第1章:ありふれた日々の裏側で…
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『はじめまして』
~夕暮れの恋歌<17>~
「………え?」
滑るように走ってきて、目の前で停車した1台の車。
黄色いスポーツカー…ということしかわからなかったけれど、オプティマスがその車に向かって話しかけていることがわかって、ポカンとしてしまった。
誰かが乗っているのだろうか…翡翠からは暗い運転席に誰が座っているのかは見えなかった。
『戻っていたのだな、ちょうどよかった』
声をかけるオプティマスに返事をするかのように、黄色い車のヘッドライトが数回チカチカと瞬く。
そして、どこからか聞こえて来る何とも言えない駆動音のような音。
『うむ』
何に対する返事なのかはわからなかったが、翡翠の視界の隅には頷いているオプティマスの姿がある。
『翡翠、行こう。皆が待っているようだ』
「えっ…は、はい…」
高い位置にある手から翡翠が落ちてしまわないように、慎重に再び歩き始めるオプティマス。
その足元にいた黄色い車はすぐに方向を変えると、まるで先導してくれているかのようにゆっくりと前を進んでいる。
導かれるまま到着したのは一際大きな部屋で…
天井も高く、ここでは大きなオプティマスも窮屈そうには見えなかった。
ふと見ると、様々なタイプの車が整然と並んでいるのが見える。
『翡翠、立てそうか?』
「え?」
『彼らが挨拶をしたいそうだ』
そう言いながら、オプティマスが膝を付き翡翠を乗せたままの手を地面に近付ける。
小さく頷いてそのしっかりとした床に足を付ける翡翠。
もう吐き気はおさまっていて、自分が思っていた以上に足に力も入った。
「え、っと…」
それからの展開はまさに怒涛のようで…翡翠はまたまたついていくのがやっとの状態。
『ようやく来たか~!待ちくたびれたぜ』
「…っ…」
どこからか聞こえてきたそんな声を皮切りに…
目の前で鎮座していた車たちが一斉にロボットの姿へと形を変える。
こういう光景が目の前で広がることなど、とっくにわかっていたはずなのに…あまりの迫力に翡翠はただただ言葉を失うばかり。
思わず後ずさりしてしまいそうになった翡翠の背中に、ふと大きな金属の感触が伝わって来る。
「…オプティマスさん」
それが彼によるものだとはすぐにわかった。
わずかに振り返るとオプティマスがすぐ後ろに屈むようにして、手で翡翠の背中を支えてくれていた。
『大丈夫だ』と言われ、小さく頷く。
『翡翠、紹介しよう』
屈んでいても大きな彼を見上げながら、名前、覚えられるかな…なんて一抹の不安を抱きつつも、彼の言葉に耳を傾ける。
一人一人、オプティマスは丁寧に紹介してくれて…そのたびに翡翠も一言ずつ彼らと言葉を交わした。
銀色で人見知りしない口振りの彼が、副官のジャズ。
『よろしくな、お嬢ちゃん』
「は、はいっ…お嬢ちゃん、なんて初めて言われました…」
黒いボディでどちらかというと無口な印象なのが、ここまで乗せてきてくれたアイアンハイド。
『…もう具合はいいのか?』
「はい、何とか…色々と、すみませんでした」
『ふん』
黄色くて、何だか博識そうなイメージの彼が、軍医のラチェット。
『ふむ、あの時の戦いでも大きな外傷は負わなかったようだな。何よりだ』
「え…?何で、そんなことわかるんですか?」
『話せば長くなる。後でじっくり説明しよう』
それぞれが本当に個性的で…少し戸惑いながらも、何とか顔と名前を一致させる翡翠。
一人一人がオプティマスの大切な仲間…
仲良くなりたい…と願うのは当然のことだ。
「よろしく、お願いします」
そう言ってペコリと頭を下げる翡翠にジャズが笑った。
『そう固くなるなって。笑った顔のほうが可愛いのに、もったいないぜ?』
「…は、はい」
『それにしても、オプティマスが人間の女を連れてくるとはな…意外だった』
『そうだろうか』
大きな人たち同士が頭上で繰り広げている会話を見上げながら聞いている翡翠。
そんな自分のことをラチェットが顎に手を当てるようにしてじっと見詰めていることに気が付いて、翡翠はどこか居心地悪そうに視線を逸らすことしかできなかった。
何だか、ほんの少しだけ、嫌な予感がした…
(加筆・修正)
