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夢小説設定
この小説の夢小説設定本人曰く、至って普通の20代日本人。
国防長官ジョン・ケラーと面識があったため、大学院卒業後すぐ彼によって就職先を斡旋され… 現在人類と金属生命体の緩衝材として軍地基地に勤務中。
「私はジョンに騙されたの!!」…とのこと。
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ある晴れた心地の良い昼下がり。
そんな晴れ渡った空、高鳴る胸…とは裏腹に、翡翠は今、自分の発言を猛烈に後悔していた。
『問題が起きたのだ』
そう切り出したのはオプティマス。
思わず「問題だなんて大袈裟よ」と口を出せば『君は楽観視している』とビシッと返され…もう黙るしかない。
いや、黙っている方が得策だと瞬時に察した。
目の前に召集されたオートボットの面々をグルリと見回してから、オプティマスが重々しく口を開いた。
『実は、翡翠のことで皆にも相談したいことがあるのだ』
『何だよ?そんなに改まって』
『うむ』
静かに頷いたオプティマスが発するであろう言葉を思い、翡翠は思わず視線を逸らした。本当ならば、今すぐにでもこの場から立ち去りたい。
だが、今翡翠の腕は後ろ手にまとめられ…事もあろうに黄緑色の軍医によって捕えられている。
別に痛いわけではないのだが、抵抗できない。
抵抗なんてすれば、すかさず『暴れないでくれたまえ。私としては新しく開発した麻酔を試してみてもいいのだが…』なんて言われそうな気がしてならない…
『良くないことなのか?オプティマス』
『…確かに、あまり喜ばしいことではない』
『だから、何なんだ。さっさと言え、オプティマス』
話を聞きながらも武器の調整に余念がないアイアンハイド。
その彼ががちゃっとキャノンを腕にはめ込む音と、オプティマスの言葉が重なった。
『実はな…翡翠が突然車を買う、と言い出したのだ』
きっぱりと言い放つオプティマスの言葉が格納庫に響いた。
わざわざ召集までされて、司令官から直接何を言われるのだろう…とオートボットの面々は身構えていたはず。
ほらね、大したことじゃないでしょ?
そう反論しようと思って、顔を上げた翡翠だったが…思わず絶句してしまった。
『……………』
『……………』
『……………』
『……………』
「………え?」
揃いも揃って、まるでフリーズするかのように微動だにしない4体のオートボット。
いやいやいや、何でそんな反応になるわけ!?
『~~~っ、おい!!』
「へ?」
思わずキョトンとしながら翡翠が顔を上げるとジャズがすぐ目の前に迫り…何故か焦っていた。
私用車を持たない翡翠が街に出る時など、今まで同行していたのは主にジャズだ。彼のビークルモードは街の中でも目立つことなく溶け込むことができるから。
『翡翠っ、そりゃあんまりじゃねぇか!』
「ご、ごめん、でもね…」
『俺に飽きたのか?俺を捨てんのかよ!?』
「ちょっ…!?やだ、人聞きの悪いこと言わないでよ!」
『っ…!!?』
何故か雷でも落ちたかのように衝撃を受けているジャズ。
翡翠の真上でラチェットが『哀れな…』と小さく呟いていたが、翡翠にはよくわからないまま。
『それにしても、急にどうしたの?』
「ビー…急にって、訳でもないんだけどね」
理由としては簡単なもの。
せっかく免許を持っているのに…と思ったのと、やはり出掛ける度に誰かに同行してもらわないといけない…というのは申し訳ないから。
それと、自分で運転してみたい、という気持ちも少しあった。
以前、それとなくジャズに申し出て、運転させてもらったことはあるが…それでも、“彼”に乗っていることに変わりはなくて…
ほんの少しカーブでハンドルを切るのが遅れた際に『危ねぇ』と運転の主導権をあっさり持っていかれたことがあった。
別に、そのことを根に持っている訳ではないけど…ブツブツ…
『ジャズが嫌なら、おれが送り迎えしてあげるよ?』
その一言がジャズにとどめを刺していることに全く気付いていないところがバンブルビーらしい。
無邪気な彼の言葉に思わず笑って、静かに首を振った。
「そういうことじゃないのよ、ビー。それに貴方にはサムがいるでしょ?」
2人は無理よ、と告げるとバンブルビーも否定は出来なかったようで…かわりに“きゅうん”とラジオが鳴った。
思わず、その可愛さに心臓を鷲掴みにされてしまうが…今はそれどころではない。
今も、背後には黄緑色の悪魔が立っている。
『別に私たちに気を使うことはないのだぞ?』
「そういうんじゃ…」
『何なら、私も君の買い物に同行するようにしよう』
『あぁ、俺も協力するぞ。同行する任を分散させれば俺たちに気を使うこともなくなるだろ』
そう申し出るラチェットとアイアンハイドに翡翠は静かに首を振った。私は贅沢なんだろうか?
だけどっ!街中で救護車から元気に降り立つのも、軍用車でデパートに乗り付けるのも正直遠慮したい。
「…はぁ…」
はっきり言って、ここまでオートボットたちが難色を示すとは思っていなかった。
逆に、自分で出掛けられるようになったら煩わしくないと喜ばれるくらいなんじゃないか…と思っていたのに。
大きな足が一歩歩み出てくるのが目に入って、顔を上げるとオプティマスが腕を組んでいる。
『翡翠、やはり今回は諦めてくれないだろうか?』
「…じゃあ、いつになったら許してくれるの?」
『失礼だが…君のデータは一般の人間よりも反射神経の面で幾分劣るようだ…危険がないとも言い切れない』
「…意地悪軍医」
『何か言ったかね?』
後ろから低い声で聞き返されて、とりあえず「何でもありません」とだけ即答しておいた。冷たい汗が背中を伝うのを感じつつ…翡翠は最後の手段に出た。
格納庫の壁に腕組みしながら凭れているその人物へと目を向ける。
今、その人の視線は隅っこで項垂れているジャズ…そして、そのジャズを慰めているらしいバンブルビーへと向けられているけど。
「レノックスさん」
「ん?あぁ、何だ?」
「お願いですから、レノックスさんからも何か言って下さいよ」
きっとこの金属生命体の面々は人間社会を知らないから。
だから、私が車を持つことをこんなにも危険なことに感じているんだ!そのことを否定してほしかった。
なのに…
「あ~…そうだなぁ…」
何故か、歯切れが悪い上に、困ったように髪を掻くレノックス。
翡翠が首を傾げると同時にレノックスの申し訳なさそうな声が聞こえてくる。
「実はな、正直俺もお前が車を持って一人で出歩くのは反対なんだ」
「…えっ?」
思わぬ返答に「何故!?」と身を乗り出せばすぐに『落ち着きなさい』という言葉と共にラチェットに捕われている腕をクイッと引かれた。
「今の状況で、翡翠が一人で出歩くことはあまり好ましくない」
「だから、何で?」
「何でって、お前なぁ…」
レノックスが困ったように額に手を当て俯いた。
その行動の意味がわからない翡翠はひたすら首を傾げている。
そんなレノックスに「周りを見てみろ」と言われ周囲をグルリと見回した翡翠だったが…特別おかしなものは目に入って来ない。
「何が見える?」
「何って…変わったものは何も。レノックスさんとオートボットの方々が5人ほどいます」
「そうだ。俺から見れば、翡翠は立派なトランスフォーマーホイホイだぞ」
「人のことをゴ○○リホイホイみたいに言わないで下さい」
確かに、何故か金属生命体には好かれることが多いみたいだけどね!それは認める!!でも、それは私が車を持つこととは関係ないはずだ!!
…そう思った翡翠だったが、すぐに甘かったと思い知らされる。
『レノックスの言う通りだ。我々全員が惹かれる程、君は魅力的なのだ。メガトロンにでも目を付けられたらどうする!』
「いや、有り得ないでしょう」
『そんなことないよ翡翠。おれたちが大好きになった女の子ってだけで、ディセプティコンの奴らはきっと君に興味を持つと思う』
「ビーまでそんなこと言う…」
『ご、ごめん…でも、本当にそう思うんだ』
バンブルビーにまでそう言われてしまえば、何だかしゅんとしてしまう。
はぁ…と思わず漏れるため息一つ。
『翡翠、君のためを思って言っているのだ…分かってほしい』
「…どうしてもダメ?」
どうしても諦めきれない翡翠の上目遣い攻撃が炸裂。
これにはオプティマスも思わず『…う~む』と怯んでいる。
惚れた弱みとは、このことだ。半ば呆れた様子でそんなやり取りを見ていたレノックスがふとそう思う中…沈黙が続いた。
そして、しばらく悩んだ後…オプティマスは重々しく、意外なことを口にする。
『わかった…君に悲しそうな顔をされるのは忍びない』
「えっ…!」
もしかして許可してくれるの!?
一気にパァッと明るい表情になる翡翠。
これには思わずレノックスも壁から背中を離し、組んでいた腕を解いた。
「おいおい、オプティマス」
『お前、翡翠に甘すぎるぞ』
『うむ、それは理解している』
呆れたようにため息をついているアイアンハイドを視界に入れながら、翡翠は意外すぎる展開に心躍らせていた。
司令官であるオプティマスさえ攻略してしまえば、こちらに分がある!!どんな車にしようかな〜…と、思考はすでにまだ見ぬ愛車へと向けられていた。
『ただし、条件がある』
…その一言を聞くまでは。
「…はい?」
『レノックス、政府と交渉できる場を設けてくれないだろうか?』
「…は?」
同時に間抜けな声を出してしまう翡翠とレノックス。
そして2人、思わず顔を見合わせた。
そんな翡翠の頭上からオプティマスの次なる発言…いや、反撃が繰り出される。
『君は好きな車を選ぶと良い。私は政府に預けてあるキューブのかけらを譲り受けて来よう』
「…あの、何のために?」
嫌な予感がする。
絶対に聞いちゃいけない言葉だ!!
そうは思うが、聞き返せずにはいられなくて…
『キューブのかけらを使って、君が買ってきた車をトランスフォームさせる』
「……………」
やっぱり、聞かなければよかった。
盛大に後悔したが…時すでに遅し。
『新たなオートボットとして向かえ、その者を君のガーディアンとしよう』
「……………」
『正義のために使うのだ。これならば政府も説得出来るだろう』
「……………」
唖然とする私の頭上でラチェットまでもが『良い考えだな』と同意し…
目の前ではアイアンハイドが『翡翠の護衛とするなら、それなりの戦闘が出来ないと困るな。俺が鍛えてやるか』とやる気を出し…
バンブルビーも『おれに弟分か妹分が出来るの!?』と喜びを露わにし…
ジャズに至ってはまだ復活できずに項垂れているけど、反対はしていないようで…
とにかく、オートボットの方々は満場一致でオプティマスの提案に賛成のようだった。
「翡翠…お前、どうするんだよ?」
「……………」
近付いてきたレノックスに耳元でそう聞かれた。
どうする…って。
私に残された道はもう1つしか残っていないじゃない!!
「ごめんなさい、諦めます」
泣く泣く、まだ見ぬ愛車への想いを断ち切った。
オプティマスたちはそれはそれで驚いたようで『何故だ翡翠!どちらの意向も考慮した素晴らしい考えではないか!』とか言っていたけど。
ごめんね、私には貴方達の言う“素晴らしさ”が理解出来なかったようです…
それから、翡翠は『何故だ』と迫ってくる彼らから逃れることに数日もの時間を費やすことになる。
そして心に決めたとか。
「…私、もう容易に希望を口に出さないようにする…」
…と。