合同合宿編
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「準備が出来た者からバスに乗れ!」
真田の掛け声と共に、ぞくぞくとレギュラー陣がバスに乗り込む。
長期連休が始まって間もなく、三泊四日の合宿が始まった。
「柳坂、大丈夫か?荷物運ぶの手伝うぞ」
「桑原くん!有難う…!」
私は千鴇君と一緒に合宿で使う道具の積み込みをしていた。
かなりの大荷物を持ってよろよろと歩いていたからか、ジャッカルが声をかけてくれる。
「そんなに荷物持って、無理すんなよ?」
「いやぁ…何往復もすれば良い話なんだけど、面倒だなと思って一気に色々持ちすぎちゃった」
「なるほどな。でも最初から飛ばしすぎて、肝心の合宿でケガして動けないんじゃあ元も子もないぞ!」
「確かに…ごめんね、有難う」
「へへ、良いって事よ!」
はにかむジャッカルの姿を見て、思わず見とれてしまう。
ジャッカルって、普通にイケメンだよなぁ…。
「お、おい、何だよ、そんなにジロジロ見んなよ…」
「え!あ!ゴメン!」
いかんいかん、ちゃんと働かなきゃ…
「そろそろ出発するぞ!」
荷物を全て積み終わり、席に着くと、真田が最後にバスに乗り込んできて声をかける。
私は振り返って人数を数え、「全員いるよ!」と真田に声をかけた。
「うむ!…ん、確か、座席は一人2席確保したはずだが…」
真田の言ったとおり、座席を見渡すと、荷物を広げて積みすぎたのか、座席の数が足りていない。
「あ、あれ…ハハ、今から片付けるね…!」
「いや、もう出発だ。俺はここで良い」
そう言って真田は私の隣の席に座る。
「え!?…あ、じゃあ私通路側に座るよ!そんで後で千鴇くんの席に移るから…」
「む、気にせんで良い、俺はここで構わん」
そう言うと、真田はそれ以降黙って目を瞑ってしまった。
そ、それでも、休憩の時とか外出れなくて困るんだけどなぁ…。
☆
バスが出発して暫くすると、最初は賑やかだった車内が少しずつ静かになっていく。
各々が移動の時間を自由に過ごしているようだった。
一方、私のほうはと言うと…。
「すぅ…すぅ…」
「(あれ…もしかして、真田……寝てる……)」
隣から規則的な呼吸音が聞こえてきたかと思えば、そこに座った大きな身体が組んだ腕を微かに揺らして寝息を立てていた。
恐る恐る顔を覗き込むと、いつも大忙しな眉間には一切の皺が無く、普段の険しい顔からは想像もできない優しげな顔をしていた。
わぁ、それに、思ってた以上にまつ毛長い…。
「随分と熱心に見ているようだが」
「わっ!?」
突然、前の席にいた柳に声を掛けられて、思わず声が出てしまう。
うわ、ずっと真田の顔見てたの、柳に見られてたんだ…。
「しっ…大声を出すと起きてしまうぞ」
そう言うと彼は口元に人差し指を置いてそっと微笑む。
彼は一つ一つの仕草がなんだか大人に思える。
「あ、いや…、なんだか綺麗な顔して寝てたから、つい見ちゃって…」
「ほう…それは、少し妬けてしまうな」
「えっ」
「しかしあと5分で次の休憩所だ。今のうちに真田を起こしておくべきだろう。」
「あ、そ、そうなんだ…さすが柳くん」
ふと外の景色を見ると、さっきまでの海岸風景とは変わってだんだんと山の中に向かっていっているようだったが、何処を走ってるかはよく分からない。
ともかく柳の忠告どおり、私は隣に座っている真田の身体を揺すって起こす事にした。
「お~い、真田くん、起きて~」
……。
「お、お~い」
「ふふ。全く起きないな」
何度も声をかけて身体を揺すっても、全然起きない…。
「少しパワーが足りないように思える。真田ほどの頑丈な身体であれば、もう少し強めに刺激を与えても大丈夫だ」
「え、ええ…後で怒られても柳くんのせいだよ…」
「構わない。俺のデータによるものだ。」
私は柳に言われたとおり、もう少し強めに身体を揺する事にした。
「真田~!起きて~!!」
「む…ん…」
「真田~!!休憩だよ~!!起きて~!!」
「……」
「真田~!!!!!!」
「もう起きとるわ!!!!!!!!!!!」
「ギャー!!!!!!!!!!!!」
「おや、何の騒ぎですか?」
「柳生。眠っていた真田を起こしただけだ。」
「それにしては凄い悲鳴が聞こえましたが…」
遠くで心配する柳生の声を聞きながら、
私は真田の説教を受けて、柳あとで覚えてろ…と怨念を送っていたのであった。
☆
それから数時間が経ち、バスが木々に囲まれた建物の前で停まる。
私達はそそくさと荷物をバスから降ろしていく。
「やっと着いたぜ~~~!」
「ようやくテニス出来るんすね~~!怠かった~~!」
「お前らそんな事言って、ずっとバスの中でも菓子食ったりカードゲームしてたじゃねえか」
ブン太と赤也、ジャッカルは一番奥の方の席にいたはずなのに、いち早く外に出てはじゃぎまわっている。
真田の事に気を取られすぎて気づかなかったけど、すごく楽しそうにしていたんだな…くそお…。
「よ、おつかれさん。」
「あ、仁王」
バスの真ん中でずっと窓の外を眺めていた仁王が後から降りてくる。
彼は通り過ぎ際に私の頭をポンポンと叩くと、ふぁあ…と欠伸をして何処かに行ってしまった。
「なっ…!天性のたらしか…!」
「ほぅ、アイツもやるようになったな」
「…!?仁王!?…あれ、柳生!?」
背後にいたのは確かにさっきまでの柳生だが、仁王の声が聞こえる。
ま、まさか…
「出発からずっと入れ替わっとったんじゃけど、美味しいところを持ってかれたみたいじゃ。…って事で、」
そう言うと柳生の格好をした仁王は続けて私の頭をワシワシすると、寝癖隠しとして髪につけていたヘアピンをさっと取って立ち去ってしまった。
「あ!ちょっと!」
「何をしている」
「全く、仕方ないなあいつは…」
その後ろから真田と柳が下りてくる。
「あっ!柳!さっきはよくも…」
「気分が荒立つと呼び捨てになるのか、なるほど」
「え?あ…」
「上手くデータを取られているようだな柳坂、気がたるむと直ぐに格好の餌食だぞ」
「こ、この~…」
してやられた、と思って二人の背中を睨みつける。
それでもなんだかいつもより皆が楽しそうなのは、今から始まる合宿への期待によるものなんだろうな。
「美紀、なんだか楽しそうだな!」
「あ、千鴇くん」
最後にバス内の荷物チェックを終えた千鴇君が下りてきた。
知らない場所での数日間。少し不安もあるけど、何たって彼がいるなら、乗り越えられそうだ。
「さ、これから室内でオリエンテーションだ。氷帝はもう着いてるらしいし、早く行こうぜ!」
「う、うん!」
私は自分の荷物を持って、みんなと千鴇くんの後を追った。
☆
建物内に入り、ぞろぞろと皆が入っていった部屋を覗くと、そこには既に到着していた氷帝の面々が座っていた。
「あ!柳坂さ~ん!」
「ん?おお、鳳くん!」
部屋に入るや否や、一番後ろの席に座っていた長太郎が私の姿を見て手をブンブンと振っている。
MECHA=MECHA=KAWAII DENGANA…。
「あれ?いつの間に氷帝と仲良くなったんスか?」
「え、ああ、この前の買い出しの時にたまたま会ってね…!」
「ふぅ~ん…」
長太郎のはす向かいに座った赤也がつまらなそうにそう呟く。
話しかけておいて、何だその反応は…。
そういえば、まだ赤也とはそんなに話した事がないし、第一印象もそんなに良くなかった気がするから、どう思われてるのか気になる存在だな…。
「柳坂、もう始まるからとりあえずココ座って!」
「あ、ごめん千鴇くん!」
声をかけられハッとすると、既に殆どの生徒が席に座っていた。
私は右腕を千鴇くんの左手に引かれ、赤也の後ろに急いで座った。
すると、部屋の一番奥にある開けた空間にザッと歩みを進めて、一人の男が話し出す。
「全員が揃ったところで、オリエンテーションを始める!」
…あ、ああ…。
「今回この合宿において総監督を務める、氷帝顧問の榊だ、宜しく頼む」
43だ~~~~~~~~!!!!!
☆
その後、43…榊先生による有難い挨拶に続き、氷帝マネージャー華岾さんによる合宿所内の簡単な見取り図と今後のスケジュールについての説明を受け、
この後は一旦昼食まで各自荷物整理などの自由な時間となった。
部屋割は私と華岾さん、千鴇くんと氷帝の男マネ2名。
立海は
真田・柳・赤也と、
ジャッカル・ブン太・仁王・柳生。
氷帝は
跡部・ジロー・忍足・向日、
宍戸・日吉・鳳・樺地
といった分かれ方のようだ。
思ったとおりと言えばそうなんだけど…
なんとなく、赤也ドンマイ。
「…っていうか」
自由時間という事で荷物を部屋に置いた後、早速屋外に出てみたけど、
改めて見てみると、この合宿所、広すぎない…?
辺りを見渡すと、テニスコートは勿論、奥の方にパターゴルフのようなエリアや、花の咲いた庭園、そしてプールなども見える。
こんな豪勢な施設…もしや…
「やっぱ跡部財閥はすげえな~!アイツの会社の保養所って言うところらしいぜ~!」
「丸井君さすが物知りだな~!跡部はすごいんだC~!」
「やっぱり…」
通りすがりのやんちゃキッズ達の元気な声を聞いて、確信する。
自分の会社とはいえ、この連休に保養所を貸し切りって…規模が違いすぎる…。
ま、何十何百とあるうちの一つに過ぎないんだろうな…と思いながら彼らを眺めていると、何やら楽しげにある方面へ向かっているようだ。
「二人とも、どこかに行くの?」
「柳坂!今から売店に菓子買いに行くんだ!」
「あ~、君が柳坂さんって言うの?」
「あ、うん、君は…」
「芥川慈郎!よろしく~!」
ごめん、知ってる~~~~!!
ふわふわの髪の毛を揺らして微笑むジローちゃんに、思わず私も満面の笑みで「わ~~~!よろしく~~!」と応える。
「お前、ジローにデレデレじゃん!時間もないし早く行こうぜ!」
「えっ!?そ、そんな事ないよ…!行こうか!!!」
しまった、つい内なる自分が…。
私は彼らと共に小走りで売店へ向かった。
☆
売店には飲食料品に加え衣料品、レジャーグッズなど、観光地にありそうな商品が並んでいる。
「これと~、これと~、あとこれも!」
「おっ!近所だと売り切れまくってるお菓子がある!」
一緒に来た二人はお菓子に夢中だ。
私は特に目当てのものは無かったけど、何か良いものないかな~となんとなく店内を見渡す。
ドンッ
「いってぇ」
「わっ!すみません!!」
「「…あ」」
よそ見をしてぶつかってしまった人に咄嗟に謝ると、
そこにいたのは日吉だった。
「(ど、どうしよう…)」
買い出しの時ぶりな上に、別れ際に誘われた話が脳裏によぎって、何処か緊張感が漂う。
「なんだ、アンタも買い物ですか。何か目当てのものでも?」
「え!?あ、と、特には無いんだけど…」
「冷やかしか…。俺もぬれ煎餅が無いかと思ってきたんですが、あんまり品揃えが良くないみたいですね」
「あ、はは…ぬれ煎餅、好きなんだ~…」
そう言うと、日吉は「そうなんですよ、」とぬれ煎餅が如何に美味しいかを語り出す。
勿論知ってるけど、合宿に来てまで探すとは思わなかったな…。
そんな事を考えながら、なんとなく視線を合わせづらくてよそ見をしながら会話を続けていると、
「先輩、ちゃんと話聞いてます?」
「…!!」
突然目の前に日吉の顔がグッと近づいてきて、私は思わず口をつぐんでしまう。
恐らく彼に他意は無いのだろうけど、反して私の身体の温度は見る見るうちに上昇していく。
「ちょ、ちょっと待って、急にこれはメンタルが…!」
「…柳坂さん?」
挙動不審な私を怪しんでか、はたまたわざとか、
日吉は更に覗き込む顔の距離を近づけてくる。
もうダメだ!これ以上は…!
「なんや日吉、もう抜け駆けしとるんか」
!!
「そ、その声は忍足侑士!!」
私は咄嗟に目の前の日吉を押し遠ざけ、彼の背後から現れた眼鏡の救世主を見つめる。
「既にフルネームで覚えて貰ってるなんて光栄やなぁ」
「あっ…す、すみません、つい…」
ハッ、またやってしまった…。
私がしまった、という顔をして忍足の方を見ていると、彼は既に買い物を終えたビニール袋から何やら取り出して、「せや、この辺は虫が多いからコレ使うときや」と虫よけスプレーを手渡してくる。
「えっ、折角買ったのに、良いの?」
「予備で買うただけやから気にせんでええで。それにこないな綺麗な肌にポツポツ出来たら勿体ないわ、遠慮せず使うてや」
「あ、有難うございます…」
本当に彼は中学生か?というくらいの気遣いレベルだけど、折角くれるという事なので有難く受け取っておくことにした。
「ほな、氷帝は一足先にミーティングがあるから、日吉も連れていくで。また後でな」
「もうそんな時間ですか」
そう言って二人は足早に売店を去っていく。
はぁ…何だったんだ一体…。
って、あれ、氷帝がもう集合時間てことは…。
「ジローちゃん!?いる!?」
「ん?早速名前で呼んでくれるの?うれC~!」
「あっ!ゴメン馴れ馴れしく…!じゃなくて!氷帝もう集合だってよ!」
「えぇ~もう~?…しかもなんだか眠たくなってきた…」
「コラ!ダメだってば!…ってもう寝そう!丸井君~!!」
「お?柳坂がジローにつぶされそうになってら」
「お?じゃないんだわ!助けて!!」
結局そのままジローちゃんは眠りにつき、
私たちは二人で彼を担ぎ、氷帝の元まで送り届けるのであった…。
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