ご都合血鬼術 其ノ壱
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「皆、何をしているのだ。」
…いや、仏は居た
「悲鳴嶼さぁんっ…!」
「どうした?何かあったのか。」
地獄に仏って本当にあるんだな……
お前ら知ってた?
え?なに?
悲鳴嶼さんも任務帰りでこの町に来るなんて
凄いご都合が良くない?
「…?…二人は、何をしている?」
微動だにしない不死川と煉獄の様子に、手を合わせ首を傾げた悲鳴嶼さん
そうだよな、座り込んだ不死川の膝では静流がゴロゴロ言って丸くなってるし、その目の前で煉獄は真顔で腕を組んで仁王立ち
新種の拷問?
誰だって首傾げるわな
悲鳴嶼さんの頭の上に【?】が飛び交ってるのが見えるぜ
静流の口唇ぺろり……は、伏せて
とりあえず今の俺らの状況を簡単に説明した
すると、悲鳴嶼さんは心得たとばかりに無言で頷き、静かに地面に片膝を付き巨体を丸めた
不死川と静流の正面
「え、悲鳴嶼さん何して、」
「南無……静かに。」
土下座?かと思ったら
ぶっとい指が悲鳴嶼さんの唇を遮り俺は口を噤む
そして、悲鳴嶼さんは静流に向かってゆっくりと瞬きをしながら
「チチチチチチチッ。」
細かく舌打ち
『!にゃっ!』
するとどうだ、片時も不死川から離れようとしなかった静流が、いとも簡単に悲鳴嶼さんの肩に乗っかって、あのムカつく得意気な顔を見せたじゃねえか
「…ウソだろ?」
「ふふ、南無ネコ可愛い。」
可愛い…?
猫?………か、は置いといて
お見逸れしたぜ
実に鮮やか、流石だ悲鳴嶼行冥
両腕に付いた無数の生々しい引っ掻き傷は、伊達じゃねえってことなっ…!
「では、静流は俺が胡蝶の所へ連れて行こう。」
「え?……あぁ、助かる、」
「宇髄、後は頼んだ。」
「……ん?」
そう言って悲鳴嶼さんは静流を肩に乗せたまま、重さを感じさせない軽い足取りでスタスタと町を出て行った───
『にゃ〜!』
──────……
「………ン………え?!…後は頼んだって…、」
アレ?!
俺、この後のこと頼まれた?!
未だ固まったままの不死川と
真顔で黙り込んだままの煉獄
「……………………。」
「……………………。」
「……………………えっ?!」
コイツらを
どうしろって?
俺……
俺は…………
「俺は!!嫁に買い物頼まれてんのにっっ!!!」
──────……
───……
『あ!おーい!天元!やっと見つけた!』
「……ウヘェ、」
『え?なに今の声?』
…チッ…面倒なのが来やがった
背中にかけられた声に、俺は思わず舌を出して顔を歪ませた
最近の俺は運が悪い
どうしてこうも厄介事が背後からやって来るのか
厄年にはまだ早いってのに
『あのさー。天元に聞きたいことあってさー。』
「えぇー…俺ぇー…?」
血鬼術も解けてすっかり元に戻ったお騒がせ娘は、なんて都合のいいことか、術中の記憶が無えんだと(胡蝶談)
そんで俺んとこ来たのはアレだろ?どうせそん時の状況を聞きたいとか、そんな事だろ?
煉獄や不死川に聞いても、教えてもらえないなんてこっちは予想済だよ
だから避けてたのによー!
「悪ぃけど、俺ぁ忙しいんでな。」
あのなぁ、お前はにゃーにゃー肩乗っかって得意気にしてただけだけどよ、あの後、俺すげー大変だったんだぞ?
不死川の意識は遥か彼方でなかなか戻ってこねーし、煉獄はテコでもその場を動かなかったし
そのまま日も暮れて、結局頼まれてた買い物も出来なくてこれじゃぁ亭主の面目丸潰れってもんよ
「まったく〜!天元様、こんな時間まで何処で寄り道してたんですか〜?」
って
ちっげーわ!寄り道してねーわ!!
それに遅くなったの俺の所為じゃねーし!!
静流のヤツが面倒くせえ事んなってさあ!!
言い訳なら幾らでもある
でもな?それは自ら進んで言うもんじゃねえ
夫婦、男女ってのは不思議な関係性があってな?
たとえ俺に非がなくとも、このタイミングでベラベラと言い訳を捲し立てると何故か拗れちまう事が多い
だからな?
こういう時は、こうするんだ
良い夫の呼吸
壱ノ型!
奥義!!
スッ……
「…遅くってすんませぇん。」
「「「?!天元様!!」」」
───土下座───
何も語らず
素直に己の失態を認めろ
これが……最適解だ
壱ノ型から奥義かよっ!
ってツッコミは聞かねえぜ
「天元様、お顔を上げてください。…何か事情があったんですね?」
「!!!」
ナイスだ雛鶴!!
「え?そうなんですか?」
「ん?……あぁ、ま、ちょっとな。」
此処で少し疲れた顔をするのがポイントだ
「やだー!それならそうと言ってくださいよ〜!」
「いや、遅くなっちまったのは事実だ。待たせて悪かった。」
「そんなの良いですって!こちらこそ沢山頼んじゃってごめんなさい…。」
「まきを、気にすんな。」
「それで、何があったんです?」
「そうそう〜!私達も何かお手伝いします〜!!」
「須磨、ありがとうな。でももう終わった事だから。
そうだな……
飯でも食いながら話すか───……」
「「「はい!!」」」
───……こうして
宇髄家の平和は保たれた
だから、静流
お前が来るとややこしいからあっち行け
シッシッ、と手を振って歩き出すと、静流はムッとした顔をして俺の後ろをついてくる
『待てよ!』
「ヤだよ。」
『待てって!!』
「執拗い!」
『なんだよっ!お前まで!あたしにそんな態度取って!!』
「あ?」
静流の必死の声に、つい振り向いちまったのがいけなかった
おーおー
眉間に皺寄せて、口唇が富士山みたいになってら
「…………。」
『…………っ、』
あー……
「……わぁったよ!なんだよ!」
俺ってホント
優しい男だなぁー!!
──────……
で、聞くだけ聞いてやってんだけどさ
『最近!実弥ちゃんがあたしの事避ける!』
「ああ、うん。」
駄目だ
のっけから何言って良いかわかんねえ
『逆にさ!杏寿郎はなんかやたらくっ付いてきてさ!あたしの交友関係に口出ししてきて鬱陶しいしさ!』
「んー、なるほどな。」
煉獄、ウザがられてんじゃん
『急にこんな感じんなって!……これさ……あたし、二人になんかしたのかなって思うんだけど、天元、……理由分かる?』
「………………………………。」
したんだなぁ
思いっきり
『……天元?』
話を聞いたは良いが
俺から言えることなんか何もねえ
答えの代わりうんうんと頷いて、俺は静流の肩をポン、と叩いた
「悪り。やっぱムリ。一人で頑張れ。」
『は?』
「じゃあーな!!」
それだけ伝えると、俺はさっさと静流の目の前から立ち去った
『はぁ!?おい天元!待ちやがれ!!』
誰が待つか!
こっちは嫁三人で手一杯なんだよ!
既に拗れた関係に、俺が手ぇ出す隙なんかねーんだよ
『コラァ──!!天元の、薄情者───……!!!』
うるせ!
てめぇの色恋沙汰はてめぇでカタ付けやがれ!
終
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