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夢小説設定
この小説の夢小説設定本人曰く、至って普通の20代日本人。
国防長官ジョン・ケラーと面識があったため、大学院卒業後すぐ彼によって就職先を斡旋され… 現在人類と金属生命体の緩衝材として軍地基地に勤務中。
「私はジョンに騙されたの!!」…とのこと。
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その日、翡翠はご機嫌だった。
別段特別なことがあった訳ではない。
ただ、レノックスに提出したデータが一発で採用されたり、天気が良かったり…そんな小さなことですら軍事基地に身を置いている今となっては嬉しいこと。
『翡翠、そろそろ着くよ』
「はいはぁい」
車の中にそんな声が響いて、翡翠は明るく返事をしながらシートに沈めていた体をゆっくりと起こした。
広い基地内を移動する際、こうしてよく乗せてくれるバンブルビー。
翡翠としてもありがたいことだし、バンブルビーにとっても大好きな翡翠と2人っきりの時間は貴重で自ずと上機嫌になる。
滑るようにバンブルビーが停車し、扉を開く。
「ありがとう」とお礼を言って降りると同時にカマロからロボットモードへと姿を変えたバンブルビーが『どういたしまして!』と返してきて、思わず笑顔になった。
「…何だか、珍しく静かだね。今日は皆任務に出ているんだっけ?」
『ううん、そんなはずないんだけど』
おかしいなぁ…と言いながら辺りを見回すバンブルビー。
いつも、賑やかなオートボット格納庫。
それが今日に限って何だか静まり返っていて…翡翠は首を傾げた。
その理由はすぐに明らかになる。
「…ん?」
バンブルビーと並んで格納庫を進んで、少し奥まで来た時。
目に入ったのは白銀と深紅の装甲。
こちらには背を向けた状態で何やら話をしているらしい。
なるほど…この2人が静かだから、やけに格納庫が静まりかえっているように思えたんだ…
そんなことを考えながらバンブルビーと翡翠、思わず目を合わせて肩を竦めた。
『サイドスワイプ、ディーノ、何してるの?』
『…っと、ビーかよ』
『おっ!翡翠も一緒じゃねぇか、良いとこに来たな』
「え?何の、こ、と…」
一瞬キョトンとした翡翠だったが、振り返ったサイドスワイプとディーノを見て瞬時に全てを悟る。
そして…
「嫌です」
きっぱりとそう言って除ける翡翠に何故か目の前の2人は衝撃を受けていて…
『なっ…』
『おいおい、まだ何も言ってないぞ』
「言われるまでもなく悟りました!」
そう言って、そのままバンブルビーの後ろにささっと隠れる翡翠。
『え、えっ…?』と何やら戸惑っている声が頭上から聞こえてくるけれど、今はそれどころではない。
『たったこれだけで全てを悟るって…お前、一体ココでどんだけ苦労してんだよ』
「ディーノが来る前から、色々あったの!」
『へぇ?』
二ヤリと笑うディーノ。
何かを言われてしまう前に、翡翠はその視線を横にいるサイドスワイプへと戻した。
正確には、サイドスワイプが手にしているモノへと。
「何でそんなもの持ってるのよ~、変態!」
『っおいおい!そりゃあんまりだろうが…俺はお前のためを思ってわざわざ』
「カーリーさんに借りてきたの!?」
『…そこまでお見通しか』
半ば呆れたように両手を上げるサイドスワイプに翡翠は今も警戒心全開の眼差しを向ける。
そのシルバーの大きな指に摘ままれるかのように持たれているのは…1着の服。
シンプルなデザインだが、一目でわかる。
あれは間違いなく体のシルエットが丸見えになるタイプだ!!
その時、バンブルビーの足の影から顔だけを出して警戒心を募らせる翡翠のすぐそばにディーノが無言で歩み寄り、しゃがみ込む。
「っ…」
いきなり顔を近付けられて、一瞬怯んでしまうがグッと堪えた。
『お前なぁ、たまには色気の1つも出してみろよ』
「何言ってんの…だいたいね、人には似合う服と似合わない服っていうのがあるんです!」
『んなもん、着てみないとわからないだろうが』
そう言いながら、ズイッと持っていた服を指先で摘まみつつ…サイドスワイプが近付けてくる。
普段から『人間の持ち物は小さくて掴みにくいし、力加減が難しい』と言っていたくせに、どうしてそういうものは器用に持つことができるのか。
あれがカーリーの持ち物でなければ「力加減を間違えて破けてしまえ!!」と叫びたい。
『いくらココが軍事基地だって言っても、お前は女だろ?』
「それは、そうだけど…」
正直、普段は基地内で動きやすいように迷彩服のつなぎを着ていることがほとんど。
たまには女性らしい格好をしてみたい気持ちは翡翠にも、もちろんある。
だけど!!
「…でも、やっぱりそれはダメだわっ!」
一度、チラリ…とサイドスワイプの持っている服に目を向け、そして盛大に逸らす。
尚も『何でだ』と口を揃えて言ってくるサイドスワイプとディーノに頭を抱えたくなった。
翡翠は隠れていたバンブルビーの後ろから飛び出すと、思わず両手を握り締める。
「そっ、そういう服はね!スタイルが良い人じゃないと似合わないの!こう、胸が大きくて…ウエストがきゅっと締まってて」
『はぁ?何言ってんだ…そういう翡翠だって結構胸あるじゃねぇか』
「っ…!!?」
とんでもない一言と共に目の前にしゃがみ込んだディーノのブルーの瞳が一瞬深い蒼に光ったのを翡翠は見逃さなかった。
「きゃぁぁぁ!エッチ!!!」
ものすごく速さで再びバンブルビーの背後へと隠れてしまう。
一体何をスキャンしようとしたのか…もう想像すらしたくない!!
「もう!2人共知らないっ!!ビー!」
『えっ…な、なに?』
何故か顔を真っ赤にした翡翠に足元をぺしぺしと叩かれ、キョトンとするバンブルビー。
視線が合うと同時に「トランスフォームして、お願い」と言われ首を傾げつつ言われた通りにする。
カマロへと姿を変えた途端、中へと乗り込んでくる翡翠に言われるまま…その場を走り去った。
『あ~ぁ、行っちまったぞ』
『…そんなに嫌がることか?』
『さぁな』
目の前からカマロが走り去っていくのを2人並んで眺める。
あくまで自分たちは良かれと思ってやったこと…翡翠にああまで拒絶される理由がわからない。
確かに…普段翡翠が絶対に着ないような服なのは理解しているし、露出が多い彼女の服装を見てみたい…という気持ちがないわけではないが。
でも、似合うだろうと確信しているのも事実な訳で…
『『はぁ…』』
2人揃って、思わずため息をついた…その時だった。
『サイドスワイプ、ディーノ』
後ろから声をかけられ、振り向くと奥から現れた一台のトレーラーが目の前でみるみる姿を変えていく。
『オプティマス』
『何かあったのか?今、こちらから翡翠の悲鳴が聞こえたようだが…』
『あぁ、いや…』
自分の上司に当たるオプティマスから直接そう聞かれ、サイドスワイプはどうしたものかと一瞬考える。
特にオプティマスは翡翠のことを大切に扱っており、その接し方はすでに溺愛に近い。
悪いことをしたとは思っていないが、場合によっては彼の怒りに触れるかもしれない。
そう思って思案していたのだが、隣にいたディーノが一歩進み出る。
『翡翠に女性らしい格好を勧めたのですが、どういう訳か逃げられてしまって』
『逃げられた?』
『ええ、俺たちの勧め方が悪かったのか…照れてしまったのかもしれませんね』
ディーノの言葉に『う~む』と何か考える素振りを見せつつ、サイドスワイプの手にしているカーリーの服へとチラリ、とカメラアイを向けた司令官、オプティマス・プライム。
誰もが彼の次の言葉を固唾を飲んで見守った。
『何故逃げてしまったのだ…彼女になら良く似合うだろうに』
そう言いながら首を傾げているオプティマスにディーノが続ける。
『俺たちは彼女との付き合いが長くない。貴方にも協力してもらえると助かります、オプティマス』
『わかった。私からも説得してみよう。彼女は大変仕事熱心で頼りになるのだが、確かに女性としての一面も大切にしてもらいたいものだ』
ゆっくりとオプティマスが頷いた。
その言葉の中に“女性らしい服装に身を包んだ翡翠を見てみたい”という私情が混じっていたかどうかは、彼のみが知るところだが…
かくしてオプティマスが仲間になった。
その後も翡翠とバンブルビーを探して基地内を移動している最中に出会ったオートボットたちが次々と賛同していく。
『へぇ、良い考えじゃねぇか。翡翠の生足ってのは貴重だな』
口笛まで吹きつつノリノリなジャズ。
『ふむ。実に興味深いな、そういう服装に身を包めば女性特有のホルモンも活性化するだろう』
『良い研究が出来そうですね』
『やはりジョルトもそう思うかね』
『はい、先生』
何やら怪しい密談をしつつ参戦するラチェット、ジョルトの医者コンビ。
『サイドスワイプ…何をくだらないことを』
『だが、アイアンハイド。ここまで来て引けないだろう』
『…ったく。これが済んだらしっかりと訓練しろよ…さっさと終わらせるぞ』
ため息をつきつつも、弟子であるサイドスワイプの言葉に折れるアイアンハイド。
『いいじゃん、面白そうだ!』
『鬼ごっこだな!いや、かくれんぼか?』
『気を抜くなよ~、向こうにはバンブルビーがいるんだからな!』
『一筋縄ではいかないってか?望むところだ!』
すでに目的を履き違えてはいるものの、やる気は十分のツインズ。
『へぇ、素敵な思い付きね』
『そうね、私も翡翠の毎日つなぎっていう格好はちょっと気になってたのよ』
『どうせなら、もうちょっと露出があってデザインの凝ってる服でもいいんじゃない?』
『『賛成!』』
女性目線から翡翠を見つつ、何やら一番危険な発言のアーシー3姉妹。
もちろん参戦。
結果、ものの数分で全てのオートボットがオプティマスの元に集った。
『これより翡翠の説得に向かうが、決して強引になってはいけない…彼女を警戒させるだけだからな』
『まぁ任せろ。女ってのは褒められて伸びてくモンだろ?その辺は俺の出番だな』
『『『同じ女性としての推薦なら私たちに任せてちょうだい』』』
それぞれ案を口にするジャズ、アーシー3姉妹にオプティマスは静かに頷いた。
途中、『どうしても翡翠が納得しない場合は麻酔で眠らせてその間に着替えさせる…という手もあるが』というラチェットの荒療治を却下することも忘れていないが。
『では行こう…オートボット出動!』
司令官であるオプティマスの号令と共に一斉に翡翠を探しに散っていくオートボットたち。
その頃。
「…サイドスワイプもディーノも強引だよね、バンブルビー」
『う~ん…でも、おれもあの服、きっと翡翠に似合うと思うけど』
「もう…ビーまでそんなこと言う」
『だって本心だし』
のんびりとそんな会話を交わす2人はまだ気付いていなかった。
オートボット全員が1つの目標を胸に動き出していることに。
このあと。
いち早く異変に気が付いたバンブルビーとオートボットたちの壮絶なカーチェイスが繰り広げられることとなる。
普段は広大でも、カーチェイスするには狭いくらいの基地内の至るところで翡翠の悲鳴が響き渡った…とか。