第参章
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煙と灰の匂いが鼻を突く。一本の角を生やした“焔ビト”の角が、赤黒く脈打つように輝いている。
カリムが火縄中隊長に低く告げた。「後方に後退してくれ。絵馬、いけるか?」
「ああ、動けるよ。ありがとう、タマキ」
タマキが炎の尻尾を消すのを確認し、私は地面から槍伸縮型を掴んだ。金属が掌に熱を残す。火縄中隊長と入れ替わるように、私はカリムの背後へ滑り込んだ。
その瞬間だった。
ギュルルルル……。
一角の“焔ビト”の周囲で、炎が螺旋を描き始めた。赤い渦がうねり、空気を歪ませる。まるで獲物を狙う獣のように、ゆっくりとこちらへ向かって回転しながら膨れ上がっていく。
私はカリムに囁くように言った。「カリム、あの渦を火猿に誘導する」
頷く間もなく、私は火猿に指示を送った。ゴリラ化した巨体が、鈍い地響きを立ててカリムの前に進み出る。
次の瞬間。
「GIAAAAAAAAAA」
一角の”焔ビト”が咆哮を上げた。炎の渦が爆発的な勢いでこちらへ放たれる。狙いは火猿の胸――正確には、その奥にいる私たちだ。
「カリム中隊長、絵馬小隊長!」背後でタマキの叫びが響く。
カリムは動かない。ただ、静かにハンドベルを鳴らした。
リン。
澄んだ音が戦場を切り裂く。空気が凍り、私と火猿の前に半円状の氷の膜が瞬時に出現した。厚さは数十センチはあるだろうか。炎の渦がぶつかり、轟音を立てて白い蒸気に変わる。氷は一瞬だけ赤く染まり、次の瞬間には跡形もなく消えた。
蒸気はまだ渦を巻いていた。カリムはそれを逃さなかった。トランペットのような管楽器を使い、蒸気が音もなく吸い込まれていく。
彼は静かに武器を上げ、一角の“焔ビト”へ照準を定めた。
それが合図だった。
火猿が地を蹴った。巨体が風を切って突進する。
「熱音響冷却」
低い声が響いた瞬間、火猿ごと一角が凍りついた。まるで時間が止まったかのように、すべてが白い結晶に閉じ込められた。
静寂が落ちる。
「すごいな、これは」火縄中隊長がゆっくりと近づいてきて、感嘆の声を漏らした。
「大したことねェよ」カリムは肩をすくめ、いつもの嫌みったらしい調子で答える。
「相手の炎を利用して熱を音に音を冷気に……。第二世代でも得意分野はそれぞれだが、これは見たことない」火縄中隊長は凍った一角の”焔ビト”を見上げながら、静かに続けた。
「火縄中隊長の超精密な炎コントロールも真似できねェよ。絵馬のような異常な形状変化能力、炎の制御能力もな」
カリムが横目で私を見下ろす。口元は笑っているが、目は真剣だ。
「ふふーん」私は思わず鼻を鳴らした。ちょっと得意げになってしまった。
「なあに、勝ち誇ったような顔してんだよ」カリムが呆れたように眉を上げた。
ヴァルカンが自作のゴーグルを額に押し上げながら、ぽつりと呟く。「一言に第二世代と言っても、色々いるんだな……」
火縄中隊長が淡々と説明を始めた。
「カリム中隊長と俺が異なるように、例えばマキは超広範囲の炎を操ることができる。逆に絵馬は、武器に入っている炎の分だけを意のままにできる。第三世代と比べて第二世代は得意とする分野に違いが出やすい」
「第二世代もなかなかやべェ能力してるな……」ヴァルカンが感心したように息を吐く。
「自ら炎を発することはできないが相手が第三世代なら相手の炎を利用して戦える。だからこそ対第三世代戦は相手に炎を出させるため自分の世代を隠し、油断させるのが我々の戦術だ」
「なるほどな……。俺も最初は姉さんを第三世代って思ってたからな」ヴァルカンが私を見て、苦笑いする。
「よく言われる」
「だーかーらー、勝ち誇ったような顔すんじゃねェよ」
カリムの言葉に、私は小さく笑った。