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「到着しました。こちらは歴史的建造物に認定されていまして観光地として有名です。右手に見えますのは──」

「(そこらのガイドよりよっぽどいい)」

「待ってください」

「ん?進んじゃダメなの?」

「日傘の用意がありますので少しお待ちください」

「おー…」

「…では参りましょう」

「…いや、傘くらい自分で持つ。貸して」

「これは僕が」

「なんで…」

「僕が」

「…(なんで?)」


───


「この大通りがショッピングストリートになります。欲しいものやお土産はここで買いましょう」

「ん」

「待ってください」

「ん?」

「こちらの日陰へ。日焼け止めを塗り直しましょう」

「いや別にいいよめんどくせぇ」

「僕がやります」

「えー…?」

「さあ、まずは腕を出して」

「んー…」

「パッと見て気になるお店はありますか?」

「そうだな…小腹空いた。あれ食べたい、串のやつ」

「かしこまりました。これが終わったら買ってきますね。あなたはここで…」

「いや、一緒に行こう」

「え?」

「この音なに?」

「音?…風鈴…でしょうか。風で揺れると音が鳴る仕組みの鈴ですね」

「見たい」

「ふふっ。ええ、行きましょう」



「──はい」

「おや、食べさせてくれるんですか?」

「君は荷物と傘を持っているからね。心配しなくても串を喉にぶっ刺したりしないよ。…言動次第だが」

「お言葉に甘えるのに抵抗が…」

「冗談だよ。ほら、あーん。
…どう?僕はこの味けっこう好きだが」

「ええ、いい味ですね。美味しいです」

「よし、新メニュー候補っと。似た味でもっと映える見た目に…。さっき買ったふーりんを活かせば…」

ヴァレッタ、」

「んー?」

「串を咥えたまま歩かないで。危ないです」

「子供じゃねぇから刺さったりしねーし」

「何が起こるか分からないでしょう。ゴミはこちらに」

「…ん。…ん?何だあの布は」

「様々な色や柄がありますね」

「んー用途が分からんな。フロイドの土産にどうだ?」

「ふふふ、いいですね。アズールにも買って行っては?」

「そうだな。僕はアズちゃんのと君のを選ぼう」

「では僕はフロイドとあなたのを」

「──よし決めた!アズちゃんのはこれ、君のはこれだ!」

「僕も決めました。こちらがフロイドの。あなたのはこれです。…おや、」

「ん…?僕と君の一緒じゃないか。こんなキノコみたいな柄やだよ。選び直して」

「このキノコのような柄を僕の為に選んでくれたんですね。嬉しいです!お揃いですね」

「いや同じもの買って交換する意味…。選び直してってば」

「会計を済ませましょう」

「聞いちゃいねぇ…」


───


「一周しましたが、再度寄りたいお店はありますか?」

「いいや、十分だ。ここで有名な土産の定番も買ったし。色々食べ歩いて腹もいっぱいだ。ってか器用だな…そんな荷物持って傘まで差すとか…やっぱ寄越せよ、自分のは自分で持つ…」

「いえ、僕が」

「なんで…」

「僕が」

「………あ、そう…」

「そこのカフェに入りましょう。珍しいフルーツのスムージーが楽しめます」

「ちょうど喉が乾いたところだ。でもけっこう混んでるぞ。席空いてないんじゃ…」


『ご予約の2名様!ご案内します!』


「予約?いつの間に…ここに来る時間なんて決めてなかったよな。僕がダラダラと買い物を長引かせていたらどうするつもりだったんだ」

「ふふ、」

「何だその挑戦的な笑みは…。僕が立ち寄りそうな店や買い物に要する時間の予想が完璧に当たってる…とか言わないよな」

「まさか。あなたは常に僕の想定の斜め上を行く。だから面白いんですよ」

「斜め上?陸の歩行でそれは無理だろ、何言ってんだ」

「そういう発言の事です」

「は???」

「今回の旅はあなたの為です。あなたは綿密に計画を練ってその通りに滞りなく実行するのが好きですからね」

「ん?」

「僕はその中であなたの言動を楽しむのが目的です」

「え、こわ」

「ところで、だいぶ歩きましたが足は痛くないですか?」

「平気。君が用意した靴 全然疲れない」

「それは良かった。辛くなったら直ぐに言ってくださいね」

「ん。この後の予定は?」

「もう一箇所観光地を巡ってホテルへチェックインしようかと」

「君の行きたいところ?」

「そうですね…はい。あなたと行きたい所です」

「分かった、君に付き合おう」



─────



「すげー綺麗なホテルだな…ポムフィオーレみたい」

「受付が済みました。部屋は6階ですね。行きましょう」

「えっ?めちゃめちゃ人並んでるが。君どんなズルを…」

「ズルではなくアプリです。人を介さない分早いんですよ」

「へぇ〜すごいな」

「カードキーは2枚とも僕が預かっておきますね。あなたが一人で部屋から出る事はないので」

「ないの?」

「はい。必ず二人で出なければならない決まりです」

「そんな決まりが…変わったホテルだな」

「ふふっ。着きました。足元に気をつけて」

「おー…ん?ちょっと待て」

「はい?」

「ベッドがひとつしかないんだが」

「おやおや……間違えて予約をしてしまったようだ」

「………」

「困りましたね」

「全然困ってねーじゃん。お前がそんなミスする訳ねーし」

「我慢して一緒に寝るしかなさそうです」

「寝相に文句言うなよ」

「はい。レストランの予約は19時です。それまで少し休んでください」

「テレビある!なんか色々見れるぞ!…お、AVあんじゃん!ラブホじゃねーのにこんなの見れるのか!」

「え…見るんですか?」

「いや、アニメがいい。この黄色いちっこいのがいっぱいのやつ」

「90分ですか…最後までは見られませんよ」

「流しとくだけでいい。アズちゃんに電話もしたいし」

「…電話は5分以内という決まりです」

「えっ5分?短いな…。ラウンジが忙しい時間だし長くても20分くらいしか話せないが…」

「5分です」

「おー…まぁ声が聞ければいいけど…。変な決まりがいっぱいあるホテルだな。
…というか近いな?こんなに密着して座る必要ないだろ。少し離れて座れよ」

「ベッドに座る際は必ず二人一緒に。体を密着させなければならない決まりです。そうしなければ爆発します」

「爆発って君…急にIQ下がったな。嘘を言うな、離れろ」

「チッ…これは嘘だと分かるんですね」

「舌打ちすな。これはって何だ。他にもしょーもない嘘ついてんのか」

「いえこちらの話です。…脚を出して。マッサージをしてあげます」

「え?ああ…あ?そんなにスカートを捲るなよ、シワに…っ、あ、もしもしアズちゃん?ごめん今…ん?…うん、そうだよ!そうそう、ホテルに…、んふっ!ちょっくすぐったい!」

「ふふ…」

「あ、ごめんジェイドが…5分しかないから……え?なんかホテルの決まりで……。うん、うん…分かった!新メニュー候補はちゃんとメモしてあるから大丈夫だよ!うん!じゃあまた明日電話するね」

「…きちんと時間を守れて偉いですね」

「くすぐったいってば!バカ!」

「そうだ、お風呂はどうします?」

「どうって?」

「3点ユニットバスなので二人一緒には入れません」

「何で二人で入る事前提なの?」

「? 何かおかしいですか?あなたの体や髪は僕が洗いますよね?」

「んー?」

「大浴場があるので行きませんか?」

「え…でも…僕は…、」

「一時的にオスに戻ってください」

「そんな微調整…」

「出来ますよね?」

「出来るけど…」

「なるべく人が少ない時間帯を狙って行きましょう」

「………分かったよ」



─────



「っはぁぁ〜〜〜……ベッドにダイブすんのって最高だな…海の中では絶対に味わえないこの感じ…」

ヴァレッタ…、ガウンが捲れていますよ」

「別にいいじゃん、今はオスだし」

「………」

「…ん?なに」

「…オスでもメスでも、体型に大差はありませんね。…白くて細い」

「きゃーえっちな目で見て来るんですけどこの人ー!」

「ふふっそんな野太い悲鳴では誰も助けに来てくれませんよ。それで、どうでしたか?」

「風呂?気持ち良かったよ。ほぼ貸切状態だったし」

「ディナーは?」

「美味かった!店の雰囲気もいいし、盛り付けも映えって感じ」

「珍しく沢山写真を撮っていましたね」

「アズちゃんに頼まれたからな。新メニュー候補…後で一緒に考えて」

「はい」

「ねぇもう一回やって」

「何を?」

「脚揉んで…今度はちゃんと」

「ええ、ではこちらに伸ばして」

「ん。明日の予定は?」

「有名なテーマパークがあるのですが」

「知ってる!」

「ふふふ、行きましょう。ずっとあなたと行きたかったんです」

「乗り物いっぱいあるんだよな!アズちゃんだったら酔いそうな絶叫系?とか!君も苦手そうだ!」

「平気です!…多分、」

「楽しみだ!ちょっと調べておこう」

「あの、ヴァレッタ

「んー?」

「………」

「なに?…君もマッサージしてほしいの?」

「え…いいんですか?」

「いいよ。横になりなよ」

「ではお言葉に甘えて…。くれぐれも骨は折らないようにお願いしますね」

「心配すんなって。じゃあ君がアトラクション調べといてよ」

「あなたの好きそうな物は既にリサーチ済みです」

「はは!抜かりねぇな!…どう?気持ちいい?」

「もう少し強くても大丈夫です」

「…これくらい?」

「はい。気持ちいい…です、」

「………」

「…ヴァレッタ?」

「なに?」

「………、もう…いいですよ。ありがとうございました」

「おー…。…寝るか。日付変わったし」

「………」

「っ、何だよ…顔を触るな。左側は嫌なんだよ」

「なぜ?こんなに綺麗なのに」

「………」

「………今日は、ダメですか?」

「ダメだろ…壁が薄い」

「………一回だけ、」

「明日に響くだろ…」

「一回で我慢しますから…」

「はぁ……どっちがいいの?」

「僕がリードしたいです。…あなたに受け入れてもらいたい」

「………、………ちょっと待ってろ」

「え…?」

「………」

「………あの、なぜまたメスに?」

「? 抱くならメスの方がいいだろ」

「いえ僕はどちらでも…。オスでもメスでも、あなたに変わりはないので」

「………、………」

「………(嬉しそうだ…)」



───
─────
───────


───翌日、


「──うおー…ものすごい人だな…このアトラクション一番人気なのか?」

「そうですね…これ目当ての人が多いようです」

「ふーん…」

ヴァレッタ、もう少し僕に寄って」

「えー暑い…」

「我慢してください。ほら、ちゃんと日傘に入って」

「おー……えっ!?ちょっと待て、180分待ち…って書いてあるぞ!?これに乗る為に?ここに?180分も並ぶのか!?嘘だろ……」

「ふふふっ…驚きすぎでは?」

「いやいや…え?時は金なり…だぞ…アズちゃんブチ切れ案件…。待ってる間何するんだ…?」

「僕はあなたとなら何時間でも並べますが…。そんな人の為にこれがあります」

「これ…?」

「優先パスです。まさに”時間を買う”というやつですね」

「ん?」

「つまり180分も並ばなくて済むと言う事です。さぁ、僕らはこちらの列ですよ」

「おお…君って何でも知ってんな!」

「くすっ…あなたを喜ばせる為に色々と調べるのは楽しいので」

「キスしてやろうか」

「えっ…ぜ、ぜひ」

「冗談だよ!」

「…ひどいです」

「ふはっ!」



─────



「………なぁ、なんか時計バグってんだが…」

「え?…合っていますよ」

「合ってない。時間の進み方がおかしい。さっき開園したばっかだろ…なんでもう閉園するんだ」

「それは…、ふふ、そうですね…僕もおかしいと思います」

「アトラクション制覇してない」

「一日では難しいですよ」

「チュロスもっかい食いたい」

「閉園時間ですからお店も閉まってしまいましたね」

「……………」

「………ヴァレッタ、」

「んー」

「とても楽しかったです。あなたとの初めての旅行は、最初から最後まで楽しいだけでした」

「…ん。僕もだ!」

「本当に?…では、また来ましょう」

「ん!今回は計画も準備も案内も全て君がやったからな…次は僕も手伝うよ」

「いいんですか?あなたと旅行の計画を立てられるなんて嬉しいです。楽しみだ…!」

「ふふ、大袈裟だろ」

「いいえ、本当に嬉しいです。では…名残惜しいですが帰りましょうか」

「ああ。…ジェイド、」

「はい?」

「ありがとな」

「…ふふ、こちらこそ」

「いや僕はお礼を言われる事してないが…」

「いえ、お礼のキスをしたいくらいです」

「何で君が…?」

「してもいいですか?」

「…されるよりしたいって事?」

「されたいです。してください」

「急に早口だし近いし。される気満々かよ……まぁいいか」


ちゅっ、


「楽しい旅をありがとう」

「…ふふふっ!どういたしまして!」



《旅行》

初めての二人旅。

End.
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