第壱章
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ーー第1特殊消防大聖堂前オベリスク
「これが、聖陽オベリスクかぁ」
両手に第1の防火服を持ちながら、私は少し前で、軍服を着たシンラがその巨大な建物を見上げているのを見ていた。
「想像以上にどデケェな……絵馬!貴様は、動物以外にもこのような建物を描けるのか?」
シンラの隣で、アーサーが同じように聖陽オベリスクを見上げながら私に質問する。
「いやいや、アーサー。建物なんて描かないよ私は」
「む、そうか」
「バカ騎士!絵馬さんを困らせるんじゃねーよ!」
「バカではない。騎士王だ」
シンラに注意されているアーサーを見て、私は思う。新人大会以来、アーサーと会っていなかったが、この子は。なんとなくだが、茉希と少し似ているな。騎士で頭がいっぱいの子なのか。それを感じさせる雰囲気が漂っている。
私の隣に立つ茉希に視線を移す。私の視線に気づいた茉希は頷き、シンラたちに向かって言った。
「荷物は先に送ってあります。入隊手続きはあちらで」
茉希はシンラとアーサー、そして他の部署の研修生二人にも丁寧に説明をする。
「場所は、私が案内するよ。皆、後についてきて」
私は先頭に立ち、第1特殊消防大聖堂に向かって歩き出した。その後ろを、茉希を含む研修生たちがぞろぞろとついてくる。
「なんで、俺が第1に……タリィなぁ……」
チラッと横目で後ろに視線を向けると、ガムを噛みながら口から小さな風船を膨らます隊員が見えた。腕に付けてある腕章には”5”のエンブレムが。この子は、桜備大隊長が言っていた第5の研修生だろう。
「僕なんかが神聖な第1に入っていいのかなァ」
私の左後ろを歩く研修生は、腕章が”2”のエンブレム。おどおどした顔つきには、確かに見覚えがある。シンラとアーサーが参加した新人大会にもいた子だ。競技施設に入らず、炎ミサイルを発射して施設を攻撃していた子。
しかし、第5の研修生が第1に参加されるという話は聞いていたが、どうして第2の研修生も参加しているのだろう。第5と合同としか聞いていなかったのに。そんな疑問を抱きつつ、私は目の前に立つ第1特殊消防大聖堂の扉をくぐった。
廊下を少し歩くと、受付が見えてきた。中には見知った人がいて、眼鏡をかけたシスターが私に気づき、声を掛けてきた。
「お久しぶりです。十二小隊長様」
「久しぶりですね、シスター。小隊長様だなんて、やめてくださいよ。少し、照れくさい感じがしますから」
「あら、そうですか?それは、十二さんが勝ち得た証ではないでしょうか?うふふ」
眼鏡シスターは、私の照れている様子が面白いのか笑っていた。十二さんと呼ぶ彼女は、私が第1に研修生としてやって来た頃に仲良くなった人で、皇国の言語や知識を色々と教えてくれた恩人でもある。
「あのぅ……絵馬さん」
私の背後で待機していた茉希が私の名前を呼んだ。
「あぁ、ごめん。シスター、長話もしたい気持ちもあるのですが……今回は私ではなく、こちらの研修生の受付をお願いしてもよろしいですか?」
「分かりました」
眼鏡シスターは頷き、私は受付から少し離れた。シンラたちに視線を移すシスター。
「ではこちらに記入を」
眼鏡シスターは、シンラたちに一枚ずつ紙を手渡す。手渡された紙にシンラたちが記入していく様子をぼんやりと眺めていると、アーサーと目が合い、彼に呼ばれた。
「絵馬、来てくれ!これが、さっぱり分からん」
「あぁ、ここはコレに丸付けるんだよ」
私はアーサーの近くに移動し、彼に教えながら、アーサーは紙に丸を記入していった。
「うむ、そうか。ここはーー」
「そうそう。合ってるよ」
アーサーの隣で同じく紙に記入をしていたシンラは、呆れ顔でアーサーを見ていた。
「バカ騎士……絵馬さんに手伝ってもらうんじゃなくて、自分でできるようになれよ」
「ふ……絵馬に教えてもらう俺が羨ましいのだろう」
「そんなんじゃねェよ!」
また、新人大会の時のように、二人はいがみ合い始めた。喧嘩するほど仲良いというが、私はそんな二人を見ながら、せめて彼らが紙に記入するまでその場にいることに決めた。
記入を終えた後、別のシスターが教会内を案内してくれるとのことで、そのシスターに付いて行くことにした。私たちは教会内の廊下を歩いた。細かい装飾を施された廊下や窓、壁。すべてが清掃が行き届いていて、とても綺麗だった。
「第1はすげェな」
シンラは目を輝かせ、周りを見渡しながら歩いていた。その目は、まるで子供のように楽しげで、私もその気分に少し影響される。
廊下にある大きなステンドグラスから差し込む光が神々しく、美しいと感じ、心が高揚していた。しかし、少し先で壁に寄りかかり、私たちを待っていた人物が目に入った瞬間、その高揚感が一気に急降下したのだった。