第壱章
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ーー翌朝
火消し隊の一人から、第1の報告書が今朝届いたと報告を受けた。そしてその報告書は紅丸が持っているとのことだ。昨日、紅丸に言われた通り、私は彼の部屋に向かった。
部屋に到着すると、「入るね」と一声かけて襖を開けた。中では紅丸と紺炉がそれぞれ報告書に目を通していた。邪魔をしないように注意しながら、私は彼らの前に正座した。
紺炉が報告書から顔を上げて、そこに貼付された写真を指差しながら言った。
「絵馬、この第1の報告に書かれている内容は本当なのか?第1の中隊長の一人が、人工的に”蟲”を使って”焔ビト”を作っていやがったと。そして、伝導者という奴らと繋がりがあり、絵馬を含めた隊員が白頭巾の二人組に襲撃されたとあるが……」
私はすうっと深く息を吸ってから、静かに話し始めた。
「……その内容は本当だよ。報告に書かれている通り、第1の星宮中隊長をカリム中隊長と一緒に捕らえたけど、白頭巾の二人組に襲撃されて、伝導者と関係を持つ星宮中隊長は死亡した。もう一人のリィ中隊長は右腕を負傷。その場にいた隊員二名も怪我を負った。子供たちのうち一人は意識不明。その場にいた親は”焔ビト”化して死亡し、他の子供たちは無事に保護された」
紅丸は報告書から顔を上げ、私を見つめた。
「……昨日の浅草だけじゃなく、他の管轄地でも同時に”大型焔ビト”が発生したらしいな」
「そう、偶然にしては不可解だよね。でも、今のところ何が目的なのかは分かってない」
私が首を左右に振るのを見て、紅丸は報告書を紺炉に手渡した。紺炉はそれを受け取りながら、紅丸に問いかける。
「若、どうしますか?」
「めんどくせェな。俺たちには関係ねェ話だ」
紅丸が欠伸したその時、ドタドタと慌ただしい足音が廊下から響き、襖が勢いよく開かれた。火消しの男が息を切らしながら、手に待っていた一枚の紙をこちらに向けて差し出してきた。
「若‼︎紺炉中隊長‼︎絵馬小隊長‼︎てぇへんだ!この紙を見てくれ!」
三人の中で襖に近かった私が、火消しの男から紙を受け取り、目を通した。その内容に驚き、二人の前に紙を畳の上に置いた。
「二人とも見て!東京皇国の皇国から、『緊急大隊長会議』を行うって書いてある‼︎」
紅丸は紙を見て嫌な顔をした。
「おいおい、明日じゃねェか……絵馬、てめェも会議に参加するようになっているな」
「多分、昨日のことを改めて証言するように求められてるんだと思う」
私の説明に、紅丸は顔を上げて頭を掻きながら紺炉を見た。
「チッ……紺炉、面倒くせェが絵馬を連れて会議に参加するぞ」
「合点!承知!今から準備を始めるから、部屋を出るぜ」
「おぅ」
紺炉は畳から立ち上がり、火消しの男を連れて部屋を出て行った。
「紅丸」
名を呼ばれた紅丸はこちらを向いた。
「私も部屋を出るね」
「あァ」
立ち上がって、私は紅丸の部屋を後にした。
ーー久遠式火力発電”天照”
太陽暦の始まりと共に建設されたこの発電所。「天照」は東京中のエネルギーを供給していると、訓練校で学んだ記憶を思い出す。この1本の柱が破壊されたなら、東京という国家がどうなってしまうのか。そんなことをふと思ってしまう。
「絵馬!ぼけっとしてないで、行くぞ」
天照を見上げたままの私を、法被姿の紅丸が横目で見ている。彼の隣に立つ紺炉が近づいてきて、私の法被の襟を整えてくれる。
「お前ェさんは、ここに来る度に毎回こいつを見上げてるよな」
「んーー……なんとなく?」
紺炉の言う通りだ。昔からここに来る度に、この久遠式火力発電「天照」を何度も見上げている。理由は、と問われると、ただ気になるから。それだけ。
「お待ちしておりました」
聞き覚えがある声が響き、そちらを向くと、ローブ姿の見慣れた神父ーーカリムが立っていた。
「あっ、カリム」
私が呼びかけても、彼は目線をちらっと向けるだけで何も言わない。紅丸が彼に近づき、礼を言った。
「この前は、絵馬が世話になったな」
「俺のほうこそ、助けてもらいましたので」
カリムは軽く頭を下げ、「案内します」と言って、第1が特別礼拝を行っている教会へと歩き出した。紅丸、紺炉、そして私の三人は彼に続いて教会へと向かった。