合同合宿編
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
3日目の朝は少し怠く、
明らかに昨晩の睡眠時間が身体を重くしていた。
なんとか身体を起こし、身支度を済ませて既に一人きりとなった部屋の鍵を閉める。
朝食を済ませてコートの設営に向かうと、氷帝男マネの二人が声をかけてくれて、一緒に準備を進める事にした。
「柳坂さん、今日はダブルスのシャッフルマッチだね!」
「そうだね、組み合わせってもう決まってたっけ?」
「確かさっき、榊先生がホワイトボートに張り出してたぜ。後で見てきなよ」
彼らの言うとおり、後々見たホワイトボードには対戦表が張り出されていた。
「忍足・ブン太VS岳人・ジャッカル…、それに、宍戸・仁王VS鳳・柳生…なんだかどれも見ごたえがあるな…」
「よ!勿論俺を応援してくれるよな、柳坂!」
「わ!ブンちゃ…丸井くん、おはよう!」
気づかぬうちに背後に立っていたブン太が突然私の肩を叩いて挨拶してくる。
私はまた勢いで名前を言いそうになるが、慌てて言い直す。
するとブン太は「ん~」と不思議そうな顔をして、私の顔を覗き込んでくる。
ち、近い…顔が近い…!
「なんかお前、何度も俺の事名前で呼ぼうとしてない?別に呼んでくれていいのに」
「エッ!!あ、でもなんか、突然おこがましいというか…」
「はは、お前やっぱ良く分かんねえな!おこがましいとか、同い年なんだし関係なくね?」
彼は「今度からはブン太で!シクヨロ~」と言って、テニスコートの方へ先に行ってしまった。
け、結果的に良かったのか…?
「良くないぜよ」
「ワッ!!!今度は何!!!」
「人をバケモンみたいに…」
第二の刺客、仁王はホワイトボードの裏からひょっこりと顔を出したかと思うと、「なんでアイツはあっさり名前で呼ぶんじゃ…」と先ほどの会話を聞いて明らかに不満そうに私へ抗議してくる。
「いや、だから仁王は仁王っていうか…みんなブン太の事はブン太って呼ぶけど、仁王は仁王じゃん」
「アイツの事名前で呼ぶのジャッカルくらいじゃけど」
「エッ…そうだっけ…」
「………。」
「わ、わかったよ…。あ、じゃあ次の試合、勝ったら名前で呼ぶってのはどう?」
「美紀のくせになかなか上手い事言うんじゃの」
「何その言い方、絶対呼ばないんだけど」
「絶対勝つからよう見とき」
仁王はそう言うと、いつもよりも何だか上機嫌でテニスコートへと入っていった。
私は眠気も吹っ飛ぶような仁王の積極性にたじろぎながらも、試合が始まるまで彼の事を名前で呼ぶ練習をしておく事にした。
(だめだ、慣れない…)
案の定、その後行われた試合では仁王のトリックプレイが主に長太郎を翻弄し、柳生のレーザービームに宍戸が食らいつく形で、ゲームは仁王・宍戸ペアが6-4で勝利した。
ちなみにもう片方のコートでは、忍足とブン太が粘りの持久戦を見せた事で岳人の体力が消耗し、ジャッカル一人のカバー力では耐えきれず3-6でブン太・忍足ペアが勝利していた。
ブン太が嬉しそうに「なぁなぁ、応援してくれた!?ありがとな!」と言っているのを微笑ましく思いながらタオルと飲み物を渡したが、脳裏にはずっと仁王の名前を復唱しては挫折する自分がいた。
幸いにも彼らのコートは千鴇君が担当していたので、私はなるべく彼に会わないように、そそくさと片付け等を済ませてお昼まで過ごす事にした。
☆
「あちゃ~、午前中はあんなに晴天だったのになぁ~」
一緒に昼食を食べていた千鴇君が、窓ガラス越しに外を眺めて頭を掻く。
私達の視線の先には、ザーザーという音と共に大量の雨が天から降り注いでいた。
「これじゃあ屋外での練習は出来ないね…。トレーニングルームで各自練習かな?」
「そうなるかなあ…ちょっと榊先生に相談しに行ってみるよ」
「うん、分かった」
そう言って千鴇くんは先に昼食を終え、43の元へと向かっていった。
私も午後はゆっくりしよう、と心を撫でおろしながら、窓際に滴る雫を眺めて過ごす事にした。
過ごす事に、した筈だったが…。
ドロ:忍足、赤也、仁王、宍戸、向日、丸井、日吉、柳坂
ケイ:跡部、樺地、真田、柳、ジロー、柳生、ジャッカル、鳳
「え?なんだこれ…」
大広間に突如現れたホワイトボードに書き出された文字を、口をあんぐりさせながら見ていると
「これよりドロケイを行う!ドロは逃げてよし!」
「なんでこうなった」
43の呼びかけと共に、合宿所内全体を使ったドロケイが始まった。
マネージャー陣は道具の片付けや夕食の準備を手伝うとの事だったが、人数が一人足りないからという理由で何故かこの私が人員に加えられてしまった。
「え?なんで私?他にも千鴇くんとか~適任がいるじゃん!」
「ま、これも運命と思って受け入れるしかないな」
「宍戸くん…そんな事言って先に逃げるくせに…」
「当たり前だろ!これは真剣勝負だからな!じゃ、あばよ!」
私の少し後ろから走り出した宍戸は私のボヤキに一言添えると、光の速さで遠くの彼方まで消えて行ってしまった。
~ここからはダイジェストでご覧ください~
日吉「なんかケイサツ強くないですか…?」
真田「ドロ側の体力トレーニングでもあるからな。不満を言っている暇があったら早く逃げろ。」
跡部「ここは俺様に任せろ!よし。行け、樺地」
樺地「ウス」
忍足「いや跡部動かんのか~い」
鳳「宍戸さ~~~ん!!」
宍戸「って!なんでココが分かるんだよ!?」
岳人「流石鳳センサー!…って、こっち来んなよクソクソ宍戸!」
宍戸「岳人!お前だけ抜け駆けなんて許さねえぞ!」
岳人「いや鳳お前一直線で追ってきてるけど」
宍戸「!?ちょ、お前!!」
鳳「し・し・ど・さ~~~~~~ん!!!!」
岳人「大型犬かよ…」
柳「コート裏の植え込みに赤也が隠れる確率86%」
赤也「ってぇ!?こんな時までデータかよ柳先輩!」
柳「お前の動きはまるっとお見通しだ」
日吉「○RICK…(ボソッ」
柳「そして、このフレーズに日吉が反応する確率97%」
日吉「クッ!!!!!」
ブン太「あれ、仁王は?」
岳人「さっき向こうに走ってったけど…あれ?こっちから来た!?」
仁王「俺はずっとここにいるぜよ」
ブン太「って事はあれは…仁王に化けた柳生だ!!逃げろ~!!」
忍足「これぞ、ほんまもんのトリックや~!…って、上手い事言えとるやろ?」
仁王?「絶好調じゃのう~、…忍足クン?」
忍足「せやろ?…え?」
ジャッカル「おい!氷帝の芥川、そんなところで寝るな…!」
ジロー「Zzz…」
ブン太「よし、ジャッカルがジローを担いでる隙に逃げるぞ!」
ジャッカル「あ!くそ!おい!」
ジロー「丸井君!?!?!?」
ジャッカル「うわっ!?なんだよ!?」
ジロー「丸井君~~~!!待って~~~!!!」
岳人「大型犬ばっかじゃねーか!」
…と、いう事光景を尻目に。
一方私は、危機的状況に陥っていた。
「柳坂、もう逃げられんぞ」
「さ、真田…」
私が彼等と追いかけっこになれば逃げきれないのは当然なので、合宿所の隅、誰も来なさそうな所まで真っ先に逃げて隠れていた。
もう大丈夫!と思って身を潜めていたが、近くに足音がするのに動揺して物音を立ててしまい、今に至る。
真田は両手を広げ、「もう観念した方がお前の為だ」と自ら捕まりに来る事を勧めてくる。
「う…」
私はこんなところで足を引っ張るわけには…と、1秒でも長い攻防戦を目当てに、勝てる筈もない相手にジリジリと気の遠くなるような時間を過ごしていた。
暫く睨み合いが続き、もうそろそろ限界か…という気分になっていたが、
私は次に発せられる真田の言葉によって、なんだか諦める事は出来ない気持ちになってくるのだった。
「すまんが、マネージャーだろうが容赦はしない」
「…え、それは純粋に嬉しいな…」
「…?」
「あ、いや…私、流れるままにマネージャーになっちゃったけど、ホントは皆の事、少し雲の上の存在って感じに思ってて。なんとなく距離も感じてたんだよね」
「…。」
「けどこの合宿を通して何だか皆と近づけたっていうか、今もこうして皆と同じ舞台にいさせてもらって、しかも容赦しないなんて言われるなんて、なんて幸せなんだろうっって…」
「何を言ってる…当然だろう。選手だろうがマネージャーだろうが、立海テニス部員となった者は全員、常勝の名に恥じぬ行動をするまでだ。今までも、これから先も」
「!…そうだよね。真田…ありがとう」
「だからこそ、お前には目指す先も同じものを見てもらいたい。共に戦う仲間は多い方が心強いからな」
その言葉に少し心がズキンと痛んだが、私の両肩に手を置いて、嬉しそうな顔で真っすぐ私を見る真田を前に、私は深く頷く事しか出来なかった。
って、あれ…。
「私、これ、ドロケイ負けてますね…?」
「ん?…!フ、フハハ!そうだな!まんまと俺の術中にハマったようだな柳坂!!」
「いや絶対言うまで気づいてなかったでしょ!」
そう言って私達は互いに笑いあいながら、騒がしい皆の声が聞こえる方へ歩いていった。
★