第2章:遥か、宇宙の彼方より
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『初任務?』
〜夕暮れの恋歌<46>〜
輸送機が到着し、基地に降り立つと同時に何処かへ呼ばれていったオプティマスとの再会は、驚く程あっという間に訪れた。
『すまない、迷惑をかけた』
そんな彼から開口一番飛び出た謝罪の言葉に翡翠は慌てて両手を振った。
「だ、大丈夫ですよ!別に怪我があった訳でもないし」
『しかし…それは結果論だ。怪我をしてからでは遅い』
「う、う~ん…」
『私から、よく言っておこう』
オプティマスの言葉には主語がなかったが、その言葉が誰に向けられているのか瞬時に悟る。
「本当に大丈夫だから、きつく言ったりしないで下さい。私も、皆と早く打ち解けたいし」
そう言いながら笑うとオプティマスも『…君がそう言うのなら』と納得したようだった。
言い方がどこか渋々…本当に渋々だったような気がするが、気にしないことにした。
金属生命体でありながら、どこか人間よりも人間味に溢れている彼らに思わず笑みが零れる。
「おーい…もういいかー?」
それは、どこか諦めを含んだような声音だった。少し離れたところで腕組みしていたレノックスが、痺れを切らしたようにため息をついている。
首を傾げる翡翠の目の前で、体を屈めていたオプティマスがゆっくりと立ち上がり、レノックスへ向き直る。
そんな彼からも排気が漏れるのが聞こえてきた。
『…急ぎの案件なら、先程確認したはずだが』
「急ぎの案件だけな。翡翠の悲鳴が聞こえるって、途中で飛び出して行っただろ」
要するに、オプティマスがやるべきことはまだまだあるらしい。レノックスの反応を見る限り、まだかなりの量が…
彼がここに来てしまった理由が理由なだけに翡翠まで申し訳ない気持ちになってきた。
さらにレノックスは、翡翠に歩み寄ると、わずかに体を屈めて耳打ちしてくる。
「それと翡翠」
「はい?」
「返事って何のことだ?」
「…………はい…?」
一瞬、何を聞かれたのか分からなくて、意味を成さない言葉でしか反応できなかった。
レノックスがさらに小さくため息をつく。
「翡翠に返事をもらってない、とか、返事を聞きに行かなければ、とか、ずっと言ってるぞ」
「っ………」
第2のお父さんとすら思っているレノックスから、とんでもないことを聞かれている、と自覚した瞬間、翡翠の全身からブワッと汗が吹き出した。
さらに追い打ちをかけるかのように、頭上からは『大事なことなのだ』との言葉が降ってくる。金属生命体の前では耳打ちも意味をなさないらしい。
どういうことだ?と眉を寄せているレノックスに、『実は…』とオプティマスが口を開こうとしているのがわかって…翡翠は慌ててその足元に駆け寄ると、ファイアーパターンに彩られた足をペシペシと叩いた。
小さな…けれど、確かなその感覚にオプティマスが足元へ視線を落とす。
口元に人差し指を当てて、「しー!」と必死に伝える翡翠。
文化の違いから、オプティマスがその行動をどう理解したのかは分からないが、とりあえず口を噤んでくれたのでよしとした。
思えば、オプティマスに告白されてからこうして顔を合わせるのは初めてだ。
想いを告げてくれた時の彼は、ビークルモードで顔が見えなかったから、こうしてロボットモードのオプティマスを見ていると尚更色々意識してしまって…恥ずかしくなってきた。
そんな翡翠が耐え切れずに視線を逸らすと、オプティマスは再度体を屈めて、顔を近付けてくる。
『翡翠』
「少しだけ、待って下さいね」
何を、とは言わずともオプティマスには通じたようで小さく頷くのが見えた。
『それと1つ、君に頼みたいことがあるのだが』
その言葉に翡翠が顔を上げる。オプティマスから何かを頼まれるとは珍しいな、と思った。
目の前ではブルーの鮮やかな光がカシャカシャと何度か瞬きをしている。
『バンブルビーやジャズとは、随分打ち解けていると報告を受けている』
「…え?」
『アイアンハイドやラチェットとも、“さん”は付けずに呼び合っている、とも』
「そ、そういえばそうかも…」
『私も、そのように接してほしいのだが』
つまり、呼び捨て&何となく使っていた丁寧語もやめてくれ、ということだろう。そう頭では理解できるものの、いざ実施するのは難しいのではないか…そう思い、翡翠は困ったように頬を掻く。
「いやぁ…オプティマスさんは司令官ですよ?立場ある方にそんなことしたら、他のオートボットの方達に何て思われるか…」
『翡翠を悪く思う者はいない』
「ですが、やっぱり…」
『私がそう望んでも、か?』
「…う〜ん」
そういう言い方ははっきり言って、ずるいと思う。
何処か、悲しそうな顔を見せているのも、ずるいと思う。
一体どうするべきか…頭をフル回転させていると「翡翠」と小さく名前を呼ばれた。レノックスだ。
口パクで何か伝えようとしているらしい。
言葉全てまではわからなかったが、内容は何となく理解できた。あれは「さっさとやれ」と言っている…
なるほど、レノックスとしては一刻も早くオプティマスを満足させてこの場から連れ出したいのだろう。
ふぅ、と小さく息を吐いて、翡翠は覚悟を決めた。
「わかり…いや、わかった。これからはそうするね、オプティマス」
これでいい?と目を合わせれば、鮮やかなブルーの双眸がわずかに細められる。
『君に感謝する』
「いえいえ」
たったこれだけのことで、どこか嬉しそうにしているオプティマスを見て、翡翠は何だか心が暖かくなるのを感じた。
再びゆっくりと立ち上がったオプティマスの足の向こうでは、親指を立てグッドサインを出しているレノックスが見えて、笑ってしまった。翡翠の任務は、無事遂行されたらしい。
