第1章:ありふれた日々の裏側で…
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『2人の時間』
~夕暮れの恋歌<21>~
髪をゆっくりと撫でられる感覚に翡翠はぼんやりと目を開けた。
何だか少し心地よい感覚にふぅ、と小さく息をついてもう一度目を閉じようとした時…突然頭の中が覚醒して、バッと体を起こす。
「ご、ごめんなさいっ!」
顔を上げれば、驚いた様子で何度か瞬きしているオプティマス。
すぐ近くには彼の大きな指が所在なさげに宙に浮いたままとなっていて…
あぁ、頭を撫でてくれていたのはオプティマスさんだったんだ、なんてあの心地よい感覚が妙に納得できた。
『すまない。起こしてしまったな』
「いいんです!私こそごめんなさい、寝ちゃうなんて…」
不覚だった。
みんなと別れ、オプティマスと2人で色々な話をしていたはずだったのに。
今頃長距離移動の疲れが祟ってきたのだろうか。
何だかひどく申し訳ない気持ちになったけど、オプティマスは何も言わずに手に乗ったままの翡翠の髪をまた大きな指でそっと撫でる。
『長距離を移動してきただけでなく、そのままラチェットの検診にも付き合ってもらったのだ。疲れるのは無理もない』
「う~ん…検診と言っても、しばらく黙って立っているだけだったけど」
検診、と聞いて何をされるのか少しドキドキしてしまった翡翠だったが、ラチェットの腕から出てくる赤いビーム光線のようなものを色んな角度から体に当てられただけだった。
しかも、オプティマス立会いの元…だったため、不安もなかった。
「でも、どうして急に検診なんて…」
『うむ。我々の体からは極微量の放射線が出ている、翡翠の体に害を成していないか調べる必要があったのだ』
「あぁ、なるほど」
『結果、問題にはならないようだった』
それを聞いて安心した、と続けるオプティマスに翡翠は笑った。
目に見えない放射線が影響して、こうして近くで会話をすることも出来なくなってしまうのは悲しい。
安堵の表情を浮かべている翡翠の頭をまたそっと撫でるオプティマス。
本当の目的はそれではなかったのだが…まだ、彼女に言うべきではないと考えての一言だった。
『アイアンハイドが、少々気になることを言っていたのだ』
そう前置きをしてから告げたラチェットの言葉が思い出される。
『この星の種族には、突然瞳の色が変化するような変わり者もいるのか…と言っていた。まだ擬態していた彼の目の前で一瞬だったが、そうなったらしい。私が観察した人間の中にもそのような特徴を持っている者はいないのだが』
『……………』
一度、きちんと調べておいた方がいい…と告げるラチェットにオプティマスも検診の許可を出すしかなかった。それ以上に翡翠の体が心配でもあった。
現在、居住の場としているこの軍事施設にも大勢の人間がいるが、そのような話は聞いたことがない。サムに至ってもそうだ。
「…オプティマスさん?」
『ん?』
突然、声をかけられてオプティマスが視線を落とすと翡翠が掌の上に立ち上がり、自分のことをじっと見詰めていた。
ラチェットの詳しい検診の結果、翡翠からも一般的な人間と全く異なることのないデータが検出された。
そのことに安堵すると同時に、疑問も残る。
“瞳の色が変わる”…とはどういうことだ。
今、目の前で自分のことをじっと見詰めている翡翠の瞳はいつもと変わらない曇りのない漆黒色。美しい…と思う。
「オプティマスさんも疲れてます?ごめんなさい、私ウトウトしちゃってて…」
『構わない。君はやはり疲れているのだろう、今日はもう眠るといい』
「…いえ、まだ起きていたいです」
翡翠はオプティマスを見上げ、フルフルと首を振った。
「もっともっと、貴方の話が聞きたいので」
こんな風に2人だけでゆっくり過ごすなんて初めてで…時間が惜しい。
数日間の休みが終わったら、翡翠も学校がある。日常に戻らなければならないし、オプティマスもいつ任務に出るかわからない。
今を逃したら、次にいつまたこんな風にゆっくり話が出来るのかなんて、約束も出来ない。
色んなことがグルグルと翡翠の頭を巡って、何だかちょっとだけ焦りの気持ちが生まれてくる。
その時、ジッと見上げ続ける翡翠の頬にオプティマスの指先が触れた。
頬に伝わるひんやりとした感覚が心地よくて、翡翠は片目を閉じる。
『君が許してくれる限り、私は翡翠の側にあり続けたいと思っている』
「…っ…」
『時間はあるのだ。私も、もっと翡翠の話を聞き、君のことを知りたい』
「…はい」
まるで、告白のようにすら聞こえてしまうオプティマスの一言。
翡翠は少し驚き、自惚れないように、と自身に言い聞かせながら小さく頷いた。
うっすらと染まってしまった頬は、どうすることも出来ないまま…
(加筆・修正)
