緋色ノテフ(長編)
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副長に呼び止められ、机の前に正座する。
参ったな、沖田の事があったからなるべく副長とは話したくなかったのに…
「なんでしょう」
「お前、マヨネーズ好きか?」
…は?
「え、ええ…まぁ、普通ですね」
「そうか…!」
…なんだか嬉しそうだ。
貴様は組内を乱すような行動を慎め!みたいな事を言われんのかと思ってた…。
「そういえばお前、ここに来る前は西にも東にもって…ありゃ旅してたっつー事か?」
「ええ、まあ流浪の旅ですけどね。家族が貧乏でして。道中みんなで芸やったりして金稼いで、日が落ちた時に着いた場所が寝床ってカンジです」
半分は本当で、
半分嘘だ。
「ほう…大変だったんだな」
「とんでもないです、毎日楽しかった」
旅してる時は、な。
本当に楽しかった。
「だがそんなに楽しい家族で、なんだって殴られるような事があるんだ?」
「……!」
「!…あ、すまねぇ…」
不意な質問についビクッとしてしまった。
あぁ、拳を振り上げられた時のあの癖か…
「いえ、大丈夫です。あれは…兄です。よく喧嘩してたもんで」
ははっと笑えば、土方も申し訳ないような顔を少し緩ませた。
…なんとか誤魔化せたかな。
「では、俺は食堂に行きますので。何かありましたら呼んで下さいね」
「ああ、すまねぇな呼び止めて」
「失礼します」
スス…ストンッ
「(…なんか違和感あったな、武鳶の喋り方)」
「(勘の鋭さは沖田より上か下か…どちらにせよ、よっぽど勘が鋭くなきゃ今のは分からねぇ、ハズ…)」
そんな事を考えていたらいつの間にか賑わう食堂に着いていて。
「あっ!柊一君!こっちで一緒に食べようじゃないか!」
「えっ!?駄目っすよ近藤さん!コイツは…」
「なぁに、俺はお妙さん一途だから安心しろ!」
「そういう問題じゃ…」
一番奥に座っている局長が俺を見るなり叫んでおいでおいでをしている。
噂を知っているならあえて放っておくのが気遣いだろ…まあ、これもあの人の人柄なのかもな。
「俺はあっちで食べますから…わざわざお誘いいただいたのにすみません」
一応局長の近くまで行って、詫びの言葉を入れる。
「遠慮するなって!さぁこっち!」
「うわっ!?」
いきなり腕を引っ張られ、俺はぐしゃっと畳の上に座り込んだ。
周りはさほど気にせず賑やかに飯を頬張っているが、沖田の時にいたであろう数名の隊士はこちらをみていた。
大体人にホモホモって…お前らがホモじゃねーのかよ?
「ホラ飯、冷めねぇうちに食えよ」
「え…いや…」
「トシから聞いたぞ。色んな地を訪れたんだってか。色々聞かせてくれよ」
また旅の話か。
しかしこんな新人野郎にここまで構う上司もなかなかいないだろう。
物好きな集団だな…
「ええ…」
俺はさっき土方にした話をそのまま話した。
「でな…その扉を開いたら………返して…と呟く髪の長い女が…グワッッ!!と襲「「「「「ギャー!!」」」」」
…いつからこの話になったんだ。
時は数十分前にさかのぼる。
『柊一君はホントに色んな場所について詳しいんだな!』
『はい、地方に代々伝わる伝説とかも旅先でよく聞きますよ』
『伝説?なんだか面白そうだな…ねえ局長!?』
『おお、そうだな!何か話してみてくれ!』
『あ、じゃあ…』
『おーいみんな!武鳶が旅先で聞いた伝説を話してくれるってよ!』
………で、今に至る。
伝説というよりはホラーな話になってる気がするんだが…
「あーマジ怖ぇよお前の話!」
「お褒めいただき光栄です」
「なんだよ敬語なんか使って、隊長補佐ならもっと堂々としていいんじゃねーか?」
「いえ、ですが…」
隊長補佐っつっても組内のランクは隊員と同じ。つまり新人の俺は自然と敬語になるんだけど…。
「柊一君、敬語似合ってないぞ」
……分かってますよ、そんな事。
俺をみてニコニコしている局長をチラッと睨む。
「わかりま…分かった、局長、副長、隊長以外には敬語は使わないようにする。」
「やんちゃ坊主っぽいもんなお前、まあ改めてよろしくな!」
そう言って隊士の一人が俺の肩をぽんぽん叩く。
その手には確かなぬくもりがあって、思わず微笑んだ。
こうして隊士との距離が少し縮まった夜の時間は、あっという間に過ぎていった。
9-END