第1章:ありふれた日々の裏側で…
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『残像』
〜夕暮れの恋歌<12>〜
レノックスは軍人だ。
日本には自衛隊しかないから、軍人、と聞いて翡翠は初め、すごく乱暴で荒々しい人をイメージしてしまった
そのことは…申し訳なさ過ぎて、今も内緒にしている。実際に会ったレノックスは本当に優しく、よく笑う人で…当初そのギャップに驚いてしまったくらいだった。
「学校はどうなんだ?」
「楽しく通ってますよ。あ、でも最近はレポートとか多くなってきて、ちょっと大変かも」
「あと半年で卒業だったもんな」
「早いもので」
「留年するなよ?」
「が、頑張ります…」
そうは言いつつも、本当に応援してくれているのがわかるから、何だか暖かい気持ちになってくる。
今日は天気がいいから、とのサラの提案で、広いお庭でバーベキューをすることになった。
そしてその時、翡翠がふと気がつく。
「そういえばレノックスさん、今日は見たことない車に乗ってるんですね」
「あぁ、今日は軍の車で帰ってきたからな」
そう言って、レノックスさんが顔をあげた視線の先には一台の大きな黒い車。
あまり詳しくない翡翠には、車種などは全くわからないが…
それでも、前に帰ってきた時は確か違う車に乗っていたと記憶していたため、何だかふと気になった。
「珍しいな、興味あるのか?」
「ん~、そういう訳ではないんですけど」
「あら、そういえば翡翠は免許持っていないんじゃない?どうするの?」
話に加わってきたサラを見上げると、お肉がいっぱい乗ったお皿を持ってきてくれたところだった。
「今は忙しくてとても…卒業してからゆっくり取ろうかなって思ってます」
「卒業してからも、それはそれで忙しいんじゃないのか?」
「それは、そうなんですけどね」
困ったように翡翠が肩を竦めながら笑うと、レノックスに抱っこされていた彼の娘さんが翡翠の方に手を伸ばしてきたので、優しく握ってみる。
正直なところ、運転免許は取らなくてもいいか…とも思っていた。
そのくらいアメリカは交通の便が良い。
「……………」
肉が焼ける良い匂いを感じつつ、翡翠はもう一度レノックスが乗ってきた車に目をやった。
ふと立ち上がり、断りを入れてからその車に近寄ってみると、軍の車、というのが嘘のように、綺麗な漆黒の車だということに気付く。
「トップキックC4500だ」
「え?」
「ホント珍しいな。そんなに気になるのか?」
突然、同じく車の側に来ていたレノックスに話しかけられ、翡翠は少し驚いた。
だが、やはり一度も聞いたことのない車種。
「気になる、というか…ん~…」
「何だ?遠回しに車が欲しいってアピールじゃないだろうな?」
「ちっ、違いますよ。第一免許がないって今話してたばっかりじゃないですか」
「ははっ、そうだな」
その時、サラが呼んでいるのが聞こえた。
どうやら肉が焼けたらしい。
行きましょ、と隣のレノックスさんを見上げる翡翠だが、彼は先に行ってていいよ、と一言。
そしてすぐに車のドアを開けて、後部座席で何かしているのがわかったから。
「じゃあ、お先してます」
「ああ」
その言葉に甘え、先にテーブルに付かせてもらうことにした。
「…何か、言いたそうだぞ?」
『今の…何者だ?』
「今の、って翡翠のことか?隣の家に住んでるんだ。まぁ、日本人だから見た目は少し違うが」
『見た目のことじゃない。我々と接触した可能性があるぞ』
「なに?」
無人の車から発せられた声にレノックスは眉を寄せた。
車から顔を上げ、目を向けた先にはサラと楽しそうに話している翡翠の姿が映るだけ。
(加筆・修正)
