第2章:遥か、宇宙の彼方より
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返事に悩んでいる…なんて、その言葉は間違っている。
無機質なのに、誰よりも優しい瞳の彼を。
誰よりも大きな体なのに、ひどく穏やかな声の彼を。
人間だとか、宇宙人だとか、そんなものはもうとっくにどうでもよくて…
きっともう、好きになってしまっているから…
『通じ合う気持ち』
〜夕暮れの恋歌<52>〜
カシャカシャ、という彼特有の瞬きの音が聞こえてくる。
続いて、名前を呼ばれたことに気が付いて…その声が普段のものとは違うことに気が付いて…
ハッとした。
『翡翠』
「……っ…!!」
私…今、何言った…!?
ハッとしたところで、既に何もかもが手遅れだ。
慌てて大きな頬にもたれかけさせていた体を起こすのと、足元に大きな手が添えられるのはほぼ同時だったように思えた。
乗れ、ということなのだろう。
ゆっくりと掌へと居場所を移すと、オプティマスは揺らさないよう慎重な手付きで翡翠を自身の正面へと連れてくる。
『翡翠…今のは、本当か』
「…その…」
『私を、好きだと言ってくれたのか』
「……………」
そんなの、ずっとずっと前から好きだった…のだと思う。
気付かない振りをしていただけで、あっという間にオプティマスに惹かれ、恋をしていたのだと。
「私…」
言葉が続かない。
何も考えずに、貴方が好きだ、と言ってしまいたかったけど…
どうしても言えなくて、溢れた気持ちが思わず言葉に乗って溢れ出てしまったのだろう。
色んな言葉が頭に浮かんでくるが、どれも声には出来ないまま。
ブルーのカメラアイにジッと見つめられ、翡翠の瞳は潤むばかりだった。
『翡翠…』
大きな指がそっと翡翠の目元を拭ってくれた。
『私は、君に迷惑をかけてしまっているのだろうか』
フルフルと首を横に振る翡翠。
「…そんな風に思ったこと、一度もない…オプティマスの気持ち、すごく嬉しかったの」
『だが…』
目元を拭ってくれている指をそっと両手で握った翡翠に、オプティマスは少し驚いたように瞬きを繰り返す。
どこか悲しそうに見えるその表情を、翡翠はジッと見つめ返した。
こんな顔をさせたい訳ではない。
大好きな彼には、いつも穏やかに笑っていて欲しいと思う。
「私は…」
『……………』
「私、は…どんなに頑張って長生きしても…あと数十年しか、生きられないの」
『翡翠…』
「きっと、貴方にとっては一瞬のような時間だと思う…」
そう言いながら、翡翠の瞳にはまた涙が浮かび上がってきた。
「いつか必ず、オプティマスを一人にしてしまうから……だ、から…」
だから、一緒にはいられないと思った。
気持ちだけでどうにかなるものではない。
短い人生を全うした後、翡翠はきっと満たされているのだろう、と思う。
それだけの愛で包んでくれる人だとわかっているから…けど、ふと思うのだ。
オプティマスは…残された彼は、どうするのだろう…と。
そんな気持ちが大きくなり、嬉しかったはずのオプティマスの気持ちに返事ができずにいた。
「オプティマスを悲しませてしまう位なら…最初から、今のままの距離を保った方がいいって」
そう思っていた。
そう、自分に言い聞かせていたのかもしれない。
けれど…
「でも私…どんどん欲張りになって…」
『……………』
「オプティマスのことが好きだって…側に、いたいって…」
いつからか、そんな風に思ってしまった。
彼を悲しませたくないと言いながら、自分の気持ちを抑えることが出来ないのだから…なんて自己中心的なんだろう、と嫌気が差す。
堰を切ったように言葉が溢れる翡翠を見つめながら、オプティマスが目を細める。
そして聞こえてきた『ありがとう』という言葉に、翡翠は弾かれたように顔を上げた。
『翡翠が欲張りだと言うのなら、私はもっと強欲なのだろう』
「っ何で…」
『君の人生が私たちよりもずっと短いと知りながら、その全てを欲しているのだから』
「……っ…」
止める術をなくした涙が幾筋も頬を伝っていく。
頬を拭うことも出来ないまま翡翠は言葉が出てこなかった。
自惚れかもしれないけど…ひどく大きなオプティマスの愛情に触れた気がしたから。
『…君を愛している』
こんな風に言ってくれる人は、今までいなかった。
こんな風に、想ってくれる人もいなかった。
「オプティマス…私、貴方の側にいてもいいの?」
『もちろんだ。私こそ、君の側にいさせて欲しい』
両手で包んでいたオプティマスの大きな指を額に当てた途端、ボロボロと涙がこぼれ落ち、彼の手のひらを濡らしていく。
『泣かないでくれ』と言う優しい声と、背中をさすってくれる指の感触に翡翠の涙はますます止まらなかった。
『君の笑顔をいつまでも見ていたいと思う』
「…う、ん」
『翡翠が笑っていられるように、私が君を守ろう』
「…うん」
涙を拭おうとしてくれる指にそっと抱き付いて、何とか笑顔を見せようとしている翡翠。
その顔は涙でぐしゃぐしゃだったけれど、オプティマスの目には美しく…たまらなく愛おしく映っていた。
限られた時間しか、オプティマスとは一緒にいられない。
彼がどこか遠くを見つめるとき、その瞳の奥には、ここにはいない”誰か”がいることもわかっている。
だから、どうかお願い。
私が生きている間だけは…
彼の時間を、私にください。
