Optimus
夢小説設定
この小説の夢小説設定本人曰く、至って普通の20代日本人。
国防長官ジョン・ケラーと面識があったため、大学院卒業後すぐ彼によって就職先を斡旋され… 現在人類と金属生命体の緩衝材として軍地基地に勤務中。
「私はジョンに騙されたの!!」…とのこと。
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「飲むか?」
突然目の前に差し出された缶コーヒー。
見上げた翡翠の瞳に映るのはレノックス。
「頂きます」
「ん」
手渡されたソレを一口含む。
いつも楽しそうに話をしている彼女が比較的無口な時、それは大抵疲れているか、眠いか、怒っているかのいずれかだ。
今回の場合は、おそらく…
「機嫌、悪そうだな」
「…わかります??」
ふぅ、と小さく息をついた後、そう言いながら笑う翡翠。しかも、二ヤリ、と。
なかなかの迫力だ。
「何があったかは、聞かない方がいいのかな?」
「いえ、是非聞いて下さい。むしろ相談に乗ってください!レノックスさん!!」
「っま、まぁ、落ち着け」
立ち上がりガシッと自分の両腕を掴んでくる翡翠。
そして、珍しく至近距離でジッと目を見つめてくる彼女を見て、レノックスは思った。
…捕まった、と。
「つまりだ、熱烈な求愛を受けて対応に困ってる…ってことか」
「おおまかに言えば、そうなります」
レノックスは思わずガシガシと頭を掻いた。
一番苦手な類の相談だ。
「喜ばしいことなんじゃないのか?好かれるってのは」
何とも答えようがなくて、そんなことを言ってみるが、当然翡翠の表情は冴えない。
どこかむくれているようにすら見える。
普段から彼女はどちらかと言うと温厚なほうだ。余程のことがない限り、今回のように不機嫌になったりはしない。
例えご機嫌斜めになったとしても一点集中型…尾を引かないタイプなのだが。
「そりゃ、嫌われるよりは好かれるほうがありがたいなぁ、とは思いますけど…」
「それじゃ納得しないのか?」
「……………」
「翡翠?」
「時と場合によって、色々あるんです」
顔を覗き込むようにして聞き返すレノックスに翡翠は一瞬沈黙して…
小さくそう答えた後に顔を背けてしまった。
余程虫の居所が悪いらしい。
ふと、レノックスは考えた。
これほどまでに彼女の機嫌を損ねるようなアプローチをしたのは一体誰なのか。
軍人ではないにしろ、施設で唯一の女性である翡翠。
そのうえ、容姿も整っている部類に入るであろう彼女を射止めたいと思っている輩は多い。
その時、そういえば…と思い立った。
彼女は日本人だ。
よくアメリカ人の直接的な愛情表現は恥ずかしくてたまらない、と言っていた。
さては、どこぞの誰かがまた彼女にそういう言葉をかけたんだろうな。
そう思うと、やけにその考えがしっくりと来るような気がした。
さて、どうしたものか…
レノックスが口を開こうとした瞬間、翡翠の表情が変わった。
「…来た…」
「なに?」
ふと耳をそらせば、何やら足音が聞こえてくる。
大きな大きな足音…こんな巨大な足音を響かせることが出来るのはオートボットの誰かしかいない。
「…まさか」
巨大な扉を軽々と開き、入ってきたのは…
『翡翠、ここにいたのか』
オプティマス・プライムだった。
挨拶をするオプティマスに対して、珍しく翡翠は無言のまま。
いやいや、いくらなんでも彼ではないだろう。
そう思いながらチラリと翡翠を見てみるが…その表情は今まで以上に不機嫌極まりない。
「司令官…私にばかり構っていたら、仕事も溜まり放題なんじゃないですか?」
『その心配は無用だ。我々は意図して睡眠を取る必要性がない。翡翠が眠っている間に十分時間はあるのだ』
「…そう、ですか」
これはもしや…ビンゴか?
俄かにそんなことを思って、何だかハラハラしてしまうレノックスの目の前で、オプティマスは翡翠の前まで歩み寄ると静かに片膝をついた。
『翡翠、考えたのだ…聞いて欲しい』
「…一体、何を?」
『数日で構わない。休暇をもらい、共に日本に行こうではないか』
「…え?」
今度は一体何を言い出すのだ。
翡翠のキョトンとした表情からそんな感情が滲みだしているのがレノックスにはひしひしと伝わってくる。
不穏な空気だ。
逃げ出したい。
出来ることならば、ココにいたくない。
だが、あっさりとその場を立ち去ることも出来ないまま、ただ茫然と2人のやり取りを見守る。
「な、何でまた突然日本に?」
『君の故郷に興味があるのだ』
「まぁ、アメリカとは結構違うところが多いから面白いかもしれないけど」
『うむ。それと、まだ大切な用がある。君のご両親にご挨拶をしなければ。』
「「…ぶっ…!!?」」
思いもよらないオプティマスの爆弾発言に翡翠とレノックスは同時に吹いた。
「オプティマスッ、そんなこと何処で…」
『インターネットで調べたのだ。翡翠と一生添い遂げるための第一歩は、まずご両親へのご挨拶からだ』
「…ダメ、めまいがする…」
「翡翠!気持ちはわかるが、しっかりしろ!」
クラリとよろめく翡翠を思わず後ろから支えるレノックス。
一体、何をどう調べたら、そのような極論に達してしまうのか。
…不憫だ。
これでは翡翠がさすがに不憫だ。
そして思う。
このオートボットの総司令官、オプティマス・プライム。
仲間からの信望は厚いし、人間との共存を願い、この惑星を想いやり、慈悲深く、心の広いヤツだというのはもう十分熟知している。
だが…もしかして、ちょっぴり・・・いや、これはかなり天然なのではないか。
「オプティマス、貴方色々と順序が間違っていますよ!」
『いや、翡翠を想う私の気持ちに偽りはない』
「だからっ、そういうことじゃなくて~」
片膝をついていても尚見上げなければならない程の大きさのオプティマスを翡翠はキッと睨む。
「いいです、わかりました。じゃあ、この際色んな矛盾は一旦置いといて」
「い、いいのか?」
思わず突っ込んでしまったレノックスだったが、切羽詰まっている翡翠に睨まれ、とりあえず黙ることにした。
小さな声で「すまん」とだけ答えて。
レノックスの小さな声が聞こえたのかどうかはわからないが、翡翠の瞳が再びオプティマスへと向けられる。
そして両手を腰に当てて、胸を張った。
「だいたいですね、数日で日本に行って帰ってくるなんてはっきり言って無理です!」
『空路を使えば何とか』
「ココの軍用機を貸してもらおうって言うんでしょう?それが無理って言ってるんです」
『何故だ?』
「あぁ、日本は自衛の国だもんな。確かにいきなり軍用機が日本の領空を飛んだりしたらそれこそ大騒ぎだ」
「そう。国際問題になります」
『う~む』
顎に手を当て、考え込むオプティマス。
対する翡翠はふふん、とにんまり笑っている。
だが次の瞬間…
オプティマスのカメラアイがキラリと光った。
『こうなったら背に腹は代えられん』
「ん?」
『私がメガトロンに頭を下げよう!それならば時間は要さない』
「…なっ…」
どうやら、オプティマスの思考回路はとんでもない結論に達してしまったらしい。
「〜〜〜〜っ!!オートボットのリーダーともあろう人が、いくら“元”とはいえ敵のボスにほいほい頭を下げないでください!!」
『私の立場やプライドよりも、君との未来のほうが大切ではないか』
「な…」
『皆も理解してくれるはずだ』
きっぱりと言い切るオプティマス。
その正面で握りしめた両手がフルフルと震えている翡翠。
「これ、意中の相手に同じ台詞を言われたら、感無量ってやつだよなぁ…」
レノックスはそんな率直な感想を述べてみたが、どうやらすでに翡翠の耳には届いていないらしい。
彼女の反応を見て、実は満更でもなく思っていたりするのでは…とも思ったが、それは口にしないでおく。
怖いから。
「メガトロンだって戦闘機じゃないですか!日本の空を飛ぶなんてとんでもない!!」
『では、スタースクリー』
「F22だって思いっきりアウトよっ!!」
『しかし!それでは翡翠のご両親へのご挨拶がっ!!』
「せんでいい!菓子折りまで、どっから持ってきたんですか!!」
いつの間にかオプティマスの手に持たれていた小さな菓子折りにまで盛大に突っ込む翡翠。
その姿を見てレノックスは思う。
この2人…なんだかんだ言って、結構お似合いなのではないか…と。
当然、そんなことは口には出さないが。
怖いから。
だが、それでも思わず口元が弧を描いてしまう。
目の前では、今もオプティマスが『会うときはきちんとヒューマンモードになるから』とか、翡翠が「そういう問題じゃない」とか言い続けている。
何だか今ではそんな様子も微笑ましく映るのだが…
そんなことは到底言いだせず、完全に退室する機会を逃した…とその場で苦笑いをするしかないレノックスだった。