出会い編
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「これでHRは終わりにします。次の授業遅れんなよー」
体格の良いジャージを着た担任の先生(27)が、敬語とがさつな言葉が混ざった指示を出す。
それと同時に、クラス中がざわざわと椅子を引く音と共に動き出した。
「ん…?移動クラスかなにか?」
「次は体育だぞ」
「えーっ、もう疲れた…」
「まあまあ、最初の授業から本格的にはやらねーだろ」
「え、最初?」
「俺達まだ3年成り立て」
「あ、そうなんだ…」
へー、まだ1学期の始めなんだ…私の世界ではもう2学期の後半だったのに…
「(あ、だから外もなんとなくあったかかったんだ)」
朝に感じた違和感は、肌に感じる温度の違いからだったみたいだ。なんとなく不思議な気分だけど…勉強とか先に分かってるからラッキー千石だね!!(?)
「何一人でガッツポーズしてんだ」
「え!?あ、ううん!なんでも!」
「ま、いいや。あ~やっと授業で運動出来るぜ」
「運動したかったんだ?」
「まぁな!」
そう言うと千鴇君はここ一番の笑顔でガッツポーズする。
朝の身体能力の高さといい、相当運動が好きなんだろうなぁ。
「俺テニスやりてぇなー」
「うわっびっくりしたー、ようブン太!そっか次の体育はお前のクラと合同か」
「ブン太!?…アッ」
絶対にこの学校で1人しかいないであろう名前が聞こえて、思わず声を上げてしまい、反射的に口を抑える。
恐る恐る覗きこんでみたら、横にいる千鴇君の隣にはやっぱり赤い髪の風船ガムを膨らます少年がいた。
「うをっお前誰だ?」
うわああ本物だー!!本物のブンちゃんだー!!!!
かんわいいい~~!!!!
(必死の真顔)
「コイツは柳坂美紀。うちの転校生」
「おー、お前がかー。俺は隣のクラスの…って、何かしんねぇけどもう知ってるみてぇだな?シクヨロ柳坂!」
「は……!あ……!!」
「美紀感動しすぎじゃね?」
「だって……いや…こんな…………
あの…髪の毛触らせてもらっていいですか!?」
「「…は?」」
……あ。
「や、なんでもないです!すんません!なんかおいしそ…じゃなくて、美しかったんで!!」
「お、おう…ありがとよ!なんか、変わったやつだな!」
ヤバイ絶対ドン引きされてしまった…人との距離感が掴めないコミュ症の片鱗が…
陰キャつら…
落ち込んでいると、千鴇君がトントンと肩を叩く。
「おーい、一人で勝手に喜怒哀楽してるのはいいが、はやく着替えの準備しろよ」
「あ!ああ~そうだよね!着替え!…って、あれ?でもまだジャージ貰って無いよ?」
「…あ。悪ィ、俺らの家だ」
「…マジで?じゃあ先生に言わなきゃn「お前ら同じ家に住んでんの!?」
ん?
なんか周りの温度が急に下がった気がするんですけど…
…もう帰っていいですか?
☆
その後の体育では勿論見学し、やっぱり体育の先生だった担任の先生に「大丈夫か?最初だから仕方ないよハハハハハ」なんて言われたり、授業中も隣や隣や隣や隣に邪魔されたり、ふと振り向いた時に見えた真田の威厳顔に思わず吹いて怒られたり…
キーンコーンカーンコーン
そんなこんなで、待ちわびた4時間目の授業の終わりを告げる鐘が鳴る。
「(やっと昼だ…!!ご飯だ…!!)」
朝から何も食べていないお腹は3限の頭から既に限界を迎え、おなかの角度を変えることで必死に音が鳴るのを回避していた。
地獄の時間だった…。
「よーし、飯食いに行くぞ美紀」
「うん!!え?行くって、教室で食べないの?」
「当然だろ!飯はこの中に全部入ってっから、別々で食べるのも無しだぜ!」
千鴇くん特製お弁当は1つの容器に2人前入ってるらしくって、一緒に食べるのは強制らしい…
「お前なんのためにココ来たと思ってんだ」
「え?」
「テニプリキャラと話さなきゃ意味ねーだろ(コソッ」
彼は私の耳元でそう囁くと、(またちょっと、周りの視線が痛い気がした…。)
ホラこっち!と教室から飛び出していく。
「はっ?ちょっと待って!」
迷子になってお昼抜きなんて冗談じゃない!
私は必死に千鴇君を追いかけた。
☆
「あ゙ー疲れた」
「はは、お疲れ」
恐らくここが屋上への扉であろう、という場所の前まで来た。
身体能力が高過ぎる千鴇君を追いかけるのは必死で、多分彼は小走り程度だったであろうが、私は全力疾走だった。
後ろから、廊下は走るんじゃない!!キェーー!!という声が聞こえたような気がしないでもないが、お昼ご飯がかかった追いかけっこに負けるわけにはいかなかった。
「今日なんか運動してばっかなんだけど…もう無理…」
「確かに!朝から沢山動いたもんな、すまんすまん」
「っていう割には涼しい顔して…アンタ何者よ…」
「ん?俺はね……
君と同じ世界からここに来た人間だよ」
屋上への扉に手をかけ、半分開いたところで千鴇君は振り返る。
新しい季節の風と眩い光が向こう側から差してきて、彼の綺麗な髪の毛が揺れる。
そうか、彼は、同じ世界の…
「あ、そう」
「ええっ!?もうちょっと驚いてよ!!」
「ええ!?あんなに自分から匂わせといて!?」
「うっ…でもホラ、俺金髪だし2階から飛び降りたよ!?」
「それはー…こっちに来る前に設定したとか?」
「なんで分かったの…?」
「そうなの!?」
千鴇君は私の超マグレな予想通り、髪色や体力、更に住む場所や部活、学校での人気度等も設定したらしい。変なアンケートメールがきて、それに沿って答えてたらいつの間にかここに来てたんだって。
うわなんかずるいそれ…!!私もそれしたかった…!!
「私の世界での千鴇君をみてみたい…」
「おっ!ようやく名前呼んでくれたなー!悪ィ、俺、現世でも実は超イケメンなのよ。ちなみに名前も千鴇じゃないから」
「はぁ…顔は今でも…だけど、だからそんな変な名前なんだ」
「うわっひっでぇっー」
へらへらと笑いながら、貯水タンクに腰掛けて、弁当を広げる千鴇君の横に座る。
違う世界に来ても、空は変わらず水色で、雲はそよそよ流れてる。春風が吹くと、冷たいコンクリートに触れていた肌がささやかな温もりを得る。
それはここに来て初めてのゆっくりとした時間だった…………んだけど
「すみません、仁王君を捜していたら遅れてしまいました」
「もう少し寝かせてくれたっていいじゃろ…相変わらず鬼じゃのう柳生」
「悪ィ待たせたな!ジャッカルが買うの遅くてよ」
「おい待てよブン太!」
「ちぃっす先輩!!」
なんか…うじゃうじゃ来た!!!!!
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