Ironhide
夢小説設定
この小説の夢小説設定本人曰く、至って普通の20代日本人。
国防長官ジョン・ケラーと面識があったため、大学院卒業後すぐ彼によって就職先を斡旋され… 現在人類と金属生命体の緩衝材として軍地基地に勤務中。
「私はジョンに騙されたの!!」…とのこと。
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ある日の昼下がり。
天気の良い、洗濯日和。
でも、そんな清々しい気持ちは一変した。
…敵襲だ。
「うぅ…くっ…」
じりじりと距離を詰めながら、睨み合う。そいつも息を殺すかのように静かに…だけど、確実に翡翠のことをじっと見ていた。
ちょっとでも隙を見せたら…やられる。
ゴクリ、と喉を鳴らす翡翠。
さらに、睨み合うこと数秒。
…先に動いたのは、ヤツのほうだった。
別に向かってきた訳じゃない。
けど!!
カサカサッと少し動いただけで喉から心臓が飛び出そうになる。はっきり言って、攻撃力抜群だ。
「いやぁぁぁぁっ!無理!絶っ対無理っ!!!!」
叫び声を上げると共に手にしていたモノをぎゅっと握りしめた。手にしたまま固まっていた… スリッパを。
こちらもいつでも攻撃できるように、高く振り上げたまま固まり、結局振り降ろすことはできないままだ。
「にっ、日本のお母さん!これでゴキ○○を叩くなんて絶対無理よ~っ!!」
昔、母がそうしていたのを真似て手近にあったスリッパ(ピンクのファー付き)を振り上げてはみたものの…到底振り降ろすことなんて出来ない。
だって!
もしも振り降ろした瞬間にヤツが避けて、復讐と言わんばかりにこっちに向かって飛んできたら?
万が一、うまく叩けたとしても誰がそのスリッパを片付けるの??
私??そんなの無理に決まってるっ!
よりにもよって、何でいつも私が出入りしている仕事部屋に出るかなぁ、コイツは!!
一人興奮の中、鼻息も荒く、さらに睨み合いは続く。その時だった。
大きな扉がシュンッと軽い音を立てて、開いた。
『……………』
「ん?」
『…何してるんだ?翡翠』
振り向けば、そこにいたのはアイアンハイド。
スリッパを振り上げたまま固まっているという怪しい姿を見降ろし、呆れたような口調。
なんてグッドタイミング!
まさに神様、後光すら差しているように見えた。
「アイアンハイドッ、ちょうど良いところに!!」
『なっ、何なんだ!?』
ロボットモードのアイアンハイドの大きな足の後ろにささっと隠れる翡翠。
「あれっ!あれを退治して欲しいのっ」
『何だ?』
「ほら、そこっ!そこにじっとしてるのがいるでしょ」
その黒光りしている不気味な姿を震える指先で指し示す。
アイアンハイドの目にもようやく映ったのか、彼は興味無さそうに『あぁ』と小さく呟いた。
『たかが虫だろう?』
「なっ…!!」
『何だ、その怯え様は』
「虫だなんてそんな可愛いものじゃないんだってば!あれは悪魔よっ!!」
翡翠の必死の形相にアイアンハイドは小さくため息をつく。
ええ、ええ…怖がりでごめんなさいね、本当に。
でも、仕方ないじゃない…ホントに、ものすっごく!怖いんだもんっ!!
だけど今、心の底から思う。
「本当に、アイアンハイドが来てくれてよかった」
『俺は、オプティマスに言われて翡翠を呼びに来ただけだ』
「あ、そうなの??」
『あぁ…』
下から見上げる翡翠に対して、アイアンハイドはふい、と顔を背けてしまった。
アイアンハイドが照れている時によくする仕草だって、最近ようやくわかった。
ふふ、と微笑む翡翠にふん、と鼻を鳴らすアイアンハイド。
キュルキュルキュル
その時、あたしの耳に妙な音が届く。
「…ん?」
何となく嫌な予感がして、もう一度彼を見上げると思いっきりキャノン砲を部屋の片隅に向けて構えている。
『下がってろ』
「ちょっ、ストップストップ!!!」
『今度は何だ?』
翡翠が止めたことが心外だ、とでも言わんばかりの口調でアイアンハイドが見降ろしてくる。
今、キャノン砲打とうとしましたね??
そんなモン使ったら確かにゴキ○○も昇天するだろうけど、まわりにある重要書類も一緒に木っ端微塵だ。
…怒られる。それはもう半端じゃなく怒られる。
翡翠には、一瞬レノックス&オプティマスに思いっきり正座をさせられている自分のデジャヴが見えた…
「そっ、そんなモノ使ったらココまで壊れるでしょうが!!」
『コイツを始末しろ、と言ったのはお前だろう。俺には他に武器などない』
「…つっ、使う…??」
えへ、とか笑いながら持っていたスリッパを見せるとアイアンハイドの額に血管が浮かんだ。
うん、金属の体でそんなモノ見えるはずがないのに、今絶対見えた!!!
『使えるか、そんなモノ!キャノン砲を使わずに一体どうしろと』
「っぎゃぁぁぁ!飛んだぁぁぁぁ!!!」
どうしようもない押し問答をしている隙にゴキ○○が飛びかかってきた。
→ゴキ○○の先制攻撃!
→翡翠に100のダメージ!!!
…翡翠の頭の中に、とっさにそんなテロップが流れては消えていく。
飛んだ姿を見ただけで、受けたダメージは計り知れない。ヤツは今、壁にペタリとくっ付いたまま…再び沈黙を守っている。
『…おい、大丈夫か?』
「大丈夫じゃない…これじゃ仕事も出来ないよ…」
ぐす、と思わず鼻を啜ってしまう。
自分よりも何倍も何倍も小さな相手なのに、その存在が怖くて仕方がない…そんな自分が情けない。
軍人ではないけど、これでも軍事施設で働いているのに…情けない。
その時、アイアンハイドが小さくため息をついたのが聞こえて、恨めしそうに遥か頭上にある彼の顔を睨みつける。
「…何よ?」
『い、いや』
「何でもない、って顔には見えないけど」
『そんなことはない、気にするな。…ただ…』
「ただ?」
珍しく言葉を濁すアイアンハイドに首を傾げた。また、一瞬だけその青い瞳と目が合う。
『ただ、お前も女なんだな、と…思っただけだ』
「…へ?」
普段なら間違いなく「何今更当然のこと言ってるのよ!!」とか、「それって微妙に失礼じゃない?」とか。
そんな憎まれ口を叩いていただろう。
なのに、今日はどうしてかな…
自分でもびっくりするくらい、今真っ赤な顔をしているはず。
ポカン、と口を開けたままの翡翠の前に再びアイアンハイドがズイ、と立ち塞がった。
『やはり、俺が片付ける。下がっていろ』
「…う、うん…」
不覚にも、ちょっとだけ…
かっこいいなぁ、なんて思ってしまった。
「でもアイアンハイド、キャノン砲はダメだか、ら」
『…照準を最大限まで絞る。やったことはないが、問題はないだろう』
不安げに見上げる翡翠の頭をアイアンハイドの武骨な指がそっと撫でて行く。
小さく頷く彼に、翡翠は思った。
…任せよう、アイアンハイドならきっと大丈夫だ。私を助けてくれる。
大袈裟かもしれないけど、ものすごく頼もしく思えて…
翡翠は一歩下がると、目をつぶって耳を塞いで…衝撃に備えた。
フーバーダムに大きな音が響き渡る。
そして、その後。
翡翠は駆け付けたレノックスにしこたま怒られた。
アイアンハイドもオプティマスに引っ張って行かれたから、きっと怒られているんだろう。
返す言葉もなく、黙って正座をし続けるしかない。やっぱり、というか何というか…
資料室の壁に大穴を開けてしまったんだから。
それでも、アイアンハイドの配慮によって重要書類は死守されたけど…それでも壁に大穴は怒られて仕方ないと思う。
でも、ね…
「平気な人には、ヤツの怖さがわからないのよ…」
すん、と鼻を啜りながら翡翠はそんなことを呟いた。
そしてアイアンハイドに会ったら言おう。
助けてくれてありがとう。
カッコよかったよ。
でも、キャノン砲禁止令は発令させていただきます
…って。