第2章:遥か、宇宙の彼方より
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『はじめまして、第2弾』
~夕暮れの恋歌<44>~
翡翠が初めて降り立つ新しい軍事基地は、海の匂いがした。
滑走路に立つと、その広さに思わず言葉を失う。終わりなんてないくらい、どこまでも続いているようにすら思えてしまう。
その広大さはオプティマスの車内から降り、生身の体で滑走路に立って、尚更強く感じられた。
「おい、こっちだ」
「あ、はい!」
エップスに手招きされていることに気が付き、慌てて彼の近くに駆け寄った。何度も言うが、ここは軍事基地。勝手な行動をしてはいけない場所。
その上、民間人である翡翠はここではかなり場違いな存在であることを忘れてはいけない。
小さくコクリ、と喉を鳴らすとエップスの背中に付いていくが、視線はついあちこちに向けられてしまう。
「まぁ、なんだ…そんなに緊張しなくても大丈夫だ。ここからは俺がちゃんと連れてってやるから」
「すみません、皆さん忙しくされているのに…」
「翡翠が思ってる程じゃないと思うぞ?あぁ、あの司令官はその言葉通りの忙しさだろうけどな」
「……………」
そう、ここまで翡翠に付いていてくれたオプティマスは、輸送機を降りると同時に待ち構えていた数人の軍人に声をかけられ、この場を離れてしまった。急ぎ、オプティマスの確認が必要な案件…らしい。
そんな状況でも、翡翠への謝罪とエップスに代わりの案内を頼むことを忘れないところが、本当に彼らしいと思う。
「…きっと、無理をして迎えに来てくれたんでしょうね」
「ん?」
あんなに忙しいのに…と小さく呟いた翡翠にエップスは少し驚いた表情を見せた。「何だ、アンタ知らないのか」という言葉に翡翠が「え?」と顔を上げると、エップスがわずかに肩を竦めるようにして笑った。
「珍しく一歩も譲らなかったみたいだぜ?自分が迎えに行くって」
「そう、なんですか?」
「あぁ、レノックスが今回ばかりはこっちが折れないとストライキでもされそうな迫力だった、って頭抱えてた」
頭を抱えるレノックスはなかなか見物だった、と笑うエップス。
確かに、翡翠もそんなレノックスは想像が出来ないなと思い、静かに頷くことで同意した。
「アンタ、大事にされてんだな」
「っ………」
エップスの言葉に深い意味はなかったのだろうと思う。
だが、翡翠にとってはあんなことがあったばかりで…一気に顔に熱が集まっていく気がして、慌てて爪先へと視線を集中させた。
オプティマスに…『愛している』と言われた。
車内に心地よく響いた彼の声が簡単に頭の中に浮かび、再生される。
あまりにも突然のオプティマスの言葉に瞬きを繰り返すことしかできずにいると、『地球では気持ちは伝えるべきだと学んだ。相手の応えを聞かなければならないことも』と彼は続けた。
ちなみに、全てインターネットで学んだらしい。
「……………」
応え…私の応え…
どう返答しようか、焦っている間に輸送機は着陸してしまい、今に至る。悩まずとも、翡翠の気持ちだけを考えれば、応えなんてとっくに出ている気がする。それでも、すぐに踏み切れないのは…
「…え?」
その時、前を歩くエップスが何やら焦った声を出していることに気がついて、翡翠が顔を上げた直後だった。
「っ、きゃぁあ!!!」
到着してものの数分で翡翠が悲鳴をあげる羽目になるとは、一体誰が予測していただろうか。
目の前に急ブレーキで停まった2台の車。
その2台ががちゃがちゃと変形していく様子を茫然と見詰めていた翡翠だったが…気が付けば、体が宙を浮いていた。
『こいつ誰だ?』
「きゃぁ!」
『それにしても、随分細っこいし軽い人間だな』
「きゃぁぁぁ!!」
『俺たちと遊んだら、すぐに壊れちまうんじゃないのか?』
「ちょっ、やめっ…」
翡翠の下からは何やら聞きたくない言葉が聞こえてきて、顔を青くする。
込み上げてくる嘔吐感はその言葉を聞いたからだけではなく…
『マッドフラップ、落とすなよ』
『それはこっちの台詞だ、スキッズ』
「きゃぁぁぁ!!!」
とても楽しそうにしている2体のトランスフォーマーにまるでキャッチボールでもするかのように、翡翠の体を右へ左へ…
その間、何度も宙を舞い、とてつもない浮遊感を味わわされているからでもあるのだが。
「お、おいっ!お前ら、やめろ!!」
『何だよエップス~』
『お前が連れてきたってことは、ココの関係者なんだろ?』
『そうだよな。こんなことで音を上げるようじゃ、ディセプティコンのヤツらとなんて戦えないぜ?』
違う!何かが色々と違っている!!
そう言い返したいのは山々なのだが、今の翡翠はすでに悲鳴を上げることすら出来ず、ただ唇を噛み締めていた。
口を開いただけで、吐いてしまいそうなのだから、仕方がない。
『おい、マッドフラップ。もしかしたら、これがこの惑星の“女”ってヤツじゃないのか?』
『確かにここにいる人間たちとは随分違うもんな!』
「ツインズ!いい加減に離してやれって!」
『でもよ、もしそうだとしたらサイバトロンの“女”とは大違いだな』
『あぁ!アーシーたちは怖ぇからなぁ』
「お前ら、聞けよ!」
真下でそんな会話が聞こえてくる。
何やら必死に止めようとしてくれているエップスの声も確かに聞こえるのだが…あまりにも綺麗にスルーされているようで…色んな意味で泣きそうだ。
まるで他人事のように、そんなことを考えた翡翠だったが、すでに何度自分の体が宙を浮いたのか…今となってはそれすらわからない。
