第1章:ありふれた日々の裏側で…
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『当てもなく走らせて』
~夕暮れの恋歌<23>~
フーバーダムの入り口を出たところで翡翠は、大きく伸びをした。天気は快晴。気温も暖かくて、最高に気持ちがいい。
「じゃあ、行ってきます」
そう言って振り返ると、レノックスが頷いた。
「あぁ。オプティマスが一緒だから大丈夫だとは思うが、気を付けてな」
「はい!」
これまで会っていた時とは違う、きっちりと軍服を着ているレノックスだが表情はいつも翡翠に見せていたそれと変わらず、穏やかだった。
普段、軍関係者には見せないそんな柔らかな表情に驚いた者も多かったと聞く。
それと同時に…本当の父親のようだ、と噂されていたようだが本人も満更でもないようで、気にしていないらしかった。
きゅうう…と。
どこかしょんぼりとした様子なのはバンブルビー。ロボットの大きな姿とはどこか不釣り合いな程に母性本能をくすぐられてしまう姿だった。
一緒に行きたいのかな…と、翡翠が「何なら一緒に…」と言いかけたが、それよりも早くジャズがバンブルビーの肩をグイッと引き寄せるようにして口を開く。
『お前は訓練があるだろ。だいたい、デートの邪魔すんなって』
キョトン、としているバンブルビーに対して翡翠の頬はみるみる赤くなる。
「そっ、そんなんじゃっ…」
「でも、仲が良いのは確かだろ?」
「う…」
腕組みしながらのレノックスにそう言われて、思わず翡翠の頬が赤くなる。
…もう、揶揄わないでください…と返せば「怒るなよ」と笑いながら頭を撫でられた。いつも豪快にガシガシと頭を撫でてくるレノックス。
乱れた髪を整えつつ、いつものやり取りに何だか笑ってしまった。
『では、留守を頼む』
『あぁ』
「オプティマス、翡翠をよろしくな」
『うむ。日没までには戻ろう』
そう告げると同時にトランスフォームを開始し、みるみるトラックへと姿を変えるオプティマス。
翡翠をいざなうように静かに助手席の扉を開いてくれる。そこにはやっぱり1段多く出されているステップ。
それを見る度、初めて会った時のことを思い出して…
「ふふっ」
何だか心が暖かくなった。
どれくらい走ったか。
窓からの風に当たりながらのドライブだったため、翡翠も乗り物酔いに悩まされることなく快適に過ごせていた。
何より、オプティマスが慎重に運転してくれたこと…気遣うように何度も声をかけてくれていたことでリラックス出来ていたのだろう。
あてもなく出掛けて、2人で色々な話をするのは本当に楽しかった。
「やっぱり…軍事施設っていうだけあって、街からは随分離れたところにあるんですね」
そして今、少し小高くなっている場所でオプティマスから降りた翡翠は思わずそう呟いていた。
結構な距離を走ってきたはずだが、周りには変わらず荒野が広がっている。
振り返ると、ちょうどロボットモードへと姿を変えた彼が、真横に歩んでくるところだった。
『あそこは特別だろう。今は我々の居住の場として提供してもらえているが、それも街から距離のある施設だというのが理由の1つだ』
「…?」
『我々が人目につく可能性は、極力低い方がいい』
「…あぁ、そっか」
翡翠はふと、オプティマスたちが国家機密となる存在だ、と前に話していたことを思い出した。
他の惑星から来たエイリアンだということもレノックスから聞いた。
隠れながら生活しなければならない、という理屈は翡翠にもわかる。
それでも…何だか“悲しい”と思ってしまうのは、いけないことなのだろうか。
故郷を戦争で失って…こうして身を寄せることが出来るようになった新天地でも隠れるように生活しないといけないなんて。
「……………」
思わず黙りこんでしまう翡翠に気が付き、オプティマスは膝を付き、身を屈めるようにして視線を近付けた。
『何故、君が悲しそうな顔をする?』
「だって…」
『この星に辿り着き、君に出会えた…私にとっては、それが全てだ』
無言のまま、顔を上げる翡翠の前にオプティマスがそっと手を差し伸べる。
『高い所は苦手だろうか?』と聞いてくる彼に首を振って答えた。
それ以上オプティマスは何も言わなかったが、“乗れ”と言うことなのだろう。
翡翠がゆっくりと掌の中央に座ったのを確認して、オプティマスは揺れないよう慎重に立ち上がった。
そっと持ち上げられた手から翡翠が肩に移り、腰を下ろす。
オプティマスの横顔がこんなにも近くて…何だか照れくさかった。
(加筆・修正)
