Dino
夢小説設定
この小説の夢小説設定本人曰く、至って普通の20代日本人。
国防長官ジョン・ケラーと面識があったため、大学院卒業後すぐ彼によって就職先を斡旋され… 現在人類と金属生命体の緩衝材として軍地基地に勤務中。
「私はジョンに騙されたの!!」…とのこと。
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「翡翠、少しいいか?」
「レノックス少佐!」
はい、何かありましたか?とすぐに駆け寄り、敬礼する。
訳あってオートボットの世話係のような仕事を任されてはいるものの、正規の軍人ではないから堅苦しい挨拶は必要ない、といつも言っているのだが…
それでも、今は軍の中に身を置いている以上、これくらいはしないと気持ち的にすっきりしない…というのが彼女の言い分らしい。
翡翠の真面目な性格が滲み出ているようで、レノックスは小さく笑いながら敬礼を返した。
そしてすぐに本題に入る。
「この書類なんだけどな、損壊箇所はこれで間違いない…んだよな?」
「えぇ、間違いなくその数です」
「…そうか」
思わずため息が漏れる。頭が痛い。
数台にも及ぶ軍用車にヘリコプター1台、さらに不運が重なって使い物にならなくなったそのリストの中には配備されたばかりの最新鋭の戦闘機までもが名を連ねている。
この損害額は一体いくらになるんだ…
間違いであって欲しかった。
それが本音ではあるが、いつも真面目で仕事が正確な翡翠のこと…やはり、正しかったか、と落胆するしかない。
「…で?ツインズたちは?」
「今、ラチェットにたっぷり絞られてます」
「……………」
「今回ばかりは彼の堪忍袋の尾も切れたようで…駆動を司る神経系を全て遮断した上でのお説教中なんです」
「…それは、拷問に近いな」
「はい…なので、今は私も近寄れなくて」
「…そうだな」
2人の喧嘩によって、これだけの損害を出したのだ。そんなツインズの肩を持つ訳にはいかないが…それでも、やはり少し同情した。
何せ相手はあのラチェットだ。
想像しただけで背筋が凍る…色んな意味で。
「それに、たぶん帰還したらオプティマスのお説教も待っていると思うんです」
「それは…あの2人もさすがに今後は少し大人しくなりそうだな」
「はい」
困ったように頷いて、ご迷惑をおかけいたしました、と頭を下げる彼女。
翡翠に落ち度は微塵もない。
宇宙から来たエイリアンたちに地球の常識を教え込むのは至難の技だ。
皆一様に個性的な連中であるし…
そんな中翡翠は本当によくやってくれている、と思う。
基地内での評判もいいし、こうして問題が起きれば軍とオートボットとの間に入り事態の収拾に動いてくれるし、何より…
翡翠が彼らの世話係を請け負うようになってからというもの、オートボットたちが人間に対して友好的になった気がする。
すぐさま地球になじみ、人間を受け入れた者もいれば、そうでない者がいたもの現実だ。
それを1番如実に見せていたのが、赤い装甲の若いオートボットなのだが…
「それと…」
ずっと、気になっていたことがある。
「それは…ツッコんだ方がいいのか?」
「いえ、無視してください」
思わず指で彼女の後ろを指し示すレノックス。
間髪入れずに翡翠にはそう言われたが…難しいことを言うものだ、と思った。
見上げるほどに大きな体で翡翠の後ろにどっかりとしゃがみこんでいるディーノ。
そして後ろからこれまた大きな金属の指で翡翠の柔らかな頬をつついている。
先ほど書類の確認を始めた頃から…ずっと、だ。
「確認事項は以上ですか?レノックス少佐」
「あ、あぁ…」
「今後は、このような被害を出さないように私も気を付けます」
「おう…」
彼女は至って真面目だ。
真剣な表情でそう告げる翡翠の頬を今もずっとつつき続けているディーノ。
柔らかそうな頬からは、今にもプニプニと音が聞こえてきそうだ。
そんなことをされ続けながらも全く相手にしていない様子の彼女を見て、まさかこれが常態化しているのか?と思わずにはいられない。
真面目な表情を崩さない翡翠だが、あまりのミスマッチにレノックスの方が吹き出しそうだ。
『おい…無視すんなよ、bambina』
「レノックス少佐、お忙しい中ご足労いただきありがとうございました」
『おい』
「今後は何かあればこちらから出向きますので、ご連絡ください」
「あ、あぁ、わかった」
『……………』
信じられないものを見せられている気分だ。
このディーノというオートボットは特に人間を嫌っていて、部下の中にも作戦を伝えるだけのやり取りですら容易ではない、と嘆いていた連中がいたはず。
そんな彼が目の前で人間である翡翠にちょっかいを出している。
しかも、相手にされていないとわかり、ムッとした表情を見せているように見えるのは気のせいなのか…
『…いい度胸じゃねぇか』
低い声が響き渡る。
翡翠は振り向かない。
ディーノはそんな彼女を気にするでもなく、頬をつついていた指を離し…
当然のようにスカートの裾を器用に摘んだ。
「っ…何すんの!?」
『オレを無視するお前が悪い』
体ごとバッと振り返り、見上げるほどの赤い彼を睨みつける翡翠。
対するディーノは翡翠の反応が得られて、どこか満足そうに見えた。
信じられない…あのディーノのことだ。
小さな人間の女に手を振り払われたとなれば、憤慨してもおかしくなさそうなのに…
目の前の彼はさっきからずっと…本当に楽しそうにしている。
「はは…こんな面白いものが見られるとは思わなかったな」
「やめて下さい、レノックス少佐」
肩を落としながらため息を零す翡翠からは日頃の苦労が滲み出ていた。
一体、いつからこんなことになっていたのか…
『我儘なお姫様だな…人間に慣れろって言ったのは翡翠だろ』
「それは言ったけど…」
『だったら練習台になれ。お前らみたいな小さくてか弱い生物、すぐに握り潰しちまいそうで加減が難しいんだよ』
「…怖いこと言わないでよ」
ディーノはやれやれ、と言った様子で両手を上げると、まるでため息をつくかのように排気した。
『ヒューマンモードでのスキンシップをやめろって言ったのもお前だ。オレは言い付けを守ってる』
「っ…当たり前でしょう!あ…あんな…」
『何だよ?ちょっと抱き締めたり、頬にキスしただけじゃねぇか』
「そっ…そういうのは恋人同士でするものなの!!特に、私は日本人なんだから!」
『だったら、早くオレの女になればいい』
「な…」
『そうすりゃすぐ解決だ』
「……………」
駄目…目眩がする…
そう言って額に手を当てている翡翠を見て、レノックスは同情するしかなかった。
どうやら…人間嫌いのオートボットに必要以上に気に入られてしまったらしい。
ロボットモードのままで翡翠を愛でているディーノは、彼なりに翡翠の言葉を汲んでいるのかもしれないが…如何せん、相手はエイリアンだ。
一筋縄ではいかないのだろう。
『オレは翡翠のためにヒューマンモードを取り入れたんだぞ。無駄にさせるな』
「ちょっ…何!?」
赤い装甲の大きな手で翡翠の腰を掴み上げるとゆっくりと立ち上がり、十分な高さが出てからもう片方の手の上にそっと降ろす。
こうすれば、翡翠は自力で降りられない。
「何するの!?」とか「こういうのずるい」とか、そんな非難の言葉を浴びせている翡翠だが、ディーノは笑っているように肩を揺らしている。
人間相手では力加減が難しい…と言っていた割には慎重に、優しく翡翠を扱っている様子のディーノにレノックスはまた驚いた。
その時、ディーノがおもむろにレノックスの方を振り返る。
『そういうことだ。もういいだろ?これ以上邪魔すんな』
「あぁ、俺の要件は終わったが…」
「レノックス少佐~!お話の途中にすみません!ほらっ、降ろしてよ!」
『これ以上オレの前で他の男と喋るんじゃねぇ。妬けんだろ』
「なっ、何言ってんの!?」
何とかディーノの肩越しにレノックスへ声をかけようとしているらしいが…
そんな翡翠の行動をことごとく封じているように見えるディーノ。
ご機嫌な赤いオートボットの響き渡る足跡と共に翡翠の声が小さくなっていく。
「レノックス少佐!すみません、失礼いたします!」
『お前は、また…』
「もう、今日という今日は帰還したらオプティマスに言い付ける!絶対言い付ける!!」
『くっくっ、好きにすればいいさ』
司令官の小言付きだったとしても、ディーノにとっては翡翠との時間の方が重要だ。
そんな2人の様子にレノックスは唖然とするばかりだったが…良い傾向だとも思った。
これを機に、ディーノの人間嫌いが改善されていけばいい。
巨大なオートボットにまるで小動物のような可愛がり方をされている翡翠は…大変だろうが。
そんな風に思わずにはいられない。
離れていく赤い背中に小さく笑うと、レノックスも持ち場に戻るべく踵を返した。
【愛くるしい】
「もう…ホント訳が分からない」
『あ?』
「そんなに私のことからかって、楽しい?」
『あぁ、楽しいね。だいたい、翡翠が悪いんじゃねぇか』
「…何で?」
『逃げられたら、捕まえたくなる。単純なことだ』
「それ…私じゃなくてもいいでしょ」
『ふざけんな。お前以外願い下げだね、こんなに構って楽しい女、翡翠以外に有り得ねぇな』
「…もう…」