第2章:遥か、宇宙の彼方より
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
『さらに、はじめまして第2弾』
〜夕暮れの恋歌<45>〜
「…うぅ…」
軽やかに浮いた体が重力に従い、再びスキッズの元へ落下しようとした時だった。
いきなり横からの風と力にガクン、と頭が揺れる。
ぼんやりする頭でゆっくりと目を開けた翡翠だったが、すぐに再び目を細めた。太陽に照らされた銀色の装甲があまりにも眩しかったから。
「…ジャズ?」
『何だ、将校と見間違われるとは光栄だな』
「え…?」
細めていた目をゆっくりと開くとブルーのカメラアイがじっと見下ろしていることに気が付く。
今、翡翠はこのシルバーのボディを持つトランスフォーマーに後ろ襟あたりを掴まれるようにして宙に浮いているらしい。
まるで…猫のように。
「ジャズじゃ、ない?」
眩しさに目が慣れてくると、装甲も顔も声もジャズのそれとは異なっているようだった。よく似ているけど、違う。
第一ジャズだったとしたら、翡翠のことをこんな風に猫のように持ち上げたりはしないだろう。
不思議そうに翡翠が見上げるとそのトランスフォーマーは小さく笑ったような気がした。
『おい、サイドスワイプ!』
『横取りすることないだろ!今、そいつは俺たちと遊んでたのによ!』
『はぁ?よく言うぜ』
サイドスワイプと呼ばれたトランスフォーマーが呆れたように片手を上げる。
翡翠の目の前には先程の2体のトランスフォーマーが近寄ってきて…何やら抗議しているらしかった。
実際には翡翠に…ではなく、翡翠を片手に持ったままのサイドスワイプに…だが。
『遊んでた?どう見ても嫌がってたじゃねぇか、コイツ』
コイツ、と言いながらサイドスワイプが翡翠を掴んでいる腕をわずかに持ち上げた。
落とされはしないと思うが、人間の彼女からしてみれば十分な高さで…無意識のうちに、膝を曲げ体を小さくしてしまう。
『だいたい、コレがそうなんじゃないのか?』
『は?』
『何が?』
『オプティマスが言ってた要人ってヤツだよ』
コイツ…とか、コレ…とか、ちょっと言われ方があんまりだ。
そう思って抗議の1つでもしようかと顔を上げた翡翠だったが…すぐにキョトンとしてしまう。
何故か、翡翠のことをじ~っと見て固まっているらしい2体のトランスフォーマー。確か…ツインズ、と呼ばれていただろうか。
「…あの?」
『う、嘘だろ!こんなちまっこいのが!!』
『こんな弱そうなのが!!』
「……………」
やっぱり…言われ方があんまりだ…
何だかよくわからないが、ガックリと肩を落とす翡翠の頭上からくっくっ、と笑う声がした。
『お前ら、まずいんじゃないのか?』
『うっ…』
『くっ…』
何故かたじろぐツインズの視線が翡翠を捉える。
不思議そうに首を傾げている彼女だが、心なしか顔色は優れない。
間違いなくその原因はさっきのキャッチボールにあることを瞬時に察した2体は1歩1歩後ずさる。
『あ~ぁ、オプティマスに知れたら間違いなく説教だな』
『そっ、それだけで済めばいいけどよぉ…』
『そうだぞ!オプティマス、怒るとすげぇ怖いじゃねぇか…』
そう言いながら、2体で顔を見合わせ…
「…あっ!!」
何故か、2体揃ってその場から逃げていった。
話し方も動きもそっくりだとは思っていたが、後にこの2体は双子のトランスフォーマーだと聞いて翡翠はさらに驚くこととなる。
ポカーンとしたまま近くにいるエップスへと目を向けるが、彼は呆れたように両手を上げただけ。
「その持ち方も相当やばいと思うぞ?」と口にするエップスだったが、サイドスワイプは小さく鼻を鳴らしただけだった。
『アンタだろ?翡翠って』
「え?」
頭上から声をかけられ、顔を上げた翡翠のことをサイドスワイプがまたじっと見下ろしていた。
「そうですけど…」と小さく答えると、彼の中できゅるきゅると音がした。
彼と同じ音…そのことが何故か翡翠をひどく安心させる。
『オプティマスから話には聞いてたが…アンタ、ホントに俺らを怖がらないんだな』
「怖がる…って、どうしてですか?」
逆にそう聞き返すと、驚いたように何度かブルーの瞳が瞬いた。
身体の作りも、大きさも、寿命も、文化も…何もかもが違うのに、何故こんな反応が出来るのか。今、手の中にいる人間の女は、サイドスワイプがこの軍事基地で邂逅した他のどの人間とも違うように思えた。
軍人たちからは畏怖の念を強く感じたと言うのに、この女からはむしろ…
『なるほど』
「何ですか?」
『いや、オプティマスたちはアンタのことが大層大事らしい。俺にはまるで理解出来ないことだと思っていたが…今、何となくわかるような気がしてきただけさ』
「…もしかして私、褒められているんでしょうか?」
キョトンとしながらエップスへと返答を求めた翡翠だったが…返って来たのは「俺に聞くなよ…」という一言だけ。
答えになっていない答えに翡翠はただ首を傾げるだけ。
それよりも…
「あの、首元が苦しくなってきたので、そろそろ降ろしてもらえないですか?」
『ん?あぁ、悪ぃな』
当の本人へ苦痛を訴えると応じてはくれるようで…翡翠の足がもう少しで地面に着く、という時。
残念ながらその希望は叶わないまま砕け散った。
『きゃあっ、やっと見付けた!』
『貴女が翡翠ね!いやぁん、可愛い!』
「…えっ?えぇっ??」
『サイドスワイプ、私にも抱っこさせてちょうだい!』
ものすごい勢いで現れた3体の小型トランスフォーマーにあっという間に囲まれる翡翠。
“抱っこ”という状態には程遠いけど…という突っ込みすら許されない。翡翠が再びもみくちゃにされるのは、このすぐ後の話。
「…お前ら、揃いも揃って何なんだよ」
…というエップスの呟きは、当の本人翡翠の悲鳴によって呆気なくかき消された。
(加筆・修正)
