出会い編
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数日経った日の放課後、私はテニスコートには向かわずに自転車にまたがり、校門を出た。
地図を頼りになんとかスポーツショップにはついたけど…
「でっか…」
なんでも揃ってるからと言われ向かった都会のスポーツショップは、私が普段寄っていた同じ名前の場所より遥かに大きかった。
これは、店の中で迷いそうなくらいだ…。
早速、ポケットに入れてあった千鴇くんのメモをみながら買い物をする。
…あ?なんだこれ、名前だけじゃなんだか分かんない…
テーピングってなんか種類沢山ない?どれがいいんだろ…
消毒とかこれマツ○ヨじゃね?流石にスポーツショップには無くね?…マツキ○何処?
「あー…」
歩くだけでもめちゃくちゃ疲れた…
ふーっ、とため息をつきながらベンチに座る。
一通りは買い終わったし、後は帰って千鴇くんに報告するだけ…だけど、自転車で来たんだった…帰るの面倒臭い…
というか、結局誰一人知ってる人と会わなかった…。
折角千鴇くんがくれたチャンスだったけど…仕方ない。
あっ、でも地図を見る限り、ここからだと東京そんなに遠くない…?いっその事これから突撃隣の晩ご飯ならぬ中学校しちゃおっかなー…
ゴメン滑ってるね。
なんとなくまだ動き出したくなくて、空を見上げたり辺りを見渡したりしていると、一際目立つ集団が目に入った。
…………
……………
∑('Д'`;)
…あれは、その、アレだ。
冷たい灼熱で触ったらヤケドする奴等だ。
あれ、なんでだろう…!!
ようやく見つけられたのに、オーラが凄すぎて絶対話しかけたくない…!!!!!
あれ、でもなんか人数足りないような…1,2,3,4…
「君、立海の子?」
「ぎゃっ!…ああ!?」
突然聞き覚えのある声に話しかけられて振り返ると、そこには彼らと同じジャージを着ている、すらっとした長身の男の子が立っていた。
「うん、それは立海の制服だよね。それにその買い物…テニス部のマネージャーかな?」
「あ、そ、そうです…!」
「やっぱり!うちのマネージャーが前に行った時、君の話をしていたんだ!…あ!俺は怪しい人じゃなくて…その、」
そう言って目の前のハンサム少年がたじろぐと、その横から茶髪のサラサラヘアーの男の子が「おい、何してんだ」と声をかける。
「ハッ…日吉若2年、アグレッシブベースライナー、性格は冷静沈着で他人に流されない…!」
「え?」
…!!しまった、ついいつもの癖で
日吉を見ると出てきてしまう呪文を唱えてしまった…!
「…ほう、俺の名前は立海のマネージャーにまで知れ渡ってるってわけか」
「日吉!え、ちなみに俺は…?」
「あ、あはは…鳳長太郎君、だよね…!」
「わぁ!ありがとうございます!柳坂さんで合ってましたか?」
「あ、はい…!よろしくお願いします…!」
ワ~~~~良かった、なんか分からないけど日吉の勘違いでなんとか誤魔化せた~~~!!(奇跡)
私はヘラヘラ笑って二人への挨拶を済ませ、「ところで今日はみんな揃って何処へ?」と質問してみる。
すると、日吉が得意げにすぐ答えてくれた。
「今日はレギュラーだけ別の場所で特別練習をする予定です」
「はぁ~…凄いですね…氷帝といったら設備もすごそうですけど、敢えて場所を変えて練習したりもするんですね…」
「いえいえ…というか、柳坂さん先輩ですよね?敬語やめてください!」
「え?あ、そっか、ごめんごめん」
初対面だし、なんだか二人とも大人っぽくて、つい敬語になってしまった。
頭をポリポリ掻きながら謝ると、日吉がフンッと笑いながら話す。
「なんか先輩、立海のくせに物腰柔らかな方ですよね」
「立海のくせに…?」
「そうそう、うちのマネージャーは氷のように冷ややかな方で…いや、仕事はその分キッチリして下さるから凄く良い方なんですけど…」
「そ、そうなんだ…」
思った以上に喋り倒す長太郎に圧倒されていると、遠くから聞き覚えのある美声が飛んでくる。
「おい鳳!日吉!そろそろ行くぞ!」
…!!
「あ!跡部さん!待ってください~!!ごめんね、じゃあこれで…あ!!さっきの話、華岾さんには内緒ですよ!」
長太郎はそう言い残すと、ひと際目立つカリスマ性を放った男の方へ早々に去っていく。
私はついその姿を目で追いながら、その先に立つ人物を凝視してしまう。
軍団の中でもただ一人、とんでもないオーラを放ったその人物は、一瞬こちらを見たかと思うと、ニヤリと笑って立ち去って行ったように見えた。
…!?
「いや、いよいよ幻覚まで見えてきたなコリャ…」
「何一人でブツブツ喋ってるんですか」
「ギャ!!!ま、まだいたのかね日吉君!!!」
「いちゃ悪いですか?俺はもうちょっと話してたいんですけど」
そう言うと日吉は私の隣に座り、いつの間に取り出したのか何かのチラシを私に渡す。
「…ん?ミステリースポットツアー…?」
「合同合宿で一緒ってことは、その前後は休みですよね?ちょうど一緒に行く相手を探してたんです」
「え?」
「行けますよね」
「あ、ハイ」
訳も分からず返事をすると、日吉は満足げに笑い、
「合同合宿でまた、よろしくお願いします」と言って去っていった。
………ん?!
これは…デートに誘われた!?!?!?
いや、まさかこんな初対面の女を、そんなことないぜ…
SOBAGARAだぜ…
だぜ…
だぜ……
「おかえり美紀、遅かったね…ってどうしたのその気持ち悪い顔」
「え、ごめんいつもこんな顔」
「ハハ、その様子だと何かあったんだろ?買い物たくさん有難うね!」
「はい…それはもう…有難うございました…いや、今でもこれは夢なんじゃないかって…」
ポカッ
「エッいたい!!」
「ほら、夢じゃないだろ?」
「あ、そうだね…って、確かめ方が強引!」
私は急な襲撃に怒って千鴇君を睨みつける。
ふと辺りを見渡すと、景色はもう既にオレンジ色から深い青へと移り変わっていた。
そういえばここに来て一週間以上経ったけど、特に大きなイベントもなく、今日もこうしてオレンジが深く沈み、また青い空が昇ってくる。
「このままこうしてて良いのかな…」
漠然とした不安を抱えながらも、このまま突っ立っているだけでは目の前で片付けに追われる千鴇君を一人働かせる悪女だ。
今日も一日を終える為、私は買い物を片付けて千鴇君の後を追った。
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