第1章:ありふれた日々の裏側で…
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『居心地の良い場所』
~夕暮れの恋歌<30>~
非日常的な生活を送る日々もあれば…
元の日常生活に戻る日もやってくる。
同じ時間の中にあるはずなのに、まるで自分自身が全く違う世界に紛れこんでしまったかのような…そんな錯覚すら覚えた。
朝。
気持ちの良い青空の下、フーバーダムの入り口で翡翠はペコリと頭を下げた。
「皆さん、お世話になりました」
顔を上げた先にはレノックスをはじめ、オートボットの面々までもが見送りに出てきてくれている。
ちょっぴり大袈裟な気もするが、やっぱり嬉しいものだ。
『堅苦しい挨拶はいらない。また来ればいいだろう』
「ありがとうございます、アイアンハイドさん」
『…さん、はいらん』
照れくさそうにふい、と顔を背けるアイアンハイド。
言葉は決して多くないけれど、初めて会った時のような刺々しさはもう微塵も感じない。
そのことが嬉しくて「アイアンハイド」と言われた通り呼び捨てで呼んでみる。
『…ふん』
『全く…何を照れているんだ?』
『ラチェット、黙れ。そういうんじゃない』
『そうか?』
顔を背け続けるアイアンハイドに呆れたように両手を上げたラチェット。
『まぁ、どちらにしても…また来ればいい、という意見には私も賛成だ』
慣れない手付きでよしよし、と頭を撫でられ翡翠は笑った。
初めてここに来た時のあの緊張が嘘のようだ。
ふと、肩に暖かさを感じて横を向くとミカエラがにっこりと微笑んでいて、そのままフワリと抱き締められる。
「私たちもよ。また近いうちに会いましょう」
「ええ、今回はありがとう。わざわざ来てくれて…会えて嬉しかったです」
「あぁ、僕たちもだよ」
翡翠と同じく、これからフーバーダムを去るサムとミカエラとも挨拶を交わす。
体を離す瞬間、ミカエラには耳元で「私たち、まだ恋愛トークしてないわよ」と囁かれて思わず笑ってしまった。
私には…話題に出来る恋愛話なんてないんだけどな、とは思いつつこの2人と話すのは本当に楽しくて、思わず時間を忘れてしまった程だ。
「また、ココに来る時は連絡ちょうだいね?」
「フーバーダムだけじゃなく、街でも会おうよ。翡翠の街と僕らの街、そこまで遠くはなかったんだからさ」
「ええ、是非!」
嬉しそうに頷く翡翠を見て、すでにビークルモードになっているバンブルビーも『“送り迎えは”“お任せ”』と言いながらライトを点滅させている。
そんな様子をオプティマスは微笑ましく思いながら眺めていた。
やはり、サムたちと会わせてよかった…と思う。
身を屈めるようにして視線を近付けると翡翠も見上げるようにして大きな瞳を向けてきた。
『送ってやれず、すまない』
「オプティマスさん、本当に謝ってばかり」
『む…そうだな』
自分の返答にくすくす笑っている翡翠の表情を本当に愛おしく思う。
もう何度目かもわからないスパークの高まりを感じながら指でその頬をそっと撫でた。柔らかい感触が伝わってくる。
『任務が終わったら、また会いに行こう』
「はい。気を付けてくださいね、オプティマスさん」
『あぁ、私は大丈夫だ』
じっと見詰め合っている2人を横から見ていたレノックスだったが、何だか恥ずかしくなってきて視線を逸らした。
ふと横を見るとアイアンハイドも同じようで、明後日の方向を向いている。
相棒だけあって、そういうところも似ているのか…などと考えながら、レノックスは思わず小さく呟いた。
「…あれで、何でもないっていうんだからなぁ…」
はたから見ていれば、完全に恋人同士のようにすら見える。
2人それぞれを見ていても、特別な感情を持っていることは間違いないだろう。
ただ…種族が違う。
そのことに対して、2人がどう考えているのかまではわからなかったが。
『ジャズ、翡翠をよろしく頼む』
『あぁ』
短く返事をしたジャズがみるみる姿を変えていく。
翡翠の目の前で一台のシルバーの車が静かに扉を開いた。
「ごめんなさい、忙しいのに」
『何言ってんだ。そんなの気にすることじゃない。だいたい、お嬢ちゃんとドライブする権利をもらえるなんて役得だろ?』
「ふふっ」
あえて軽口でそう言ったのは翡翠に気を使わせまいとしての配慮だろう。
優しい人だ…本当に。
『なるべく窓は開けたまま走ってやってくれ、ジャズ』
『あぁ、そういや乗り物酔いがひどいんだったな』
「す、すみません…」
『無理すんなよ。夜までに着けばいいんだ、休みながらのんびり行こうぜ』
「はい!」
ソルスティスの扉に手をかけながら…もう一度皆へ向き直り翡翠は小さく頭を下げた。
素直に寂しい、と感じてしまう。
初めてココに来た時には想像もしなかった。
たった数日でココが私にとって居心地の良い場所になったんだな…と改めて思う、
オプティマスさんが…
レノックスさんが…
オートボットのみんながいる、この場所が。
(加筆・修正)
