第2章:遥か、宇宙の彼方より
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『警戒されている…?』
~夕暮れの恋歌<48>~
翡翠が基地に戻ってきて数日がたった。
今は検査着から私服に着替え、海岸沿いをゆっくりと歩いている。
「うわぁ、気持ち良い…」
頬を撫でていく風に思わず声が出た。
勝手に軍事基地内部をウロウロしてはまずいのはわかっているので、あえて基地内部ではなく海岸まで来てみたのだが…
どうやら吉と出たらしい。
こうして海を眺めていると、今いる場所が軍の施設だとか、日常の生活とは切り離されているとか、そういう現実が一瞬夢なのではないかと思えてくる。
突然休学している状態だし、先日のパーティーだって友人たちには声もかけずに勝手に帰ってきてしまった。心配しているだろうか。
借りたまま、とりあえず鞄に入れて持っては来ているものの、今は自室のクローゼットに掛けっぱなしになっているドレスや靴も近いうちに送り返したい。出来れば謝罪と心配しないで、と一言だけでも手紙を入れたいところだが…果たして許されるのだろうか。
ふぅ、と小さく息を吐いた時、少し離れたところから金属のぶつかり合う音が聞こえてきて…思わず音のする方へと足を向けた。
「あっ…」
大きな岩場を越えた向こうに砂浜はまだ続いていて…太陽の光を浴びた3体の金属生命体のボディーが輝いている。
ひょっこりと顔を出した彼女に気が付いて1体は喜びの声を上げ、2体は何故か怯えたように一瞬体を飛び上がらせた。
『“ヘイ!ガール!”“危ないよ”』
「大丈夫だよ、あれくらいなら」
『“ダメ”“転んだらどうするんだい?”…“どこにだって迎えに行くよ”』
心配しながら駆け寄ってくる黄色い彼に翡翠は笑った。
目の前にしゃがみ込んで視線を近付ける彼の頬にそっと手を触れると、心地良さそうにブルーのカメラアイが細められた。
ふと目が合ったカメラアイに『ラチェットの検査は?』と聞かれた気がして…
「今日はもう終わりだって。検査の時間以外は自由にしてていいって言われてるから」
散歩してたの、と言って微笑むとバンブルビーが小さく頷く。
ラチェットの検診が始まって数日。
採血や皮膚細胞の採取があったのはそれこそ初日だけで…その後は毎日決まった時間にスキャンを受けているだけだった。
これまでとは違い、スキャンにもそれなりの時間を要してはいるものの翡翠も苦痛には感じていない。
「不思議なことにね、ココに来たら目眩も治まってきた気がするの!」
『“それはよかったです!”』
「うん、優秀な軍医様を目の前にして目眩のほうが尻込みしちゃったのかもね」
にこにこしている翡翠は本当に体調が良さそうで…
一瞬蒼い瞳で虚ろに話していた彼女がメモリーの中から浮かび上がってきたが、すぐに打ち消すとバンブルビーも安心したように頷いた。
『“でも”“無茶はしないでね?”』と一言付け加えて。
「ところで、ビーたちはココで何していたの?」
しゃがみ込んだバンブルビーの肩越しにひょこっと顔を出せば、後ろにいる2体の金属生命体がまた小さく肩を揺らした。
何やら2体でヒソヒソと話をしているらしいが、内容までは翡翠に届かない。
「もしかして、私邪魔だった?」と聞く彼女にバンブルビーはゆっくりと首を振る。
どうやら体術の訓練中だったらしい。
そう言った面で広々とした海岸は打ってつけなのだろう。
人目を気にせず、伸び伸びと訓練している彼らを見て、翡翠まで嬉しくなってくる。
「すごいね…ビーが2人に教えてるの?」
ぎゅうん、という駆動音と共に頷くバンブルビー。
「さすがだね!あっ、バンブルビーは勇敢な戦士だってオプティマスから何度も聞いていたの」
翡翠の言葉に、バンブルビーは一瞬驚いた様子で体を揺らし、その後軽快な音楽を流し始めた。何処か照れているようにも見える。
その姿に、オプティマスは普段あまり本人を直接褒めることはしないのだろうか…とすら思ってしまう。
そんなバンブルビーの肩越しから改めて顔を出し、後ろの2人へと翡翠は声をかけた。ただ、「こんにちは」と言っただけなのだが…明らかに戸惑った様子の2人に思わず首を傾げる。
「え、と…」
明らかに警戒されている気がするが、翡翠に身に覚えはない。
あるとすれば…初対面でいきなり2人にキャッチボールよろしく、放り投げられたことだろうか。
「あのっ…」
ゆっくりと近付こうとしたが、距離が縮まったことでツインズの緊張はさらに高まったらしく、思わず1歩後ずさっている2人の様子に翡翠も立ち止まり、曖昧に微笑むことしかできなかった。
僅かに持ち上げていた片手は、ただただ宙を彷徨うばかり…
私…本当に、何かしちゃいましたか…??
(加筆・修正)
