第1章:ありふれた日々の裏側で…
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『彼からの申し出』
〜夕暮れの恋歌<22>〜
『明日、半日程なら時間の都合が付けられそうだ。近場でも良ければ、何処かに出掛けよう』
「えっ…」
それは思ってもみなかった申し出で…
驚いたように顔を上げる翡翠。
ものすごく嬉しいけれど、それと同時に気を使わせているのでは…と少し心配になる。
「嬉しいですけど…いいんですか?“司令官さん”がココを不在にしたら、まずいんじゃ…」
そう言って顔を上げるとオプティマスが笑ったような気がした。
「私のことなら大丈夫だから、気を使わなくても…」
『いや、私がそうしたいと思ったのだ。それに私の仲間は優秀な者たちばかりだ。とても信頼している』
司令官…ココに来て、翡翠は初めてオプティマスの立場を知った。
驚くと同時に何だか妙に納得もした。
あぁ、だからこんなにもこの人のことが大きく見えていたんだ…と。
「みんな、良い人たちですね。私もちゃんと話が出来て安心しました」
『私の言った通りだっただろう?皆、翡翠に会うのを心待ちにしていたのだ』
「ふふっ、何だか嬉しい」
ひどく緊張しながらの初対面だったけど、アイアンハイドもラチェットもジャズもすごくすごく話しやすくて。
今は発声の機能が故障しているらしく、ラジオを使って会話をすることには少し驚いたけれど、気さくに声をかけてくれるバンブルビーに対してはまるで年の近い友達が出来たかのような…そんな感覚にすらなってしまった。
そう手を合わせながら話していた時、ふとオプティマスが何かを言い出そうとしているような気がした。
なんですか?と翡翠が先を促せば、少し悩んだような素振りを見せる彼。
『…君は、どう思っただろうか』
「え?」
キョトン、と首を傾げる翡翠の髪にまたオプティマスの指が優しく触れる。
『私たちのような地球外生命体がいたことについて、だ』
「あ…え、と…そうですね…」
どう思ったか、と聞かれてもうまく答えられない。ただひとつ言えるとしたら…
「やっぱり、まずはビックリしましたね…」
そう言って笑う翡翠を見てオプティマスはそうか、と答えただけ。
そんな彼に翡翠はもしかして…と思った。
「オプティマスさんのことも、今日紹介してくれたみんなのことも、怖くないですよ」
『ん?』
「あれ、違いました?」
『いや、そうなのだが…何故わかったのだ?』
前にも一度、聞かれたことがあった。
『君は、私とこうしていることが怖くはないのか?』と。
『私たちは意図せずとも、あの時君に恐怖を与えたはずだ』と。
その時も当然「大丈夫」と答えた。
けれど、それからもオプティマスは事あるごとに翡翠を気遣い、怖がらせる事はおろか、驚かせるようなことも決してしない。
確かに、あの当時…何が何だかわからないまま日常が突然巨大なロボット同士の戦場になってしまったあの瞬間、翡翠は恐怖を感じていた。
けど…
「そんなに、気を遣ってくれなくても大丈夫ですよ」
『いや、そういう訳には…』
「ううん、もう大丈夫。確かに、あの瞬間はすごく怖かったけど、それと同じくらいしっかり覚えてるんです」
『………?』
高い位置にある2つの淡い青の光を真っ直ぐに見上げる。
「あの時、恐怖から私を救い出してくれたのも、優しい青い光でしたから」
にっこり笑うとオプティマスが驚いたように何度か瞬きをして。
『君は、強いのだな』
と、一言。
今度は翡翠がびっくりしてしまった。
そんなこと…初めて言われた。
「つ、強くなんてないです。泣き虫だし、考え込みやすいし、怖がりだし」
ほかにも…と指折り話す翡翠だが、それが照れ隠しだということくらい、きっとオプティマスにはばれているのだろう。
『私の方こそ、君には救われてばかりだ』
「そんなこと…」
ないです、と…言おうとした言葉を遮るように、大きな指が翡翠の頬をそっと撫でていく。
何だか照れくさくなってしまって…俯きながら小さく笑う翡翠に、オプティマスが言った。
『そうだな…私も、少し前向きにならなくてはな』
「……………」
オプティマスも抱えているものがあるのだろう。それは、翡翠には想像もつかない程大きな何かのような気がした。
もし、少しでも…ほんの少しでも…その何かを軽くする事ができるのなら、どんなに幸せだろう…と、ふいに湧き上がって来た気持ちに翡翠自身少し驚いた。
(加筆・修正)
