出会い編
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自分の部屋…になるであろう部屋で制服に着替えていると、ドアをノックする音が聞こえた。
「着替え終わったー?」
「はーい」
「んじゃ、行くか学校」
「え?朝ご飯は…」
「あー…遅刻する!!」
「ええっ!?」
「早くっ!!!」
千鴇くんに渡されたスクバを慌ててつかむ。
携帯をみれば8時を過ぎていた。
何時始業かわかんないけど、とにかくヤバいって事…!?
「制服似合ってんな」
「えっ!?あ、どうも…って、そんなお世辞言ったってなんにもでないよ」
「はいはい」
「何だよ自分から言っといて」
茶化されながらもバタバタと玄関から外に出ると、涼しい空気がスッと身体に染み入っていった。
景色は全く知らない場所だけど、この瞬間に感じる心地よさは昨日までと変わらなくて。
「(ん、でもなんか、ちょっと違うような…?)」
「んじゃ、行きますか」
どことなく感じる違和感に眉をひそめていると、後ろ手に鍵を閉めたせんとくんは私の目の前に飛び出してきて、いきなり…消えた。
!?
「えっ、もしかしてルーラしたの!?いやでもここ建物だからリレミト!?」
「何わけわからん事言ってんだよ~!」
「ドラ○エだよ○ラクエ!ん!?声が下から…どこにいるの!?」
パッと声のする方をみると、千鴇くんの姿がアスファルト上の自転車置き場の横にある。
まさか…
「ここから飛び降りたの!?」
「お前もこいよー!!」
「!?さ、流石に無理!!スカートだし!!」
2階とはいえ結構な高さがあるんだけど、なんて身体能力してるの!?!?
驚きながらも急かされるがまま階段を走って降りて行けば、そこには2台の自転車が用意されていた。
「これ乗るの?」
「おう。こっから学校はそんなに遠くないからな。かっ飛ばして行くぞ」
「えー…」
「残念だったな、お約束の二人乗りは無しだ。なんだって俺は優等生だからな!」
「いや別に二人乗りしたいとは一言も…」
「あーそうかよ!言っ…てろっ…!」
「うわっちょっ待ってよ!」
「遅れんぞー!」
「だから、遅れるって何に!てか、どこに!?」
もうほんとに何が何だか分からないけど、悔しいが今頼りになるのは目の前の男しかいないわけで。
私は精一杯自転車を漕いで、千鴇君を追いかける事にした。
☆
そこから街中を走って約10分。
時々見える海がすごくキラキラしているのに見とれる暇もなく。
自転車を駐輪場に置いて、そこから校門まで走って、校舎も走って……
「はーっはーっ…はーっ!疲れたっ!!」
「大丈夫か?」
「げふっ…ふむ!!」
流石に休み無しでここまで来たので、思わずむせ返る。
校舎の中には私達と同じ制服を着た生徒が既に溢れており、好奇の目で見られているのがひしひしと伝わってくる。
そして薄々と、いや、確実に、ここが私の想像に値する学校である事が分かってきた。
「もうちょっと頑張れ美紀、職員室まで案内すっから」
「え、あ、うん…ってちょっとなにその突然名前呼ぶドッキリ。すっごい心臓に悪いよ」
「え?良いじゃん別に、減るもんじゃないし」
「いやでもいきなり名前っていうのは、、」
「だってよ、自分だけ名前で呼ばれてるのもアレじゃん?」
「……私まだ1度も名前で呼んだこと無いんだけど」
・・・。
「……そうだっけ?はは!ま、いいじゃん!ホラッ行くぞ~美紀ー!」
「なにあれ超うざい」
馬鹿にされてると感じつつも、さっきまで感じてた緊張が少しほぐれた気がして、私は思わず笑いを溢しながら彼の後をついていくことになった。
職員室はそこからさほど遠くはなく、担任の先生との挨拶を済ませると、まるで何の違和感もなく転校生として教室に案内される事となった。
一体どんな力が働いているんだ…と訝しみながらも、新しい環境への不安と言い表せない大きな期待が突如込み上げてきて、ドキドキしながら先生の後をついていく。
そして、案内されたのは、3-A…
と、いう事は…
「は、初めまして、柳坂美紀です、よろしくお願いしまっ…クッ…!!」
必死に悶えるのを堪えた今の私の顔は、きっと、いや絶対みんなにおかしな子だと思われるような顔だろう。
(まあ元からおかしい顔してるけど)
「おっ、あれだよあれ、」
「あいつが…」
「何か堪えているようですが、どうしたんでしょう?」
おいレーザー…、
どうしたんでしょう?じゃないよ、あんた達のせいだよ…!
そこのおっさ…副部長も…、
腕組んで眉間に皺寄せてる中学生が何処にいるんだよ!?
そんな事を考えながら彼らをガン見していたら目が合いそうになって、私はヤベッ!っと本能的に下を向いた。
「じゃあ柳坂さんの席は…」
「はいはいセンセ!ここ空いてます!」
先生が振った台詞に、千鴇君が叫ぶ。
え?でもその席…
「なにを言ってるんだお前は?ここは俺の席だ」
「あの件飲んでくれるって言ったじゃん…」
「それとこれは全く話が…」
「ダメ?」
キャア、と女子の黄色い悲鳴が聞こえる。
その後すぐ、ふぅ、とため息をつきながら、真田は後ろの席に荷物移動し始めた。
いやおまっ、ダメ?って何だよ、ダメ?って。女の子が男にブランド品をねだるような感じに言ってんじゃないよ。
っていうか、あの真田が千鴇君には逆らえないんだ…なんか不思議。
それにあの件とか、意味深だなあ…
「柳坂さん、そろそろ席について?」
「へ?あ、すいません」
その光景をついボアっと見てしまった私は先生に声をかけられハッとして、いそいそと机の合間を縫って真田が座っていた席に向かう。
なんかチラッと女の子の厳しい視線が当たるような当たらないような…いや!ただの自意識過剰だよね!…うん、そうであってくれ…
「さっきぶりだな」
席に座った途端、私の右隣に座った千鴇君に話しかけられる。
「そうですねー…つかなんでこの席?若干真田…君、の温もりが残ってるんだけど…」
「あー、真田の後ろじゃ多分黒板見えないし、俺と近い方がなにかと便利でしょ?」
「ま、まあ確かに…」
彼なりの気遣いなのだろうか、まぁ、いずれは席替えもあるだろうけど、最初のうちは知っている人が隣のほうが有難いかな…?
「貴女が柳坂美紀さんですね、話は畠見くんからききました」
「うわっ!」
左隣から中学生のものとは思えないとっても良いテノール声が聞こえてきて、バッとそちらを見る。
「私は柳生比呂士といいます。よろしくお願いしますね」
「しっ…、こちらこそ!」
ヤバイ!つい、知ってます!って叫びそうになった……!
近くでみるとやっぱりカッコいいね…。
「おいおい一目惚れ?確かにやぎゅーはイケメンだもんな」
「それは正解」
「柳坂さん!?」
「ホラそこ静かにしなさい」
「すっ、すみません」
いけない!初日で目立ってはならない…!
私はスッと黙り、それと同時にまだ挨拶できていない人物を思い出した。
先生や周りにバレないようにそっと後ろを振り向くと、険しい顔をしたおじs…テニス部副部長がそこにいた。
「さ、真田君…だよね?ごめんね移動してもらっちゃって…これからよろしくね?」
「うむ…」
私に話しかけられると少し狼狽えながらも、品定めをするような目線でこちらを見つめてくる。
うっ…すぐに視線を逸らしたいけど、逃れられない…
というか真田が後ろの席って…私下手な事出来ないなあ…
耐え切れず隣の千鴇君を見ると、美形顔を少し崩してニヤニヤしてた。
コイツ…さてはそれが目的か…?
思わず問い詰めたくなったが、初日でこれ以上目立つわけにもいかないので、大人しく前を向き先生の話に集中することにした。
★