出会い編
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その日の帰り、
「そういや美紀の生活用品とか買って無くね?」
という千鴇くんのこの一言で、部活帰りに買い物に行くことになりました。
なんか付き添い込みで。
「なあなあゲーセン行こうぜゲーセン!」
「あっ俺も行きたいっス!!」
「じゃあお前らだけで行けよ」
「なんじゃ、いつもより冷たいのぅちーちゃん」
「チじゃなくてセンだから」
「大丈夫だって、金は全部持つから!ジャッカルが!」
「おいっ俺かよっ!」
うわ!本場だ…!!じゃなくて。
「あのー、私の生活用品を買いにきたんだけど…」
しかも必要最低限の買い物しかしないから、
そんなに時間はかからないし
…あ、だからむしろその分、みんなと遊び放題なのか…!(邪な気持ち)
「そうなのか?でもなんで畠見が着いていく必要が…」
あ、
なんとなくどうでもいいけど結構重要な事にジャッカルが気付いてしまう。
それに仁王や赤也も反応し「そういえばそうだな」という顔をした。
「あっそっか、まだ言ってなかったっけ」
「出たよ千鴇のド忘れ!」
ブン太が千鴇くんをみて笑う。
確かブン太はテニプリキャラで唯一この理由を知っている人だ。
「言っても平気?」
「え?」
いきなり私の方をみて千鴇くんが問い掛けてきた。
えっ。うっわ~~何、この角度…。
イケメンはこれだからズル……じゃなくて!
「ま、まあ…みんないずれ知る事だしいいんじゃn「俺達同居してんだ」
「「「え?同棲?」」」
…貴様ら。
☆
「まあこんなもんかな」
いくつか店を周って、ある程度のものは揃えられた。
「お帰り美紀ー」
「ごめんね荷物持たせちゃって」
店の前で待っていた千鴇くんは、私の買ったものを全部その手に持っていた。隣のベンチに置けばいいのに…
「いや、大丈夫だよ」
「よっ新婚さん!」
「なっ!やめてよ!」
私が嫌がる素振りをすると「ごめんねごめんねー!」と言いながらブン太は赤也と一緒にゲーセンに走っていった。
ジャッカルも「お前ら危ないだろ!」とそれを追いかける。
まるで保護者だ。
新婚って…テニプリキャラとならまだし…
「あ、今お前テニプリキャラと同居したいなと思っただろ」
「何故分かった」
「顔にそう書いてある」
そ、そんなに顔に出てたかな………
チラッと千鴇君の顔を見ると、やれやれといった表情と共に、少し険しい顔をしていた。
「まぁ…さ、俺と一緒に住む事に関しては、強制してるわけじゃないし、嫌だったら別に部屋とってもいいんだよ?」
「え、そんな事出来るの?」
「うん。同じマンションか、近くの家にはなると思うけど、基本、こっちの世界に親がいない俺達には、気前のいい大家さんが面倒見てくれるって事になってる。」
「そういうもんなんだ…」
「あ、それにやっぱ~異性だと色々アレだし?俺もちょっと気にしちゃうっていうか~」
「…そうなの?」
「あ…、ごめん、嘘。…なんか、色々こっちの都合の良いようにしちゃって、大丈夫かなって…、実は不安だったんだ」
そう言って頭を掻きながら、バツが悪そうに目を背けてしまう千鴇くんは、これまであまり見ない少し弱ったような姿だった。
自分の事ばかりで精一杯だったけど、千鴇君も、私と初めましての時から色々と、不安だったんじゃないだろうか。
そう気付いた私は「千鴇くん」と名前を呼んで、諭すように、彼の目をじっと見つめて話し出す。
「私は…同じ境遇の千鴇君が近くにいてくれた方が安心するし、別に色々と決めた事とか、気にしてないよ。マネージャーの件だって最初はびっくりしたけど、最後には私の意思で決めた事だし。だから、千鴇くんは気になくて大丈夫だよ」
「美紀……」
改めてしっかりと顔を見てみると、まだ少し不安げな顔をしていた。
なんとかいつもの笑顔に戻って欲しくて、私は「こら!もうそんな顔しない!」と言って彼のほっぺをつねり、にっこり笑った。
すると千鴇くんは少しずついつもの顔になってくれた。
良かった良かった…
「…ククッ」
私が安心していると、背後から奇妙な笑い声が聞こえた。
この笑い方は……
「あれ、仁王?どうしたの?っていうか今の話どこから…」
「すまんの、欲しいCDを買っちょった」
「えっ、あーうん、そうなんだ…って、ききたい事はそれじゃないんだけどー…」
「ホラこれ千鴇が欲しいっていっちょったやつ」
「え、マジ?借りていい?」
「んじゃ今度…」
私をスルーして千鴇くんと仁王がCDについて話し始めた。
えっ、おーーーい、私ハブですかーーー。あれーーー。聞こえてるーーーー?っていうか見えてるーーーーー?見えて…ない!?ないの!?アッぜんっぜん見てない!つらい!コラ~~!!
「あの!!!!…少しいい?」
「「ん?」」
「あ、あのさあ…私が何処に住むとかそんな話…聞こえてた?」
「あーそれのう、俺は知っちょるんよ」
…は?
「え、いや、それ、答えになってないよ…」
「いや、なってるよ」
CDを眺めていた千鴇くんが口を開く。
「仁王は俺達の理解者なんだよ」
「り、理解者?」
「うん」
「と、申しますと…」
なかなか話が見えてこず、私の頭の上には?マークが所狭しと広がった。
「まぁ、」とりあえずブン太達の後を追いながら話そうか?という仁王の言葉で、?マークを撒き散らした私とにっこり笑顔の千鴇くんは複雑な睨めっこをして歩き始めた。
☆
「…っつーわけだ」
「え…ほんとに?仁王…」
「俺はすべて受け入れるつもりじゃからの」
「…未来が、分かってても?」
「……」
賑やかなゲームセンターの前の静かな空間。
仁王は千鴇くんや私が何処から来たか、自分が暮らす世界とはどんなものかを唯一知る人物。
それは私が数分前に知った事実。
「まあそんな深刻な顔しなさんな」
「でも…」
自分の将来、しかも学校生活においての殆どを費やしてきた部活の大会で、いずれ、自分がよくない結果になるって…
「どっかの誰かが俺の運命を決めとるいうんは悔しいけん、
…じゃがそいつが筆握っとらん時は、俺なりに楽しめばいい」
「!…そう、だよね」
納得出来たのは、そう言った仁王の顔は生き生きとしていたから。
漫画には描かれていない素顔の物語を、今目の前で私は見ているのだ。
見守らねらばならない、そう強く思えた気がした。
それにしても…
「いやあやっぱり本物は良い顔してるねー…」
「なんか変態っぽいぞ美紀」
「ひっど!思っててもホントの事言わないでよー!」
ゲームセンターの中に入ってく千鴇くんを追いかける。
仁王は先にブン太達を捜しにいったらしい。
「うそうそ。仁王がこの話であんなに喋ったの初めてだからさ」
「ふーん?」
「千鴇ーっ!柳坂ーっ!」
「ほら早く来て先輩!」
遠くから二つの元気な声がきこえる。
「やったな美紀」
「え?なにが…」
みんながいるトコをみると…
「プリクラ、家宝だろ」
「流石千鴇さま分かってらっしゃる!」
私はニヤn…にっこり笑ってみんなの元へ行った。
☆
ガチャ
「はーっ、なんかすっごく長かった…」
「よいしょっ、荷物ここ置いとくな」
「あ、ありがとー」
家についてすぐ部屋のベッドにダイブした。
「パンツ見えんぞ」とかなんとか聞こえたけどもう何も気にしない。疲れた。寝たい。でも寝たら朝がくる。夜はゆっくりしたい。
ぼーっとした脳内で矛盾が繰り返されている。
とりあえず、そうだ、私の荷物片付けないと。
覚悟を決めてバッと起き上がると、家の隅にある段ボールを開いて、その前に座り込む。
中には本当に衣服類しか入ってなくて、ゲームや漫画、CDはすべてあっち側らしい。
…ん?
「千鴇くん千鴇くん」
「なんだー?」
「私達が元いた世界はどうなっちゃってるの?」
夕飯の支度をしていた千鴇くんがエプロンをつけながら、キッチンから顔を覗かせる。
…なんだかんだ彼も操作したとはいえ、顔面が良すぎるせいで、ちょっと不覚にもキュンとしてしまう。
「さぁなー、俺もこっち飛ばされただけだからわかんねぇや」
「そ、そっか…」
私、行方不明とかになってないかな…
もしなってたとしたら、どれ位の人が心配してくれるだろう…
「あんま変な事考えんな」
「え?」
「状況がどうであろうと俺達が生きてる事にかわりはねぇ。こうやって喋って、床に足ついて、色んな人と出会ってきたんだ。だから、元の世界がどうとか、どーでもいいだろ?」
「う、うん」
確かにそうだけど、なんだか千鴇くんは元の世界について話したがらないような感じがする。
さっき仁王と話してた時も、ずっと黙ってたし…
そんな考え事をしつつ、荷物の片付けをしていたらあっという間に時間が経っていた。
「おーい!夕飯出来たぞ」
「あ!うん…って、うわあ、ハンバーグじゃん美味しそう!」
まあ、あまり話したくない事を話させるのは可哀相だし失礼だよね。
いつまでいれるかもわからないし、
「いただきまーす」
「おいっお前手洗ったか!?」
ここでの生活を思いっきり楽しまなきゃ損だよね。
あっさっきのプリ、あとで何処かに貼っておこうっと!
美味しいハンバーグをぺろりと平らげて、私はとにかくこれからの楽しい事を考える事にした。
★