御幸 一也
いい夢見てね
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『もしもーし、みゆちゃん?』
電話越しに聞こえるふざけた声を最後に聞いたのは、いつだったか。
「おかけになった電話番号は現在使われておりません。」
1時間ほど前までテレビの画面越しに見ていた彼に、素っ気なく答えた。
『おかしいなぁ、これ、LIMEなんだけど』
そう言ってくすくす笑っている彼は、すごく機嫌がいい。
リーグ戦が始まって、会えないのは毎年のこと。
わかってはいる。わかってはいるけど、寂しいもんは寂しい。
「お疲れ、試合観てたよ!
3試合ぶりの白星」
そう言えば、
『ありがとう!まだまだこっからだな』
と、やはり上機嫌だ。
次こっちくる時は会える?と、喉から出そうになる言葉を飲み込む。
彼はシーズン中で、大変なのもわかっている。
私に時間を費やすくらいなら、体を休めてほしいとも思う。
「うん、またホームラン打ってね」
『だなー!打率もここからあげてかねぇとな!』
一也と出会ったのは小学生の頃で、高校で偶然再開して、そこから付き合ってもう10年近くになる。
高卒で愛知のチームにドラフト入りしてからは、
会う回数はずいぶん減ったが、仲良く続いている。
今更別れるつもりなんてないけど、同棲もしていない私たちは、年間を通して会えない日の方が断然多い。
慣れてきたとは言え、やっぱり身も心も寂しい。
一也はといえば、昔と変わらず野球バカで、
野球と私、どっちが大事なの?
なんて聞いたら、彼はきっと間髪入れずに野球と答えるだろう。
『そういえば、もーすぐみゆの誕生日だなぁ』
そんな彼が、付き合い始めてから唯一覚えている私の誕生日。
寂しいのも本当だけど、離れていても彼の中にちゃんと私がいるんだって実感すれば、それだけで満足してしまう自分もいる。
「その日、こっちで試合だよね!
チケットお父さんから貰ったの。2人で観に行くよ」
『おー、まじか。ぜってぇ勝たねぇとな!』
その日に会えたらいいな、なんて思ったが次の日も試合だから無理か。
一也のお父さんが、ご馳走作ってくれるって言ってたし、それで十分だ。
試合当日。
『9回裏、ツーアウト1、3塁で4番の御幸選手ですね
ここ最近は絶好調ですから、一発逆転ありますよ』
周りには、一也の応援をしている愛知チームのファンたち。
隣にいる一也のお父さんと顔を見合わせ、祈る。
カキーン、と一也が打った打球はセンターの頭上を超えていった。
その瞬間、一気にドームが賑わう。
私は、一也のお父さんとハイタッチをした。
最後に行われたヒーローインタビューには一也が選ばれた。
【御幸選手、最近調子が上がってきていますね】
『そうですね、今日のために上げてきました』
【今日は何か特別な日なんですか?】
『はい。みなさんご存知の、僕の交際相手の誕生日で。』
【噂の高校時代の同級生の方ですね
御幸選手が、ベタ惚れしているという】
『ベタ惚れって(笑)どこ情報ですか(笑)
まぁそうなんですけど』
【そんな御幸選手の大好きな彼女さんに、何かメッセージはありますか?】
『あ、じゃあこの場を借りて。すんません
みゆ!!!!!結婚しよう!!!!!』
その言い放った瞬間、ドーム中から歓声が響いた。
インタビューが始まってからは、こんな公の場で一也はなにを言ってるんだ!なんて思って呆然としていたが、最後の言葉で腰を抜かした。
本当に何を言ってるんだ!!!!!!!
一也は、私の席の方へ向いていたが、
本人の私以外は誰が彼女か、なんてきっとわからないだろう。
わかってもらってたまるか。
【あはは、公開プロポーズ。
今日は彼女さんがみえているということですね】
『親父と一緒に来てるみたいで。本当、勝てて良かったです』
【ですね。それでは、最後にファンの皆さんにメッセージをお願いします】
『みなさんの応援のおかげで、本当に毎試合頑張れてます!
まだまだ中盤、ここから勝ちまくって優勝目指すので、
引き続き応援よろしくお願いします!あざした』
私は、バレるはずはないがバレると困るため、
一也のお父さんと急いで会場を後にした。
「みゆちゃん、いい誕生日になったな」
そう言ったお父さんは、珍しく笑っていた。
「もしかして、お父さんもグルだったりします?」
なんて少しだけ怪しむと、
「俺からのプレゼントは、チケットだけだよ」
と再び笑っていた。
会場から出て帰宅すると、一也の家の明かりがついていた。
あれ?電気消してたはずなんだけど。
と思いお父さんを見ると、鍵を渡される。
「すまん、先に家で待っててくれるか
デザートに買ったケーキを取りに行くの忘れてた」
そう言って小走りで去ってしまったから、私は仕方なく鍵を開けて一也の家で待つことにした。
扉を開けた瞬間、
「みゆ!!!結婚しよう!!!」
と、本日2度目のプロポーズを受ける。
目の前には、何ヶ月かぶりに会う、最愛の人。
「・・・なんでいるの」
驚きのあまり、そんなことしか言葉にできなくて、そのまま一也の胸に飛び込む。
「試合、おめでとう」
急いで帰ってきてくれたのだろう。
まだすこし汗ばんだ匂いがする。
それでも、久しぶりに触れる一也に強く抱きつく。
「あれ?プロポーズの返事は?」
と、くすくす笑っている一也に、キスをした。
「公開とか、本当にありえない
バレないと思うけどもし周りの人にバレてたらどうするの」
「やっぱり、こんな長い間会えないのとか俺無理だし。
これから先何年もずっとこんな生活とか耐えられねぇわ!
みゆと一緒に住んだら、今までよりも会えんじゃん」
私の頭上に自身のあごを乗せながら、そう呟いていた。
「だからって、ファンの人たちの前であんなの・・・」
「いや、むしろファンの人たちから言われたよ
早く彼女さんと結婚しろ!って」
「え?」
「みゆはわかってねぇんだよ
俺がどんだけみゆのこと好きなのか」
そう言って一也は体を離し、私の左手をとった。
「高校ん時から、ずっとみゆだけだよ。」
薬指を触りながら、ポケットから指輪を取り出した。
「好きで好きでたまんねぇすけど」
そう言って照れくさそうな顔で、指輪をそっとはめた。
「その涙は、肯定と捉えていい?」
気づけば私は大量の涙が溢れていて、一也は指で優しく拭ってくれた。
「・・・肯定以外、ありえない」
一也は私を思いっきり抱きしめた。
数日後、新聞の一面には、
【御幸選手、公開プロポーズ!!!
ファンたちからの後押しあって、ようやく実行か】
と大々的に書かれていた。
『実は、ファンの方たちからずっと言われてたんです。彼女さんと早く幸せになれって。
なんかそれが本当に嬉しくて。
先輩たちや監督には、遅すぎるって怒られたんですけど(笑)
俺ってそんなにダダ漏れだったのかなって思って少し恥ずかしかったですね(笑)
まぁでも結局彼女にはめちゃくちゃ喜んでもらえたし、
ファンの皆さんのおかげで、奥さんになってもらえたと言っても過言じゃないので、本当に感謝しかないですね。
野球以外は本当にポンコツなんですけど、そんな俺のことずっと隣で支えてくれてたので。
これからはお互いに支え合っていきたいと思ってます。
何回生まれ変わっても、奥さんと結婚したいですね。そう思えるくらい、大事な存在です。』
一也の株は、爆上がりした。
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