すと、火牛は頷くように頭を動かし、指定された場所へ向かって歩き始めた。
「絵馬さん!俺も手伝っても良いですか?」
「絵馬、俺は何をすれば良い?」
振り返ると、防火服を脱ぎ、準備万端なシンラとアーサーが私を見ていた。
「ありがとう、二人とも。じゃあ……シンラは私の火牛と一緒に木材を運んで。アーサーは……私についてきて」
「分かりました!」シンラはすぐに動き出す。
「分からないことがあったら、近くの火消したちに聞いてね」
「はい!」
元気よく答えるシンラの姿を見て、少し安心する。
「絵馬、行くぞ」
アーサーが振り返り、私に声をかける。しかし、彼はくるりと背を向けて歩き始めた。私はすぐに慌ててアーサーの服を引っ張る。
「どうした?絵馬?」
「いや、アーサー。どうした?じゃなくて!私に着いてきてと言ったのに、勝手に離れないで」
「ム……」アーサーは足を止め、「分かった」と頷いた。私は彼の服を放す。
「じゃあ、シンラ!ここは任せるね。アーサー、こっちだよ」
言いながら、アーサーが途中で迷子にならないように、私は彼の手首を掴んで歩き始めた。
火花が飛び散る作業現場で、私は保護面を被った火消しに声をかけた。
「人手が足りないって聞いたから、第8の隊員を連れてきたけど、いいかな?」
作業を中断したその火消しは顔を上げ、少し驚いたように私を見つめた。
「絵馬小隊長、大丈夫です。ただ、第8のやつが『これ』をできるんですかい?」
彼の言う『これ』とは、金属同士を接合する溶接のことだ。少し困惑しながら、私はアーサーの手首から手を放し、首だけ振り向いて尋ねた。
「アーサー、君、溶接できる?」
アーサーは軽く鼻で笑い、ポケットからプラ板で作られたおもちゃのようなミニエクスカリバーを取り出した。
「溶接なら、任せてくれ‼︎」
自信満々に言うと、隣にあった鉄パイプを取り、器用に溶接を始めた。その手つきに、火消しは驚いたような顔をしながらも、「お、やるなァ」と感心の声を上げた。
「じゃあ、アーサー。ここは任せるね」私は言い残し、アーサーのもとから離れる。
「あぁ」と、アーサーは片手を挙げると、再び溶接に集中した。
私は現場を巡りながら、他の第8のメンバーの様子を見て回った。桜備大隊長は黙々と瓦礫を除ける作業を続けており、火縄中隊長はホッチキスのような形をした工具タッカーを巧みに使い、薄い板を素早く貼り合わせていた。茉希は重量がありそうな機材を軽々と持ち上げ、タマキは新人大会でも見せた不意のラッキースケベが浅草でも発動しているようだった。
第8のメンバーそれぞれが役割を果たしながら、浅草の人々と協力して作業している様子を眺め、私は静かに微笑んだ。これなら、うまくやっていけそうだ。そんなことを思いながら、私もまた修復作業に取り掛かかった。