緋色ノテフ(長編)
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チチチチ…
涼しい風と包み込むような太陽が身体に染み渡ってくる早朝の河原。
鳥のさえずりを聴きながら砂利の音を響かせ男2人は歩いていた。
「ふぁーあ…ったく、んまい棒くらい俺が奢ってやるのに…」
「うっさい」
「それにもう攘夷とは関わらないとか言ってたじゃんか…」
「…うっさい」
鐵の野郎、桂と会ってからなんなんだよ…
昨夜も俺が屯所に帰って寝てた間、2人はずっと飲みながら話していたらしい。
だからこいつちょっと酒くさい。
「俺との再会のときはあんなに冷たかったのに…」
もしかして俺、こいつに嫌われてんのか…?
確かに……まぁ、昔ちょっと…色々あったけど、そこまでは……というか、アレ……?
「元々桂とは昔から話が合って……柊?」
「なんか……忘れてる気がする…………」
「…………俺は今日、非番だからな」
「わ、わかってる、お前はその辺で酒臭いの直しとけ……じゃなくて……」
「あー腹へった」
「だからそうじゃな……ぁあああああ」
「?どうした。」
「今日の食事当番俺だっ……!!!」
しかも今日一緒にやる人って……!!くそ、まだ間に合うか……!?
「じゃあなてっちゃん!!」
ダッ!!!
「…んまい棒、食いたいな…」
「………っ、はーっ、すみません遅れて………っ」
「どこで油売ってた、女か?」
「違いますよ…」
「だろーな、お前ホモだし。」
「そういう問題じゃありません…」
朝からズバズバと相変わらずだな、俺らの隊長さんは。
「隊長でも朝食を作る事あるんですね」
「ウチはそういうの関係ねぇからな。今日は隊士からのリクエストが来てんで、その通りに作るぜィ」
「わかりました…って、なんすかこれ…“お袋の味”って……」
沖田がポンと棚の上に置いた紙には、真ん中に大きくそう書かれていた。
「うちの組は田舎者ばっかなんでね、」
そういいながら沖田はロッカーからエプロンと三角巾を取り出す。
「はあ…でも、具体的には書かれてなかったんですか?」
お袋の味といったら…味噌汁とか、肉じゃが?
でもそれってお袋が作るからこそ引き出される味なのであって、男の俺達に作れと言われても…
「とりあえず近藤さんにきいたら真っ先に卵焼きって答えたからそれでいく」
「あ…はーい、」
卵焼きがお袋の味か……きっと美味しいんだろうな…
******
「できた」
………………は?
「え、なんすかコレ……ただの黒い塊じゃ「卵焼きだィ」
どうみたって料理とは思えない物体を皿に乗せて沖田は言い張った。
「もしかして隊長料理苦手なんすか?」
「ざけんな、近藤さんのお袋の味はコイツなんだよ」
まじまじと見つめてみると、いや見つめてみなくとも、明らかに物体は卵焼きの原型を留めていない。
お袋……の…………
「…デンジャラスなお母上だったんですね」
「……まぁ、母上っつーよりは……」
「え?」
「なんでもねェ。さっさと持ってけ」
一瞬沖田は悩ましげな顔をしたが、すぐ普段の強かな顔になり、料理達を指差して俺に言った。
「………これ全部、すか?」
「それか俺の足舐めるかどっちか選べ」「行ってきまーす」
なにがしたいんだあの隊長は……
11‐END
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