第1章:ありふれた日々の裏側で…
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『Contact』
~夕暮れの恋歌<1>~
「うん、もう大丈夫」
心配そうな声が聞こえてくる受話器に笑いかけた。
日本からの国際電話を携帯で受けながら歩く翡翠の横を大勢の人が通り過ぎていく。
「ホントに大丈夫だって。もう内服もしなくていいって先生が。うん、うん」
目の前に広がっているのは何の変わりもない都市。
だけど半年前、確かにこの場所で大きな戦いがあった。
軍が出ていたと聞いたけど、何と戦っていたのかは明らかにされていない。
政府も発表していないから、色んな噂ばかりが独り歩きをしている。
ガス爆発があったとか、他の国とのいざこざがあったとか…中には宇宙人が攻めてきた、などという飛び抜けたものまであった。
「うん、街もだいぶ元通りかな」
半年で街も驚くくらい復興して、もうあの時の影は残していない。
でもきっと…目に見えない形で人の心には残っているのだろう、と翡翠は思う。
「ありがとう。心配かけてごめんね、お母さん。また電話するね」
通話を終えた携帯を鞄にしまい込む。
半年前、翡翠は確かにココにいた。
そしてたぶん、何かに巻き込まれた…のだろうと思う。
…正直、あまり覚えていないのだけれど。
「翡翠~」
「あっ、おはよう」
待ち合わせ場所に友達の姿を見付けて、手を振った。
みんなでアメリカに引っ越して来て、家族が再び日本に戻ることになった時、単身この地に残ることを選び、その選択を両親も受け入れてくれた。あっという間に月日が経ち、言葉のコミュニケーションはもう不自由なくとれるようになった。
「勉強してきた?」
「まぁ、それなりにね」
翡翠は今、アメリカで単身大学に通っている。
かねてからの希望だった看護科を専攻し、大学生活を謳歌していた。
卒業まで、あと半年ほど…
「病院は、どうだったの?」
一緒に歩きながら他愛ない話をいくつかした後、唐突にそんなことを聞かれた。
たぶん、彼女なりに気を使ってくれているんだろうなと思い、翡翠は笑いかける。
大切な友人に余計な心配はかけたくない…と考えるのはごく自然なことだろう。
「うん、大丈夫だよ」
あの一件以来、あの場に居合わせていたためにショックから大きなトラウマみたいなものを背負ってしまった人がたくさんいると聞いた。
もちろん、翡翠も心配された。
偶然とはいえ、“あの場”に居合わせてしまったのだから。
でも、幸い大きな問題とはならず、その証拠に今ではこうしてまたこの街を歩くこともできるようになった。
「本当に大丈夫なの?だって、かなり怖い目にあったんでしょ?」
「それは、そうなんだけどね」
「本当?翡翠の“大丈夫”は結構あてにならないから」
「あはは、それを言われると何も言えなくなっちゃうけど…でも、本当に大丈夫。正直、あまり良く覚えていないし」
心配そうに顔を覗きこんでくる友人に対して困ったように笑って、指で頬を掻く翡翠。
普段から周囲に心配させまいとする翡翠ではあるが、今回の“大丈夫”には彼女なりに確信もあった。
それは、うまく言葉には出来ない確信であることに変わりはないけど。
…やっぱり、あれかな。
何となく記憶に残っている大きな存在。
あれは結局、何だったのか…
認識できたのは大きさだけで、それが何なのかはほとんどわからなかった。
一瞬だったし。
逆光だったし。
それに…
「翡翠!翡翠!!」
「…っえ!?」
「行かないの?信号青」
「あっ、い、行く!!」
自分でもびっくりするくらいボーッとしていたことに少し慌てつつ…
思考を断ち切って、急いで友達の後を追った。
得体の知れない何かより、まずは目の前の学校だ。
(加筆・修正)
※かなりの年月を経て再開した長編ですが、休止している間に書きたかった内容が少しずつ曖昧になってしまっていますので、ご迷惑を承知で加筆・修正させていただくことにしました。
あまり内容の変わらないお話も有れば、ガラッと変わっているものもあると思いますが、ご了承いただけましたら、幸いです。
