第1章:ありふれた日々の裏側で…
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『金属生命体』
~夕暮れの恋歌<3>~
…大丈夫だって、思ってた。
私はもう元気だって。
でも…と今は思う。
「私、やっぱりおかしくなってるのかなぁ…」
ポツリと呟いて、翡翠はぼんやりと薄暗くなってきた空を見上げた。
帰って明日の予習をしないと…とか、今日は見たいテレビがあったんだっけ…とか。
色んなことが頭の中に浮かぶが、どれもすぐに思考から消えてしまい、結局はこの場から動けないまま。
「……………」
ふと空を見上げた翡翠の目に映った東の空は静かな藍色、西の空は眩しいオレンジ色。
この時間は嫌いじゃない。
ふぅ、と小さく息をついて…持たれかけさせている背中のそれにそっと体重を預けた。
あれからどのくらいたったのだろう。
トレーラーの運転手はまだ帰ってこない。
翡翠は何故かその場を離れることが出来なくて…
今は事もあろうに、わずかに草の覆い茂っている所に腰を下ろして、その大きなタイヤに背中を預けていた。
本当に本当に大きなタイヤで、座ってしまえば翡翠の体など簡単に見えなくなってしまう。
一応人目に触れないように、道路とは反対側のタイヤに凭れてはいたが。
「…運転手さん、帰ってきたらびっくりしちゃうだろうなぁ」
何故こんなことをしているのか、自分でも理解が出来ない。
そんなことを思いながらふと、翡翠は顔を上げてもう一度その派手な塗装を目に入れた。
さっき一瞬だけ、あの日の…あの瞬間の光景がフラッシュバックしたような気がしていた。
爆撃を受け、崩れ、こちらに飛んできた瓦礫が直撃するだろう様子を、ただ呆然と眺めていた。
逃げようにも…体が動かなくて…
そんな翡翠を守るかのように、突然影が降ってきて…翡翠の体を覆った大きな両手。
一瞬だけ…本当に、ほんの一瞬だけ逆光の中に見えたその腕には赤と青の炎の模様。
今でも思う…あれは、一体なんだったのか。
「似てる、から…かな」
確信なんてないが、どうしても似ていると思ってしまう、印象的なファイヤーペイント。
そして気が付いたら、トレーラーのタイヤの横に座り込んでいる自分がいたのだから。
やっぱり、どうかしているのかもしれない。
そろそろ帰らないといけないな…とは思いつつ、翡翠の体は動かない。
気持ちに反して周りは暗くなり、気温が下がっていった。
翡翠は無意識のうちに自分の体を小さくして、両腕できゅっと抱き締める。
…その時だった。
『このままでは風邪を引いてしまう。帰った方がいい』
「…え?」
何処からか、声が聞こえた。
ハッとして顔を上げると同時に辺りを見渡すけれど、そこには当然翡翠以外の誰もいなくて。
思わず、サーッと青ざめてしまう。
…まさか、幽霊?
「違う違うっ」
頭をブンブンと振って、とっさに考えを振り払おうとする。
その割には何だか優しい声だったもの…そんな訳ない!と自分に言い聞かせた。
運転手さんが帰ってきたのだろうか。
そう思って立ち上がり、トレーラーの道路側に回ってみたけど…やっぱり誰もいなかった。
『送っていこう。乗りなさい』
「っ…」
もう一度声が聞こえたと同時に勝手に扉が開くトレーラーを見て、翡翠は目を丸くしてしまう。
だって、これじゃあまるで・・・
「…あ、貴方が…しゃべってる、の?」
『驚くのは無理もないと思うが、どうか怖がらないで欲しい』
「怖くはないけど…驚いた。地球上にはしゃべる車もあるんです、ね…」
『私は金属生命体だ。地球上の生物ではない』
翡翠は唖然としたまま、パチパチと瞬きを繰り返していた。
だって…こんな展開になるなんて、一体誰が予想できたというのだ。
その場に立ちすくんでいた彼女にもう一度乗るようにと優し気な声がかけられる。
「う〜ん…」
えぇい、この際もうどうにでもなれっ!!
意気込んで乗り込もうとしたのはいいけれど、車体があまりにも大きすぎて翡翠だけの力ではステップにすら足が届かない。
必死になって頑張っていると、ふいにもう一段ステップが増えた。
「あ、ありがとう」
『うむ』
よいしょ、と乗り込むと大きな車体に似合わず小ぢんまりとした車内にまた少し驚いた。
落ち着かないように辺りを見回していると、シートベルトをするようにと促され、続けて家の場所を聞かれたのでとりあえず住所を口にしてみる。
すると、何処からともなくきゅるきゅる、という聞き慣れない音が翡翠の耳に届く。
『了解した』
シートベルトがカチリと音を立てたのと、そんな声が聞こえたのはほぼ同時だったかのように思えた。
最先端のナビゲーションシステムでもついているのだろうか。
言うが早いか滑るように走り出すトレーラー。
驚いたことにこんなに車高のある車なのに、揺れをほとんど感じない。
「運転、お上手なんですね」
『人を乗せている以上、慎重に走っているつもりだが…辛かったら言ってくれ』
「い、いえ…全然揺れないから驚いていたくらい、です」
『それならよかった』
何を話せばいいのかわからない。
それが正直な気持ち。
本当なら聞きたいことはいっぱいあるのに、きっと翡翠自身も何から聞いていいのか、何を聞いたらいいのか、整理がついていなかったのだろう。
「あの、え~っと…トレーラーさん、でいいのかな」
『…オプティマス・プライムだ』
一瞬だったけど、トレーラーさん…もといオプティマスが沈黙した。
『君の名前も、聞いてもいいだろうか』
「あ、翡翠です」
正直、名前を聞かれるとは思っていなかったから、翡翠は驚いた。
そしてその時だった。
またあの、きゅるきゅるという音が何処から共なく響く。
『やはり、君の顔には見覚えがあるようだ』
「え…?」
カーステレオから聞こえてきたその一言に思わず息を飲む。
もしかして…
もしかして、本当に…
<後書き(言い訳)>
唐突な後書きですが…始めてしまいました、司令官夢。
うまく文章に出来ない上に、実写しか知識がないので矛盾点があるかもしれませんが、お付き合いいただけましたらこれ以上の幸せはございません。
何度も何度もDVDを見ていて、ラストのメガトロンとの戦いのシーンでふと…
“こんなに大勢の人がいる街の中で戦っているんだから、『人間を傷つけてはならん!!』と言っていた司令官にとっさに助けられていた人が一人位いてもおかしくないんじゃないか”と思い立ったところから妄想が膨らみました(笑)
今後の展開が微妙に決まっていないので、行き当たりばったりになるかもしれませんが、頑張ります!
(加筆・修正)
