出会い編
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まーけーてーはーならーぬー♪
朝のとあるマンションの一室に響く機械からの声。
少女はいつものように、その音を聴き目を覚ます。
「…かーなーらーずーかて…」
んー、朝か…なんか夢みてた気がするんだけど思い出せないな…
あー学校行かなきゃ…でも布団から出たくないし…
今何時だ…?あ~、もう待ち合わせの時間まで30分しかないから布団出て着替えな…きゃ…
「あ、そっか…」
むくっと起き上がって辺りを見渡したところで気付く。
ここはテニプリの世界だった…
ふと現実に引き戻された、否、非現実的な世界に引きずり込まれたようだった。
そしてあの日常に帰れない悲しさに、ふと不安と寂しさが込み上げてきた。
決して何もかもが素晴らしいと思えるような暮らしでは無かった。口うるさい親を嫌いになったり、ずっと笑顔のまま仮面を被って接しているクラスメートがいたり、ちょっかいを出してくる嫌な男子がいたりして、毎日うんざりと思ってた。
でも、それでもずっと一緒にいた仲間がいて。
ずっと支えてくれた人がいて…
目をギュッと閉じて零れそうな涙をしまいこんだ。
私は今、あの立海テニス部のマネージャーなんだ。
こんな事でへこたれて涙なんか流しててどうする。
バッと布団から出て、身仕度をしてからリビングに行った。
「…あれ」
リビングに行ったけどそこに同居人・畠見千鴇の姿は無かった。
「どうしたんだろ…ん?」
テーブルの上にラップのかけられたお皿とメモが置いてある。
「…朝練あるから先行ってる…遅刻しそうでも飯ちゃんと喰えよ…ぁあああ!!?」
やってしまったァアアア!!
時計を見るともう8時になりそうな時刻。
「テニス部の朝練は更に1時間前からやってっから、明日からは早起きな!」と千鴇君に言われていたのを、すっかり忘れていた。
私はお皿に乗っていたトーストを口に放り込み(美味いぞ!)、昨日の夜に貰った合鍵でドアを閉め自転車置き場まで猛ダッシュした。
自転車に飛び乗り、ペダルを競輪選手の如く必死に漕ぐ。
「(今日もあのキラキラした景色はお預けだ…)」
☆
「すみませんでしたァア!!!!」
朝練を終え汗を拭く真田の前で頭を下げる。
うう、絶対平手打ちされるよ…こんな数日で顔にヒトデ作ることになるなんて…
「まったく、早速寝坊などたるんどる!明日からは気を引き締めておけ」
…ん?
「あの…それってまさか…許してくれてる?」
「許したわけではない、大目にみてやったのだ」
「うふふふ、ですよねえ~~?…明日からは殴ってやって下さい!」
「また遅刻する気か?」
「…ハッ!とんでもないです!」
次は無いからな!!という真田の怒声を背後にそそくさとその場を立ち去ると、制服に着替えた千鴇くんが部室から出てきた。
「おっ美紀、おはよーさん」
「あ、千鴇くん!ごめんねなんか」
「いやいや、全然大丈夫ー。…ちゃんと朝メシ食ったみたいだな」
「え?…あ、」
ハッとして口元を拭うと、トーストのかけらが少し付いていた。
は、恥ずかしい…私この顔で真田と喋っちゃったのか…!
「あはは、旨かったろ?」
「(くそ、笑ってる…)うん、ありがと…。あ、そうだ、まだなにか仕事ある?」
「んいや、特には…あー、じゃあさ、ちょっと頼み事あるんだけどいい?」
「う、うん!なにかな!?」
「再来週から始まる合同合宿で使うモンを買い出しに行って欲しいんだけど…」
…え!
それってもしかして…買い出しに行ったら偶然他校とバッタリ☆的な…!?
そんな私の心を読んだのか読んでないのか、千鴇くんは「お前好きだろこういうの」みたいな目でみてくる。ああ勿論好きだよ!くそ…何が欲しい!?マッ〇シェイクでいいかな!?
「一人で不安なら休日に俺も一緒に行くが…」
「え!?それはそれで良…い、いや!大丈夫!ほら、真田は練習があるんだから私一人で行くよ!」
真田は真田なりに私の事を気遣ってくれてるっぽい。
すごく有り難いけど、真田は真田のためになることをしなくちゃダメだ。
……ちょっと、いやかなり心揺らいだけど…
「そうだぜ真田、全国目指して一秒でも多く練習しなきゃ!」
「う、うむ…そうだな!」
千鴇くんの励ましの言葉に目を輝かせる真田をみて、少し胸がチクッとした。けど私は…
「んじゃ、よろしく!このメモに書いてあるやつ、頼むな」
「うん、OK!」
けど私は、やっぱり諦めたくない。
非現実世界の中で、自分勝手な私は抱いてはいけない決意を翳(カザ)していた。
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