第2章:遥か、宇宙の彼方より
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『あらゆる可能性』
〜夕暮れの恋歌<64>〜
翡翠にオールスパークの一部が宿っているかもしれない。
ラチェットから直接、そんな報告を受けたオプティマス。
自分が翡翠を巻き込んでしまったのだろうか、とそんな思考に支配されてしまうようだった。
口に出すつもりはないが、ラチェットには気付かれないようにと思い、顔を上げた。何でも自分のせいにしてしまうのは悪い癖だ、と言われるのはわかっている。
わかってはいるのだが…
『…翡翠の身体は、今どういう状態なんだ?』
『検診上は至って健康そのものだ。ただ…な』
『……………』
『彼女の皮膚細胞を取らせてもらい、検査したのだが…結論から言うと、成長が止まっているようだ』
それは、つまり…
『オールスパークを宿したせいで一時的に翡翠の時間が止まっているのか、あるいは、そもそもあの戦いの時に彼女はもう…』
『オールスパークのおかげで生き長らえている、という、ことか…?』
『可能性の1つ、としか言いようがないが…』
結論を淡々と伝えることの多いラチェットも、今回ばかりはどこか悲壮感を感じさせる物言いだった。ラチェットでそうなのだ。オプティマスに至っては、言葉を失っているほどで…無理もない、とラチェットは思う。
ゆっくりと距離を詰めると、自分よりも背の高いオプティマスを見上げるようにして肩に手を置いた。
『どちらにしても、だ。オールスパークの状態には細心の注意を払う。任せてくれ』
『わかった』
『しっかりしろ、オプティマス』
『…わかっている』
何とか絞り出したような声音だった。ラチェットにとって長い付き合いとはいえ、こんなオプティマスは初めて見る。お互い何も言えないまま、時間だけが過ぎていく。
その時、何か考えていたらしいオプティマスが静かに口を開いた。
『…翡翠には、どうする?』
『私の意見では、だが…伝えるべきだろう。辛いだろうが、今後彼女自身が狙われることも十分に考えられる』
何に狙われるのか…ラチェットは明言しなかったが、容易に想像がついてしまう。
今や強大な力を持っていたキューブは失われ、残っているのは小さな欠片のみ…現在は信頼の証として、人間側に管理を任せているが。
残されたオールスパークはその小さな欠片と、翡翠の内に宿っているモノのみなのだ。このことが明るみに出れば、狙われない方がおかしい。現在はラチェットが検診を重ね、ようやく検知できた程度の反応らしいが、今後どうなるかなど誰にもわからない。
翡翠本人が、この事実を知っているのと知らないのとでは、大きく意味合いが変わってくるだろう。
『近いうちに伝えた方がいいだろう』
『……………』
『側にいてやってくれ、オプティマス』
『……あぁ』
小さく頷きながら、オプティマスはそっと頭を振った。
考えがぐちゃぐちゃで、まとまる気配すらない。メモリーの中の翡翠の笑顔だけが何度も目の前にチラつくような気がして、今は眠っているであろう彼女をすぐにでも抱きしめたいと思った。
『で…』
ラチェットの声が聞こえて、顔を上げると同時に肩をポンポンと叩かれる。
『今度はオプティマスの話を聞かせてくれ』
翡翠絡みなのだろう?と続けるラチェットに、そういえば自分にも話したいことがあったのだった、とオプティマスはハッとした。
『いや、私は…』
『何だ?』
以前、翡翠がオプティマスの前で見せた変化はすぐにラチェットへと送信した。話には聞いていたが、オプティマスにとっては初めて目の前で見た翡翠の変化だった。
ラチェットの見解を聞きたかったのだ。
“どうして…貴方ばかりが、悲しい思いをしないと…いけない……の…?”
心ここに在らず…そんな言葉がピッタリと言えるような彼女の表情が今もメモリーに焼き付いている。
その瞳は深い蒼に染まり、その輝きは人間の瞳というよりも、どちらかというと自分たちの瞳の輝きに似ているようにさえ思えてくる。
それほどまでに、深い深い蒼だった。
『…あれも、オールスパークの影響だろうか?』
オプティマスの言葉にラチェットは顎に手を当てながら小さく頷いた。
『その可能性が高いとは思うが…翡翠の変化に関しては、まだ調べる必要がありそうだな』
『……………』
『何がきっかけとなって不調を来たしているのかも、わからないからな…』
そうか、とオプティマスが小さく呟いた。
ラチェットがチラリと盗み見た横顔から、オプティマスの感情は読めない。ラチェットとしても、はっきりしないことを迂闊に口にすることは出来なかった。だが…思うところがあるのも事実。
ラチェットにすら翡翠の言動から思い浮かぶことがあるのだから、オプティマスはどうなのだろう…と。
聞いてみたい気もしたが、オプティマスの様子を見る限り、今これ以上質問をぶつけるのは酷だと感じて、口を噤んだ。
『……………』
ただただ重い空気が、ラボの中に纏わり付いているようだった。
