Ironhide
夢小説設定
この小説の夢小説設定本人曰く、至って普通の20代日本人。
国防長官ジョン・ケラーと面識があったため、大学院卒業後すぐ彼によって就職先を斡旋され… 現在人類と金属生命体の緩衝材として軍地基地に勤務中。
「私はジョンに騙されたの!!」…とのこと。
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ある晴れた気持ちの良い日。
翡翠は人生初の危機に見舞われていた。
『…遅い…』
ボソッと呟き、座ったままの足を組み替える彼…アイアンハイド。
ふんぞり返って椅子に座り、腕組みをしたうえに不機嫌極まりない表情を浮かべる体格の良い男を周りの者たちはどこか遠巻きに見ていた。
何かあったのだろうか…と思うことは皆同じなのだが、声をかけてみようという勇者は現れないらしい。
ふと、持たされていた時計に目をやる。
すでに待ち合わせを約束した時間から1時間を経過していた。
『いくらなんでも、遅すぎるな』
また小さく呟いて、のっそりと立ち上がるアイアンハイド。
買い物に夢中になっているにしても時間がかかり過ぎている…彼女らしくない。
眉間に出来上がった皺を気にすることもなく、歩きながら翡翠の反応を探した。
少しだけサーチの範囲を広げるとその小さな反応はすぐに見付かる。
だが…
『ちっ…』
すぐ側にもう一つの反応。
やっかいなことになっている…と考えざるを得ない。
やはり無理にでも一緒に付いて行かなかったことを少し後悔しながら、アイアンハイドは歩き始めた。
一方。
翡翠は、困り果てていた。
「だから、連れがいるんですってば!!」
「でも彼氏じゃないんでしょ?」
「それはそうだけどっ!」
「今時間ないなら連絡先だけでもいいからさ。また今度ゆっくり会おうよ」
「だぁかぁらぁ…」
そろそろ、切れちゃってもいいですか??
私もそろそろ限界です…
今ココに鏡があったなら、額に血管が浮き出ていないかをチェックしたいくらいだ。
久々の楽しい外出。
…のはずだったのに、状況は一変した。
この目の前の…いかにも遊んでそうなアメリカ人によって。
「一体なに?しつこい男は嫌われるわよ…それは全世界共通でしょ?」
「君みたいなアジアンビューティーを前にしたら、しつこくもなっちゃうよ」
「……………」
ウィンクをかましながら、砂を吐いてしまいそうな台詞をいとも簡単に言ってしまう目の前のアメリカン。
もう…ホントに限界だ。
大和撫子の皆さん。
おしとやかな日本女性のイメージを崩して申し訳ないのですが…私はそろそろ堪忍袋の尾が切れそうです。
「なぁ、マジお願いだからさ」
「ちょっ…」
そんな翡翠の黒い内心を知ることもなく、男が腕を掴んで引き寄せようとしてくる。
あぁっ、もうっ!!!
「やめてよっ!!」
言いながら、力いっぱい腕を振り払おうとした翡翠だったが…
ズン
ズン
ズン
…ん?
何やら近付いてくる足音に動きを止めた。
ふと足音が聞こえてくる方向に目をやって…
「っ…」
思わず固まる。
ズン
ズン
ズン
近付いてくる足音。
震源地であるアイアンハイドが鬼の形相で一歩一歩近付いてくる。
…こっ、こわぁぁぁぁぁっ!!!
「ア、アイアン…ハイ、ド…」
お、落ち着いて!!
まわりのみんなが見てますよっ!!
…てか、何でヒューマンモードなのにそんな尋常じゃない大きさの足音が聞こえる訳!?
私の空耳っ???
ふと見ると目の前の遊び人風アメリカンも翡翠の腕を掴んだまま、固まっていた。
『その手を離せ』
地を這うような低~い声に男がパッと翡翠の腕を離す。
やっと解放されてホッと一息…のはずなのに、こんなにも落ち着かないのは何故でしょうか…
「か、彼氏…??」
震える指先でアイアンハイドのことを指し示し、聞いてくる男。
私に聞くな!私にっ!!
こんな表情をしたアイアンハイドの前で何て言えって言うのだ!!私だって怖い!!
そう思って、何も返答できないままアイアンハイドを見上げると、彼は男を見降ろしながら一言。
『そんなこと、お前には関係ないだろう。何であれ、この娘に触れることは許さん』
そのあまりにも怖すぎる一言に男がすくみ上がった。
そして、一歩一歩後ずさりしたかと思うと、そそくさと退散していく。
…よ、よかった…
あまりにもしつこくて、どうしようかと思っていたのは確かだったから。
正直ホッとして小さく息をつく翡翠だが…次の瞬間だった。
『この、馬鹿娘がっ!!』
「ッ…!!?」
すぐ真上から怒鳴り声を浴びて、思わず飛び上がりそうになった翡翠。
見上げると、さっきの鬼の形相よりはいくらかマシだけど、まだまだ怒った表情をしているアイアンハイドがいた。
『遅いと思って来てみれば、何をやっている!?』
「なっ…わ、私のせいじゃないでしょ!向こうが」
『だからいつも言っているだろ!そんな風に足など出した格好をしているからだっ!!!』
「…へ…??」
その一言に一瞬固まる。
いや、そんなこと今初めて言われたよ?
もしかして、いつも口には出さないけどそう思っていたわけ??
「いや、ただのスカートだし」
『隙を見せるからだ、何故出掛ける時だけそんな恰好をする!いつもの服装で良いだろうが』
「っ…良い訳ないでしょ!あの迷彩柄のつなぎで出歩けって言うの!?」
軍人ではないにしろ、動きやすいという理由で普段は軍の男性たちと同じ恰好で仕事をしている翡翠。
それは仕方ないと思っているし、別に不満な訳でもない。
でも…でもね!!
私だって女の子なのよ、一応。
出掛ける時くらい…少しくらい女の子らしくしたっていいじゃない。
しかも、普段仕事中は無口なアイアンハイド。
その彼とたくさん話をするチャンスなのに…
「な、なによ…」
それなのに、頭ごなしにそんな風に言われて、何だか言い様のない寂しさに襲われて…気が付いたら瞳が潤んでいた。
その事実に気がついたアイアンハイドがギョッとした表情を見せる。
『なっ、泣くことはないだろう!』
「泣いてないわよ!!」
軍人らしく、背も高くて体格の良いヒューマンモードのアイアンハイド。
そんな彼が小さな翡翠に対してどこかオロオロした様子を見せている。
こんなアイアンハイド、初めて見たなぁ…
などと思いながら、翡翠はキッとアイアンハイドのことを見上げた。
「私だって女の子なんだから!非番の日くらい女の子らしい恰好したっていいでしょ!?」
『む、むぅ…』
「……………」
瞳を潤ませながらそう言った翡翠に、それ以上何も言えなくなっているアイアンハイド。
しばらく沈黙していたけど…
ふぅ、と小さく息をついて、翡翠はそっと彼の逞しい腕に手を触れた。
「でも、ありがとう」
『…今度は何だ?』
「正直困ってたから…アイアンハイドが来てくれて助かった」
『…はぁ…』
…なに?
せっかく素直にお礼を言ったのに…ため息ですか??
『翡翠は本当にコロコロと良く表情が変わるな…この星の人間は皆そうなのか?』
「そ、そんなことないと思うけど」
『おかげでスパークが落ち着かない。さっきだってそうだ』
そう言ったアイアンハイドの骨ばった大きな手が翡翠の頬に触れる。
『言い寄られている翡翠を見た瞬間…スパークが弾けるかと思った』
「な、何、それ」
『さぁな…俺が聞きたいくらいだ』
何だか、ちょっぴり照れくさいことを言われているような気がする。
チラリとアイアンハイドを見上げると、目があった瞬間、すぐに逸らされてしまったけれど…
一番そういうことを言わなさそうな人にもらえた言葉に翡翠は心がほわっと暖かくなったのを感じた。
『それより、もう帰れるのか?』
「…あ。」
まるで話題を変えるみたいにそう聞かれて、ふと思いつく。
化粧品…買いたかったんだけどなぁ…
「ん~…もういいや」
『何だ、煮え切らない返事だな』
「…?ア、アイアンハイド…?」
クルリと踵を返す彼に翡翠が首を傾げる。
『せっかく来たんだ。欲しいモノがあるなら買っておけ』
「で、でも…」
『その代わり、今度は俺も同行することにする』
目を離すと危なっかしいからな…と小さく付け加えて、先を歩き始める。
すごくアイアンハイドらしいな、と思った。
本当はすごく優しいところがあるのに…
自分にも他人にも厳しい人だから、普段は隠れてしまい分かりにくい。
「待ってよ」
フーバーダムではなかなか見られない彼の一面に触れられたような気がして、嬉しくて…
翡翠は緩む表情をおさえることが出来ないまま、その大きな背中を追いかけた。