第2章:遥か、宇宙の彼方より
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『私の知らない彼のこと』
〜夕暮れの恋歌<69>〜
『あ〜、いててて…』
「大丈夫?」
『大丈夫に決まってんだろ、アンタらと違ってオレたちは丈夫だからな!』
『はぁぁ!?お前はオレの後ろに隠れたからだろ!おかげでオレがサイドスワイプの攻撃を正面から受けたんだぞ!』
『何言ってんだ!そりゃお前がトロいからだろ!』
頭のすぐ上で始まりそうな喧嘩を翡翠が「まぁまぁ」と宥める。この2人にとっては、こんなの喧嘩のうちに入らないのかもしれないが…
「2人共、毎日訓練お疲れ様」
まだまだ言い足りないと言った様子のスキッズとマッドフラップではあったが、眼下からそんな言葉をかけられ、少し驚いたように目を見開くと、思わず口を噤んだ。
オートボットの中では一番若く、お目付役が必要ともされている2人にとって、そんな風に言葉をかけられることは決して多くない。そんな言葉を、どう見ても上司たちが一目置いている翡翠が発してくれたのだ。そりゃ嬉しいに決まっている。
『ま…まぁ、オレらだって戦士だからな!強くならなきゃ困るだろ!』
『そうそう!翡翠のことだって、しっかり守ってやるからな!』
『任せとけ』
一瞬、顔を見合わせた後でどこか得意そうにそんなことを話す2人に、翡翠は「ありがとう」と言って笑顔を見せた。
翡翠とツインズ。今この場を通りがかる者がいれば、珍しい組み合わせだ、と言うのかもしれない。色々と誤解があったのだ。初対面ではオプティマスの要人扱いとなっていた翡翠に気付かなかったツインズが彼女でキャッチボールを始めてしまったり、その後のやり取りで何故か翡翠がものすごく強いと勘違いしたツインズに翡翠が徹底的に避けられたり…
今思えば、何故そんなことが…と首を傾げたくなるような誤解ばかりだ。
だが、今となってはそれもすでに過去の笑い話。ツインズと翡翠の性格もあってか、少し距離が縮まってからと言うものの、あっという間に打ち解け、今ではこうして会えば談笑するほどの仲になっている。
他のオートボット達からはツインズがまた無理をして翡翠が危険になるのでは…という心配の声も上がったようだが、オプティマスが容認してからは皆一様に口を閉ざしていた。
「今日はサイドスワイプと訓練だったの?」
『まぁな〜、アイツ素早いんだよな…』
『そうそう!ちょこまかしやがってよ〜!』
ツインズの訓練は、主にサイドスワイプとバンブルビーが付けていると聞いたことがある。目の前でまた悪態をつき始める2人に翡翠はまた苦笑いを見せた。いつまでも一矢報えないことが悔しくて悔しくて仕方がないらしい2人を再び「まぁまぁ」と宥める。
その時、マッドフラップがキラキラと目を輝かせて翡翠へとグッと顔を近付けた。
『ただよ、アイツも翡翠に会いたがってたから、今こうして楽しい時間を過ごしてるオレらは勝ち組って訳だ』
聞けばサイドスワイプは訓練後すぐ、アイアンハイドに訓練に付き合え、と連れて行かれたらしい。今まではツインズに訓練をつける側だったが、アイアンハイドが相手となれば間違いなくその立場は逆転しているのだろう。
『しかも、1人でいる翡翠と…だぜ?』
『やったな、兄弟!』
「……??」
ついさっきまで口喧嘩をしていたと言うのに、今度は頭上でハイタッチをしているツインズに翡翠は不思議そうに首を傾げた。2人の言葉の意味を問えば、いつもオートボットの誰かが側にいることが多い翡翠には近付きにくいのだそうだ。そういえば、普段からオプティマスにラチェット、ジャズやジョルトが側にいてくれることが多い。ラチェットの検診を受けにいくときの送り迎えもそうだし、バンブルビーも基地に帰還している間は暇さえあれば相手をしてくれる。
「2人も、気にしないで話しかけてよ」
『無理無理!オレらが近付こうとしたらスッゲェ圧かけるような目で見てくるもんな!』
『特にジャズとバンブルビー辺りがヤベェよな』
『だよな〜』
え〜…と言う小さな声が口から漏れる翡翠には到底信じられない話だった。ジャズもバンブルビーもあんなに優しいのに、やはり同胞同士では色々あるのか、ツインズに関してはやはり初対面が悪かったのか…
顎に手を当て、わずかに俯くようにして考え込んでいる翡翠。
スキッズはそんな彼女の横にしゃがみ込むと、その表情を覗き込むようにしてわずかに声を落とす。
『なぁ…オプティマスのこともよ、翡翠怖くないのか?』
「…え?」
どこが?と瞬時に聞き返すと、ツインズは2人揃って驚いた顔を見せたので、翡翠もそれと同じくらい驚いた表情を返した。
「えっ…オプティマスって、怖いの?」
『いやいやいや…静かに怒ってるときあるし、ブチギレたらすごいだろ!』
「それこそ想像付かないんだけど!オプティマス、怒ることあるの?」
『………マジかよ』
怒っているオプティマスはおろか、ブチギレている彼など翡翠には到底想像できなかった。司令官として慕われていることや軍をまとめ上げている威厳は十分に感じるのだが、あまりにも優しすぎる彼が戦場で危険な目にあったりはしないのだろうか…と、そんな不安がふと頭を過ってしまうことまであると言うのに…
ポツリ、とそんなことを零した翡翠に絶句している目の前の2体のトランスフォーマーを見る限り、そんな心配は必要なかったらしいが。
「私、オプティマスの戦ってるところって、見たことないの」
いつも守ってもらってばかりいるのに、実際には彼が武器を構えているところさえ見たことがないな、とふと気が付いた。以前、何度も口にしていた『君を怖がらせたくない』と言う彼の言葉が頭を過ぎる。
どんな姿を見たとしても、オプティマスを怖いと思うなどあり得ない…と何度も伝えているのに。
そんなことを考えて、わずかに俯く翡翠の頭上でまたマッドフラップのテンション高めの声が響く。この2人と一緒にいると、気持ちが沈む暇さえ与えられないらしく、今の翡翠にとってはそのことがひどくありがたかった。
『知ってるか?オプティマスって、キレると口がすっげぇ悪くなるんだぜ』
「そうなの!?想像できない!」
『敵には一切容赦ないしな』
「命乞いとかされたら?優しいから、許しちゃいそうだけど…」
『あり得ないな』『あり得ないな』
2人で綺麗にハモる辺りを見ると、余程あり得ないことらしい。普段翡翠と接しているオプティマスからは想像もできない話ばかりだが、彼も戦士であり、やはり司令官と言うことなのだろう。
翡翠にとっては、知らないオプティマスのことを知れるのはとても嬉しくことであり、目を輝かせるようにして2人に話の続きを促したのだが…
不意に、全身が影ったことを不思議に思い翡翠が顔を上げるのと、目の前の2人から『やべっ!』と言う声が聞こえてきたのはほぼ同時だったように思う。
『その辺にしておけ』
低い声の主はアイアンハイドだった。
『いい加減にしておかないと、オプティマスの前に出るたびに顔の心配をすることになるぞ?』
「…え?」
どういうこと?と首を傾げる翡翠にアイアンハイドはただ肩を竦め、誤魔化すような仕草を見せているが…その言葉はツインズには効果覿面だったようで、すぐさま口を閉じている。
キョトンとしている彼女をよそに、元気が有り余ってるようだから…とアイアンハイドがツインズを引っ張っていった。直々に訓練をつけるらしい。サイドスワイプがどうなったのか、大変気になるところではあるが見送るしかできない翡翠は「頑張ってね!」と笑顔で手を振った。
