Jazz
夢小説設定
この小説の夢小説設定本人曰く、至って普通の20代日本人。
国防長官ジョン・ケラーと面識があったため、大学院卒業後すぐ彼によって就職先を斡旋され… 現在人類と金属生命体の緩衝材として軍地基地に勤務中。
「私はジョンに騙されたの!!」…とのこと。
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「ジャズ~、お願いがあるんだけど」
『買い物か?』
「よくおわかりで」
『ったく…仕方ねぇなぁ』
それは、いつもの光景だった。
現在基地に住み込んでいる翡翠だが、非番の日はよくこうして買い物に出掛ける。
食べ物などは軍から支給されているもので十分に事足りるのだが…化粧品などの日用品はやはり自分で選びたいらしい。
「女の子は色々と必要なのよ」
…とのこと。
そういった機会に同行するのは今回同様、大抵ジャズだった。理由は簡単。
町中を走っていても違和感がないからだ。
オプティマスとラチェットは論外。
買い物…と考えるとアイアンハイドもちょっぴり厳しい。
バンブルビーと一緒に出掛けたこともあるのだが、彼はサムの護衛も兼ねているため、基地不在の場合も多い。
「いつもごめんね~」
『別にいいって。俺もそれなりに息抜きしてるしな』
カーステレオから聞こえてくるジャズの陽気な声に翡翠も笑顔になる。
移動手段であり、時に荷物持ちもしてくれる彼だが、どうやら嫌ではないようでホッとする。
「私一人でも大丈夫だと思うんだけどね」
『オプティマスが心配性なのは今に始まったことじゃないだろ』
「まぁ、そうだけど…」
前に一度だけ、一人で買い物に出ていた時に時間がかかって戻るのが大幅に遅れてしまったことがある翡翠。
もちろん、心配をかけまいとレノックスには連絡を入れておいたのだが、暗くなったのをきっかけにオプティマスの心配性が爆発してしまったことがあった…
あんな風に街中をオートボット総出で一斉捜索されるくらいなら…大人しく言うことを聞いて、誰かに付き添ってもらった方が良い。
それが、翡翠の出した結論だった。
…よほど、嫌だったらしい…
『よぉし、ここでいいか?』
「うん」
『んじゃ、ちょっと待ってろよな』
「はぁい」
路肩に車を止め、翡翠を下ろしたジャズが走り出し、近くにあった小道へと車体を滑り込ませる。
待つこと数分。
銀色の髪の青年が小道から出てくる。
サラッと流れる銀髪が印象的な…ヒューマンモードのジャズだ。
『いいぜ』
「じゃ、行こ…っ、わ、何!?」
くるっと踵を返そうとしたその時。
何故か突然ジャズに抱きしめられる翡翠。
ビクッと体が固まる様子をクスクス笑って、ジャズは一度ギュッと抱きしめる腕に力を込めると翡翠から離れた。
「ジャズって、どうしていつもヒューマンモードになって戻ってきたらこうするの?」
『何でって…抱きしめたいから。この姿じゃないと出来ないだろ?』
「だって、街中…」
時と場所を考えなさいよ…と俯きながら呟く翡翠の頭をジャズがポン、と撫でる。
『そんなのアメリカ人は気にしない。目にも入ってないさ』
「私は日本人なんですけど」
『ははっ、まぁここまでの運賃ってことで大目に見ろよ』
「もう…」
笑いながら先を歩き始めるジャズを急ぎ足で追いかける翡翠。
アメリカ人のスキンシップの一つなのに、まだまだ慣れない…小さくため息をつきつつ、前を歩く銀髪を睨みつけた。
それから小一時間。
翡翠の買い物も大方済んだ。
今はカフェに入り、ジャズとの待ち合わせ中である。
「ふぅ~…あ、帰ったら書類チェックしないとなぁ…」
非番の日なのに、ふとした瞬間に仕事のことが頭をよぎるのはもうどうしようもないことだと諦めた。
これも買い物を済ませて、今充実感に浸っているからこそ…だろうとも思うから。
チラリと横の椅子に置かれている戦利品の数々を見て、満足そうに微笑んだ。
「ジャズ、遅いなぁ」
ふと腕時計を見て、小さく呟く。
いつも買い物中は時間を決めて、別行動を取ることが多い。
ジャズも何も買うことはしなくても興味津津店舗を見て回っているから。
きっと、また興味を引かれるようなものがあったんだろう…そう思って、コーヒーを飲んで一息ついた。その時だった。
『だからな?ついてこられても困るんだって』
「ん?」
そんなジャズの声が聞こえて、顔を上げる翡翠。
次の瞬間…コーヒーカップを口に運んだまま固まってしまう。
「え~、じゃあ連絡先だけでも教えてよ~」
『だから、仕事用の携帯しか持ってないから』
「また嘘ばっかり~」
きゃははっ、と笑う高い声が聞こえる。
それにひきかえ…
「…またか…」
思わずそう呟いた自分の声…間違いなく普段の1オクターブは低いだろう。
『お、いたいた。ごめんな翡翠、待たせたろ』
「…だぁれ、この人?」
「……………」
翡翠の姿を見つけ、手を上げて近付いてくるジャズの後ろからひょっこりと顔を出すその女性。
綺麗に巻き髪を作ったブロンドが印象的だが…
翡翠に向けてくる視線には明らかに敵意が含まれている。そんな気がする。女の直感だ。
何だか無性にイライラして、翡翠はガタっと席を立った。
「いいわ。何とか一人で帰れるから」
『なっ、怒ってんのか?』
「さぁね、自分の胸に聞いてみたら?」
そう言って、ジャズの胸をドン、と小突く翡翠。
「ねぇ!誰なのって聞いてるでしょ!!」
『ん?あぁ』
後ろから袖を引かれて、ジャズがブロンドの女性に振り返る。
その横を荷物を持ってスルリと抜けようとした翡翠だったが…それは叶わなかった。
またしても突然のことに体が固まる。
『誰って…俺の愛し~人。だからさっきからそう言ってるだろ?』
「~~~~~ジャズッ!!!!」
『っ、いって』
抱きしめられていたジャズの体を力いっぱい突き飛ばした翡翠は、顔を真っ赤にしながら目の前のジャズを睨みつける。
何だか、嫌だ。
「何するのっ!時と場所を考えてって、いつもあれほど」
『仕方ねぇだろ、この際!助けろよ!』
「知らないっ!!だいたい、自分でナンパした不始末くらい自分でつけてよっ!!」
私は…何をこんなにムキになってるんだろう。
これじゃあまるで、ヤキモチを妬いているみたいではないか。もう、よくわからない。
何が悲しいのかも、何が悔しいのかもわからないが、なんかもう…泣いてしまいそうだ。
翡翠の瞳が潤んでいることにジャズも気が付いたのか、何処か焦った表情になる。
『なっ、何で泣いてんだよ!?』
「まだ泣いてない、まだっ!!」
『どっちにしたって、泣くつもりなんじゃねぇか!だいたい、俺はナンパしてねぇ、逆だっつの!!』
「声をかけられたっていうの?よかったじゃない、綺麗なお姉さん大好きでしょ!」
『お前なぁ…俺だって断ろうとここまで』
「とか何とか言って、結局断れてないじゃない!」
わかってる、ジャズは優しいから。
だから強く言えないんだってことくらいわかってるのに。
ココまで言ってしまう自分にも何だか悲しくなって、ついに翡翠の頬を涙が伝った。
「先に帰る」
『なっ、だから待てって!』
スタスタとカフェを出る翡翠をジャズが慌てて追いかけてくる。
すれ違いざま、さっきの女性に『ホント無理なんだ、ごめんなっ』と呟いて。
『翡翠、怒るなって…笑った方が魅力的だぜ?』
「……………」
『…ついには無視か?』
「なんか私、子供っぽい」
『ん?』
「嫌になっちゃう…」
はぁ、と小さく呟く。
自分のしたことに今更後ろめたい気持ちになってくる。
もっと大人な対応をすればよかったのに…とか。
喧嘩するなら帰ってからにすればよかったのに…とか。
その時、またジャズの大きな手がポン、と頭に乗せられた。
『でも、俺はそんな翡翠が大好きなんだぜ?』
「……………」
無言でジャズを見上げると『嫌な思いさせてごめんな』と謝られた。
小さく頷くと、ジャズがどこかホッとしたような声音で笑うのが聞こえた。
それ以上、翡翠は何も言わなかった。
頭の中では色々考えているが…口に出す必要のないことだから。
そしてその夜。
ラチェットは驚いた。
『どういう風の吹き回しだね?』
翡翠が突然自分のラボを訪れたのだ。
普段は誘った時はもちろん、ましてや自分で足を運ぶなど絶対にしないのに。
あんな危険地帯に足を踏み入れたら、命がいくらあっても足りない…
それが翡翠の言い分だったはずだ。
「…ちょっと、話があるんだけど」
その彼女がそう言って二ヤリと笑う。
ふふふっ、という笑い声まで漏れており、はっきり言って怖すぎる。絶対に何か裏がある。
だが…
『ほぉ…何かね?』
ラチェットは耳を傾けた。
そして、ひとしきり話を聞き終えると…翡翠同様、『面白い』と怪しく微笑むのだった。
その数日後。
突然ヒューマンモードにトランスフォーム出来ないという不具合がジャズに発生。
原因ははっきり言って不明。
もちろん他のオートボットには生じていない不具合にジャズは焦り、他一同は何故だ、と首を傾げる。
そんな中、翡翠とラチェットだけが素知らぬ顔をしていたとか、いなかったとか…。
“ヒューマンモード禁止令”発令。
「ヒューマンモードになった時のあの過剰なスキンシップもなくなって、一石二鳥かな…だいたい、見た目が良すぎるのも考え物だと思う」
まぁ、しばらくの間はこのままで、ね。
…そんなことをラチェットの耳元で囁きつつ、翡翠は至極上機嫌だった、とか。