出会い編
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「柳蓮二だ、よろしく頼む」
「仁王雅治じゃ」
「切原赤也ッス」
「ジャッカル桑原だ、よろしくな」
「柳坂美紀です…!」
凄い、目の前に立海Rが勢揃い…!!!
それぞれが持ち寄ったお昼を抱え、普段と変わらぬ仕草のように思い思いに地面へ座る。個性豊かな彼等の座り方は様々で、なんだか面白い。
だって柳生なんかレジャーシートみたいの敷いて体育座りだよ?
ブン太は何だか段々とのめり込んできてる… 目が血走ってるところを見る限り、絶対みんなの弁当狙ってる…。
あれ、でもさっきまで鬼の形相をして追いかけてきた人がいない?
「真田くんは部長代理として部活動の会議に参加しています。」
私の心を読んだかのように柳生が話す。
そっか、まだ幸村は…
「で、私達がここに集められたのはどういった用件でしょうか?」
「え?いつも集まってご飯食べてるんじゃないの?」
「んなわけないじゃーん、俺が集めたのっ」
今まで黙っていた千鴇君がいきなり口を開く。
毎日集まってるんじゃないんだ…!!と少しショックを受けていると、千鴇君が食っていいぜ、と私にお弁当を差し出した。
私はありがとう、と言ってお弁当を受け取り、早速お弁当を食べ始めた。
朝ごはん抜きからようやくのご飯…嬉しい!!しかもめちゃくちゃ美味しそう…!!
「さっき真田に話して、もう了解を得てる。」
あ、このハンバーグ美味しい!卵焼きもなかなかいいなあ~。これなら毎日の食事には困らなそう!!
「ここにいる柳坂美紀には、立海男子テニス部のマネージャーをやってもらう」
料理が上手いっていいなあ。いやね、私も料理は上手くなりたいんだけど…………え?
「ん?」
ウインナーを頬張りながら頭上の千鴇君を見上げようとしたら、周りに座ってるみんなが驚いた顔でこっちをみている。
「う、んっ…な、なんですか??」
急いで口の中にある残り少ないウインナーだったものを飲み込み、千鴇くんを見る。
「また話聞いて無かったのかよ、だから…」
「待てよ!マネージャーならもういるじゃねぇか!」
ブン太がくわえかけたパンをバッと振って立ち上がる。
え?マネージャー?
「でも1人より2人だろ?」
「お前だけでもマネージャーは十分な筈だ。それに…」
「う~ん、それがなぁ~。ダメ?」
また出た。
確か真田はこれで完全にオチてた。
って、あれ…
「あんたテニス部のマネージャーなの!?」
「あれ?言ってなかったっけ?」
そう言って、またへらへらと笑い出す。
だからテニス部とやけに絡んでるのか!
ん?って事は、話の流れ的に…
え?
「それで…みんな、どうかな?」
☆
「俺はいいと思うぜよ、なんか面白そうじゃき」
屋上は、その一言が出てくるまで、ご飯を食べる音だけが響く空間だった。
目の前にいる彼らは前から知った顔だとしても、初対面である事に変わりはない。とてつもない緊張が私を襲っていた。
長い沈黙を破ったのは丁度斜向かいに座っていた仁王だった。
ハッと顔を上げた瞬間バチリと目が合い、彼はニヤリと笑う。
救われた…。そう思った。
私はその意見が本当のものなのか少し疑いながらも、賛成してくれる人がいた事に心から安堵する。
「まあ、仁王君が良いと言うなら私も、仕方ありませんね。」
「テニス部の新しいデータがとれるかもしれないしな」
「俺もいいぜ、一人より二人の方が、千鴇も楽だろ?」
彼の周りに座っていた柳生、柳、ジャッカルも続いて微笑み、こちらを見て頷く。
次々と賛成票が入っていく状況に私はどんどん安心し、強張った顔も緩まっていく。
「赤也とブン太は?どう?」
「え?ああ…」
「んまぁ…先輩達が言うなら、いいんじゃないっすか…」
最後までずっと黙っていた二人は、明らかに不満そうな顔をして、千鴇君を見ていた。
ここに来てから、私とは一度も顔を合わせていない。
それはグループに新しいものが入ってくる事への完全なる拒絶だった。
「え、いや…それじゃ良くないでしょ…」
私は思わず口を開いて、そう呟いていた。
「でも俺は美紀に…」
「千鴇くん!いくら私でも線引きくらいはちゃんと出来るよ!だ、大体初日からそんな話…びっくりしちゃったよもう~!」
「美紀、違うんだ、これは…!」
「違くないでしょ!一人でも嫌って人がいたらそれはダメなの!みんなは凄いんだから!私みたいなのには光が強すぎるっていうか…、お願い!陰でひっそり見守らせて…!」
そう言ってから少し悲しくなって、
何より憧れのみんなの顔が歪む姿が何よりも見たくなくて、
私は俯きながら立ち上がり、お弁当と箸を置いて屋上のドアに走った。
終わった…
さよならあたしのエンジョイライフ…
いやでも嫌われも結構楽しいかmドンッ
「いてっ!!」
「なにを騒いでいる」
「…真田副部長!」
「すまんな、思ったより会議が長引いた。どうした柳坂」
「いやあそのー…あはははは」
「真田ナイスタイミング!ハイ美紀捕まえたー」
「なっ!ちょっ!?」
私の目の前にいる真田に、私の後ろから千鴇くんが抱き着く。
なにこのサンドイッチ状態!!これしきの事でわたくしの心が揺れ動くとお思いで!?……ごめんなさいめっちゃドキドキしてる。ごめんみんな。ごめん。
「お、おい…柳坂が嫌がっているだろう」
「まあまあ。ほら美紀、こっち戻っておいで?」
「い……嫌だ…!」
初日から一日が長くなりそうだ。
☆
もう休み時間は終わりなんじゃないかと思うほど、長い時がすぎたような感じがする。
今、真田と私は、みんなとは少し離れたフェンスに寄り掛かっている。
「大丈夫か?」
「へ?あ、うん、ごめんねさっきはぶつかっちゃって」
「あのくらい大した事はない。俺達は毎日心身を鍛えているからな」
「…うん、」
流石だね…、
常勝の名に恥じぬ行動を、真田は一番意識してきたんだなと思う。
「俺は畠見の案に直ぐ賛成した」
真田が向けた顔の先には、必死に説得する千鴇くんがみえる。
周りにいるみんなはうんうんと、千鴇くんの話をしっかり訊いていた。
いいなあ…あの関係性。
私も彼らとあんな風に、なれるだろうか。
「理由は簡単だ。…お前と畠見が同居している事や、畠見がマネで帰りが遅くなる為、一人で帰らねばならないお前を心配している事を聞いたからだ」
「心配?千鴇君が?」
「ああ、それに…最近畠見の体調も良くなくなってきている。毎日マネの時は張り切っているからブン太や赤也は気付いてるか分からないが、少しずつ疲労が蓄積しているようだ」
えっ…あの体力オバケが…?
「お前が人見知りをしてしまう性格だということも言っていた。それもあってアイツから、俺達のマネージャーをと提案したんだろう」
「…そっか、」
「後はお前の意志だ。全く、あいつは碌な説明もせず、勝手に話を進めるからこんな事になるんだ」
真田の瞳には未だに、遠くで笑う千鴇君の姿が瞳に映る。
テニス部と千鴇君、彼らはとても信頼しあっている。完全に1つのチームとなっている。出会った最初から、それがとっても伝わってくるのだ。
どうやったら、そんな関係性になれたのだろうか。
そんな関係性に私が飛び込んでしまっていいのだろうか。
遠くで見守っていた存在が突然一番近くに来てしまう不安もあった。きっととんでもなく大変な事がこれから待ち受けているだろう。
ただ、真田の話から出た「千鴇君が体調が良くない」の一点がどうしても頭の中に引っかかり、それだけが行動源として私の身体を動かしたのだった。
「ああ、それともう一つ…俺達の野望を成し遂げるには、お前がいないとならないとしきりにヤツは言っていたが……柳坂?」
気付いたら私は立ち上がり、真田と腰掛けたフェンスから離れ、みんなの元へと向かっていた。
「千鴇、」
「うをうっ!?どした美紀、具合悪いか?」
「違う違う!むしろその逆!
でさあ…あのですね…えっと………皆、やっぱり嫌かもしれないんだけど………」
「柳坂が自らマネージャーをやりたいと言っている」
「うわっびっくりした!あ、ありがとう真田…」
「うむ」
私の後から来た真田がヌッと顔を出して、言いたい事を代弁してくれた。
「まじか?美紀」
「う、うん。さっきは取り乱してごめんなさい…。副部長から事情を聞きまして、こんな私ですが、みんなの力になりたい、です…」
「だってさ。勿論、OKだよな?」
千鴇君が説得してくれたおかげか、さっきよりもみんなが歓迎してくれているような表情が伺えた。
笑顔で頷く皆をみて、
なんだかホッとして、どうしようもなく嬉しくて、
私は今日一番の笑顔になった。
☆
「柳坂美紀です。よろしくお願いします」
放課後。
真田によって集められたテニス部員の前で自己紹介をする。
「なぁ、同じ学年なんだし、敬語やめよーぜ?」
ブン太が私に話しかける。
昼は結局話せなかったから、1時間目以来話すのは初めてかも。
「あ、ブ…ま、丸井君!そうだね、ありがとう…よろしくね!」
「おう、シクヨロ柳坂!」
シクヨロ!!ブンちゃんほんとに可愛いね!!ああわしゃわしゃしたい…
「やっぱ笑った方がいいぜ、お前」
「え?」
「ムスッとした顔してると真田みてーになっちまうぞって事!」
「゚3゚)*.゙・、ブッ」
「俺みたいにとはなんだ丸井!」
「やべっ逃げろっ!」
身軽にフェンスを飛び越えて逃げるブン太を、真田が「ふんぬぁ!」と乗り越えて追いかけていった。
私は楽しい光景にまた声を出して笑った。
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