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D軍基地の深部、かつての戦場のような殺伐とした空気は鳴りを潜め、今は静謐な、効率性だけが支配する空間…そこは、元情報参謀サウンドウェーブの管轄区域だ。
「……サウンドウェーブ、本日のデータ集計、完了いたしました。ご確認ください」
凛とした声が響き、サウンドウェーブが顔を上げた。
しなやかで華奢な体躯の女性型TF…彼女、◯◯◯は音もなく彼の隣に立ち、データパッドを差し出した。双眼のカメラアイは、常に落ち着き払っている。
「……ご苦労」
サウンドウェーブの声に本来感情は乗らない。だが、◯◯◯に向ける時だけは無機質な中にも、確かな「体温」を含ませているつもりだ。
◯◯◯はA軍出身。和解後、その卓越した情報処理能力をサウンドウェーブが高く評価し、直属の部下としてD軍基地に招き入れた。高い能力を持っているにも関わらず、常に謙虚で、上官であるサウンドウェーブを立てる。その慎ましやかさを、サウンドウェーブは密かに気に入っていた。A軍の基地から離れ、和解したとはいえD軍の中で1人奮闘する◯◯◯をサイドスワイプやアーシーたちが心配するのも無理はないだろう。それほどまでに、彼女はあまりに脆く、そしてあまりに気高いのだ。
◯◯◯は、甘えることを知らない。我儘を言うことも、知らないのだろう。
サウンドウェーブが上官しての仮面を脱ぎ捨て、恋人として◯◯◯を抱き寄せた時、一瞬だけスパークが跳ね上がり、カメラアイが戸惑いに揺れる……いつまでも、そんな初々しい反応を見せるのだ。そんな◯◯◯がサウンドウェーブにとっては堪らなく愛おしく、同時にもっと自身に甘え、我儘を言って欲しい、とすら思わせた。
ある任務の帰り道。
2人は、偶然にもアイリスの花畑を通りかかった。
地球の自然、特に花を愛する◯◯◯は、ビークルモード(彼女に似合うミニクーパーのエレクトリックブルー)のまま静かに停車し、その光景に見入っていた。
そんな彼女に気が付き、サウンドウェーブが密かに周りをスキャンする。
……生体反応、なし。敵対勢力、なし。
「……触らないのか?」
サウンドウェーブは、◯◯◯の隣にゆっくりとロボットモードで立ち上がり、問いかけた。
「……はい、見ているだけでいいのです。私が触れれば、この繊細な花びらを傷つけてしまいますから」
「……………」
◯◯◯が寂しげに、だがきっぱりとそう言葉にするのを聞いた瞬間、サウンドウェーブは決断した。
傷つけない花。◯◯◯が、躊躇うことなくその手で触れ、永遠に愛でることができる花。……それを、作ってやろう、と。
決断したサウンドウェーブの行動は早かった。彼女に内緒で、宝石の原石を入手するために基地を空けることにしたのだ。
トランスフォーマーサイズの花を、宝石を削り出して作る。……仕事と同時進行とはいえ、2ヶ月は必要だろう。
「ショックウェーブ。ブラックアウト。……協力しろ」
サウンドウェーブから、事の顛末を伝えられた2人は一様に驚きを顕にした。
「…どういう風の吹き回しだ、サウンドウェーブ。……まぁ、いいだろう。お前のその執着心には興味がある。彼女のデータ管理、引き受けよう」
「……フン、あの謙虚な嬢ちゃんのためか。仕方ねぇな…サウンドウェーブ、お前が不在の間、俺も時折様子を見に行ってやる。……あいつは、我儘一つ文句一つ言わねぇからな」
サウンドウェーブにとって、ショックウェーブとブラックアウトは信頼できる仲間だ。その2人の言葉に感謝し、基地を後にした。
◯◯◯には、長期の重要任務とだけ伝え、自身の指示に従って黙々と仕事をこなすよう命じた。
そして2ヶ月間、◯◯◯はD軍基地の仕事場で、独り、淡々と指示通りの仕事をこなしていた。ショックウェーブやブラックアウトが、仕事を口実に様子を見に行っても、彼女は常に礼儀正しく、感情を表に出さずに応対していた。
「……ショックウェーブ、こちらのデータ、お持ちいたしました」
ある日、◯◯◯はショックウェーブのラボへと足を運んだ。データパッドを手渡しながら華奢な体躯でショックウェーブの単眼と視線を合わせるよう見上げる。
「ご苦労…サウンドウェーブは、相変わらず忙しそうだな」
突然サウンドウェーブの話題を振られ驚いたのか、◯◯◯のカメラアイが一瞬「…えっ?」と揺れる。たまたまショックウェーブのラボに足を運んでいたブラックアウトもゆっくりとした足取りでショックウェーブの隣に並び、◯◯◯を見つめた。
「…寂しいんだろ」
ブラックアウトの無遠慮な言葉に、彼女は一瞬、カメラアイを伏せる。
「……いえ。サウンドウェーブは個人的な関係の前に、上官です。そんな彼に、迷惑をお掛けしたくありませんから。……私の存在が、彼の負担になることだけは、避けたいのです」
その言葉を、ショックウェーブは黙って聞いていたが、やがて小さく首を振る。
「サウンドウェーブは優秀だ。お前一人を負担に思うような、器の小さな男ではない」
「……その通りだぜ?もう少し、あいつに甘えてみたらどうだ?案外、喜ぶかもしれねぇぞ?」
彼女は、二人の言葉に、困ったように微笑み、小さく首を振った。
だが、その瞳の奥には、確かな寂しさが宿っていた。
2ヶ月後。
作業を終え、すべての準備を整えたサウンドウェーブが、基地へと帰還した。
「…今、戻った」
「おかえりなさいませ、サウンドウェーブ。……無事のご帰還、何よりです」
◯◯◯は、いつものように完璧な敬語で…だが、どこか安堵した様子でサウンドウェーブを出迎えた。
「◯◯◯、渡したいものがある。…私の部屋へ来てくれ」
サウンドウェーブは、◯◯◯の小さな手をそっと引き、自らのプライベートルームへと招き入れた。首を傾げる彼女が部屋に一歩足を踏み入れた瞬間…
部屋中に置かれた、宝石の花々が、彼女のカメラアイに飛び込んできた。
ダイヤモンドの鈴蘭。
アクアマリンの百合。
サファイアのアイリス。
ルベライトのラナンキュラス。
クンツァイトの八重桜。
アメジストの桔梗。
ペリドットの水仙。
それらは、部屋の照明を浴びて、七色の光を放ち、まるで宝石の海のように輝いている。
「……わぁ……!」
◯◯◯は、感嘆の声を漏らし、呆然と立ち尽くした。
「これなら、傷つけることもない。……気に入ったか?」
サウンドウェーブは、◯◯◯の背後に立ち、低く、甘く囁いた。
「……はい。とても、とても美しいです。サウンドウェーブ、……ありがとう、ございます」
◯◯◯は振り返り、サウンドウェーブを見上げて、初めて心の底からの凛とした微笑みを見せた。
そんな◯◯◯の表情に、サウンドウェーブも満足げに、愛おしそうに目を細める。
「ショックウェーブから、帰還前に通信が来た。……お前が、俺の負担になることを恐れている、と」
サウンドウェーブは、そっと◯◯◯を抱き寄せた。大きな腕が、華奢な彼女の体を、優しく閉じ込める。
「迷惑ではない…負担にもならない。……俺は、お前のすべてを、愛している」
サウンドウェーブの指が、愛おしそうに◯◯◯の頬を撫でる。
「俺に、我儘を言ってくれ。甘えてくれていいんだ。…その凛とした態度は誇らしいが、俺の前でだけは…崩れてもいいのだぞ」
「…サウンド、ウェーブ」
◯◯◯は、恥じらいながらも、その腕の中で、控えめに肯定の意を示し、そっと頷いた。
「……では一つだけ、我儘を言っても良いですか?」
「あぁ…何でも言ってくれ」
「これから先、何があっても…ずっと、あなたの側に居させてください」
それは、我儘とは言えない、あまりに健気で、あまりに一途な願いだった。
サウンドウェーブはどうしようもない愛おしさに駆られ、◯◯◯を更に強く、腕の中に抱きしめた。
「何があっても…絶対に離れない……離すつもりもない」
「…はい」
サウンドウェーブは彼女の双眼のカメラアイを、真っ直ぐに見つめた。
「ずっと、俺の側に……俺だけの、音なき守護者として」
永遠とも思える誓いを紡ぎながら、◯◯◯の唇に、優しく、だが確かな独占欲を込めて、口付ける。室内を照らす宝石の花々から反射した七色の光が、2人を祝福するかのように瞬いていた。
【菫さま、素敵なリクエストありがとうございました!】
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