第壱章
夢小説名前設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「俺が燃え尽きる前にお前ら、全員焼き尽くす‼︎ラートム‼︎」
その言葉が響くと同時に、カリムの合図が来た。
「今だ‼︎」
彼の声に、私は火犬(大)と火犬(中)を廃墟内に突撃させた。火犬たちは油断していた星宮中隊長の両腕に食らいつき、瞬時に制御したカリムがハンドベルを鳴らす音が廃墟内に響き渡った。
その音と共に、火犬たちは氷となり、星宮中隊長の腕を氷漬けにすることに成功した。カリムはもう一度ハンドベルを鳴らし、中に足を踏み入れる。私は槍伸縮型のロックを外し、手に持ち、その後に続いた。
「これは⁉︎熱温響冷却‼︎」
星宮中隊長が顔をこちらに向ける。その顔は傷だらけで、鼻からは大量の血が流れていた。その廃橋内には、彼だけでなく、戦闘後と見られる傷だらけのシンラ、そして何故か下着姿のタマキとその近くには見知らぬ子供たちがいた。
カリムは息をつき、重い口調で星宮中隊長に向かって言葉を投げかけた。
「言ってただろ?お前の後ろにはいつも、俺がいるって」
「カリム‼︎邪魔をするな‼︎絵馬⁉︎君がここにいるなんて、思ってもなかったよ‼︎」
星宮中隊長の目がわずかに見開かれ、驚いたような表情を浮かべた。しかし、すぐにその表情は笑顔に変わる。どこか焦ったような、興奮したような、不安定な笑顔。
「絵馬‼︎すまないが、君の能力でこの氷を壊してくれ‼︎」
「それは出来ません、星宮中隊長」
「絵馬ッ‼︎」
その叫びは、私の心にひときわ強く響いた。しかし、私はただ静かに首を横に振るだけだった。次に、カリムが言葉を発した。
「やめろ。お前が熱くなればなるほど俺は、お前を冷やす‼︎」
その言葉に星宮中隊長は激しく反応した。目を見開き、言葉を絞り出すように叫ぶ。
「こんな氷、蒸発させてやるぜェ‼︎」
しかし、彼が自らの炎の能力を解放しようとするたびに、カリムの氷はさらにその体を覆い、彼を冷徹に包み込んでいく。
「よせ‼︎お前自身が燃え尽きるぞ‼︎」
シンラの声が、必死に星宮中隊長に届こうとする。しかし、彼の興奮した状態には、もう誰の声も届かないのだろう。星宮中隊長は、とうとう完全に氷に閉じ込められ、動きを止めた。
カリムは目を閉じ、ゆっくりと顔を俯けた。その表情に、深い苦悩と後悔が色濃く滲んでいた。
「こんなことするために、いつも後ろにいたんじゃねェんだよ……」
砂利を踏む音が響き、振り返ると、火犬(小)が案内役となり、リィ中隊長が廃墟の中に足を踏み入れてくるのが見えた。彼の視線が私たちの元に向かうと、まず目に飛び込んできたのは、ボロボロになったシンラと、下着姿のタマキだった。泣き続ける子供たち、そして氷漬けにされた星宮中隊長を、静かに見つめているカリム。
リィ中隊長は、私が彼を見ていることに気づき、少し驚きの表情を浮かべていた。
火犬(小)が私の足元にやってきた。私は静かに感謝の意を込めて「ありがとう」と伝える。すると、火犬(小)は一瞬、柔らかな炎に変わり、すぐに静かに消えていった。
「絵馬の火犬でここまで案内してもらって、報告を受けて来てみれば……カリム……これは一体……?」
リィ中隊長は、氷に閉じ込められた星宮中隊長を見つめながら、カリムに問いかけた。その言葉には、混乱と驚きが入り混じっていた。
「第1は大丈夫なのか……」
戸惑いを隠せないリィ中隊長に、カリムは冷静な声で答えた。
「俺の勘でしかないが、これは第1だけの問題じゃない気がする……もっと大きくて大きなこの国全体の問題だ」
「全ての人間を炎に変えて、地上を炎炎ノ炎で包み込む……第二の太陽……」
「レッカが言っていた言葉か……」
私は、星宮中隊長が言っていた言葉を呟く。カリムがこちらを見ているのに気づき、私は目をそらさずに答える。
「そう、星宮中隊長は地球を『第二の太陽』にしようとしていた。それが気になったから」
再び氷漬けになった星宮中隊長を見つめる。彼はなぜ、人工”焔ビト”を作り、全ての人間を炎に変えようとしたのだろう。彼の思考がどこで狂い始めたのか、私にはわからない。私たちが初めて出会ったあの時、星宮中隊長は一体どうだったのだろう。もしかして、その時にはもう、すでにーーー。
「絵馬さん」
私の名前を呼ばれて、振り向くと、顔中傷だらけのシンラが立っていた。彼は、私とカリムが来るまでタマキと子供たちを守りながら、星宮中隊長と激闘を繰り広げていたのだろう。鼻血が固まり、口元にくっついていた。
シンラは、私たちに向かってお礼を言った。
「助かりました、絵馬さん、カリム中隊長!レッカは……死んだんですか……?」
私は静かに首を振った。カリムがシンラの問いに答える。
「空気穴を開けてある。封印しているだけだ。あとで全ての情報を吐かせる」
「その時は、私も協力するよ」
「あぁ、頼む」
「……へっ?」
と間の抜けた声が出てしまった。カリムは不思議そうな顔でこちらを見ている。いつもなら、私の申し出を軽く無視するか、嫌味を言ってくるはずだ。だが、今回は何の躊躇もなく協力を受け入れた。それがどうにも不思議で、私は思わず彼をじっと見つめてしまった。
「本当に協力するよ?」
「あ?さっきから、頼むと言ってんだろ」
その一言に、私は思わず息を呑む。彼の顔には、まるで「何を驚いているんだ」とでも言いたげな表情が浮かんでいた。それがあまりにも自然で、思わず私は調子を狂わされてしまう。頭を掻きつつ、視線をシンラに移す。シンラは、星宮中隊長が生きていると知り、安堵の表情を浮かべていた。
その瞬間、視界を赤黒い光が横切った。次の瞬間、カリムにつなぎを強く引っ張られる。衝撃波と共に、星宮中隊長の近くで地面が粉々に砕け散った。
突然、強く引っ張られ、私は咄嗟に姿勢を崩しながらも、何とか衝撃波から逃れることができた。周りの空気が震える中で、心臓が一瞬、音を立てて高鳴った。
「大丈夫か、絵馬⁉︎」カリムの声が、耳の中で響く。
「私は大丈夫……今のは⁉︎」
「分からねェ……何が起こった?」
その答えは、私と同じように混乱したものだった。空気が震え、視界が悪くなっている中で、カリムの声が私の肩越しに聞こえる。
「一瞬、光が……」
リィ中隊長も同じものを見たらしく、言葉を紡いだ。私たちがそれぞれ口にした言葉が、砂煙の中でかき消される。しかし、やがて、砂煙がゆっくりと晴れ、視界が少しずつ回復していく。目に映ったその光景に、私は思わず息を呑んだ。
隣に立つカリムも、明らかに息を止めた。彼の呼吸が、一瞬止まったように感じる。無意識に顔を上げ、私はその光景に釘付けになった。
そこには、氷漬けになっている星宮中隊長の胸にぽっかりと大きな空洞ができていた。そして、その空洞からはドクドクと血が溢れ出して、滴り落ちていた。